かえるネット木津川南

大阪市南西部で活動する日本共産党の青年後援会のブログです。

日本経済の長期停滞・・・活路をどこに求めるか6

2011-01-20 12:41:30 | 論文紹介

4.日本経済再生への道

▼経済政策が目指すべきもの<o:p></o:p>

 経済政策が目指すべきものは、経済成長率の引き上げではなく、国民生活の安定・向上である。強い経済とは、成長率が高いことをいうのではなく、国民が安心して暮らせる経済のことである。

 

国民生活の安定・向上があって初めて、経済成長が意味を持つのであって、その逆ではない。成長率が上昇しても、雇用や所得が停滞するのでは意味はない。また失われた二〇年の低成長が国民生活を疲弊させたのではなく、その逆である。だが政府の戦略は、依然として成長率に固執し、そのために大企業減税や企業の輸出競争力強化を図る一方で、国民にはさらに負担を求め、リストラを容認し、地方経済には見向きもしない姿勢をとり続けている。その姿は、福祉をかなぐり捨ててきた従来政権と変わらない。だがこの路線こそ、日本経済を長期の停滞に導いた路線であり、したがってこれでは、強い経済、強い財政、強い社会保障の実現は不可能となるばかりか、ますます停滞の悪循環に落ち込んでいく危険性を持っている。

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 日本経済の再生に必要なことは、経済構造の土台でありながら脆弱なまま放置され、さらには劣化させられてきた国民の生活基盤を再建することである。なぜならば、この土台の劣化こそ日本の長期経済停滞の根源となっているからであり、またこの土合の再生こそ日本経済再生の起点をなすからである。
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▼望ましい経済政策<o:p></o:p>

 繰り返し見たように、停滞は国民生活基盤の劣化を起点とした再生産構造の破断による内需停滞の悪循環と、それを基盤とする経済、財政、社会保障の連鎖的劣化の悪循環という二つの悪循環を中身としている。したがって、日本経済の再生のためには何よりもまず内需停滞の悪循環を是正して、好循環を作り出す必要がある。つまり輸出に過度に依存する非自立的・不安定な経済構造から脱却して、内需の拡大好循環を軸にした自立的・安定的な経済構造への転換を図る必要があるということである。

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 そしてそのためには、第に、悪循環の起点をなす国民の生活基盤の劣化に早急に歯止めをかける必要がある。つま り、増税でも経済成長でもなく、疲弊している国民生活の基盤整備を起点とする第三の経済再生の道筋を確立する必要があるということである。そして第二に、そのためには政府の失政を正す必要がある。つまり、輸出競争力強化一辺倒で国民に負担を強いる路線から、直接的に国民生活の安定化を図る路線への切り替えが必要だということである。

 

 とくに輸出依存の経済構造が限界を示し、生産現場の海外移転が加速化している中では、政府による直接的な国民生活安定化措置が不可欠となっている。そしてこの路線切り替えによってはじめて、悪循環から抜け出し、しかも見せ掛けや一過性ではない安定的・持続的な、亘ハに強い経済、強い財政への道が開かれることになる。

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▼経済再生の具体的方策<o:p></o:p>

 国民の生活基盤の安定は、いわゆるセーフティネットの整備状態にかかっている。つまり、医療、介護、雇用、年金、教育などの面で、国民がどれほど安心できているかということである。しかも、このすべての面で安心できることが必要なのである。人々が安心して暮らせる社会で、初めて健全な需要が生み出され、それが生産、投資、雇用の安定をもたらす基盤となる。国民にとって心地よい国は、企業にとっても心地良いということなのである。

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課題が鮮明になれば、必要とされる経済政策もおのずと鮮明になってくる。以下では、国民生活を窮地に追い込んでいる財政問題などをめぐって若干の提言をしておこう。<o:p></o:p>

 国の巨額の累積債務を前に、一方で財政赤字を容認しかねない楽観論とともに、他方で政府を中心に増税をあおる危機論が蔓延している。財政危機を乗り切るには、歳入、歳出のバランスが重要’になる。だが、経済が停滞している中での単純な増税と支出削減は経済をさらに停滞させ、逆に財政赤字を増大させる。また、医療・福祉施設など社会的インフラの充実が必要とされている中での単純な支出削減も適切ではない。

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 大事なことは、消費税率引き上げの議論の前に、歳入と歳出が国民の生活基盤の安定のために有効に機能しているかどうかを点検することである。歳出面では、軍事費や公共事業、特別会計の見直しのほか、政党助成金などの歪んだ財政措置を廃止し、さらに無駄遣いにつながる天下りや企業・団体献金の禁止措置を講じることが不可欠となる。だが歳出のうち、社会保障費の引き下げや医療・福祉施設などへの支出削減は、逆に国民負担を増大させ、将来不安をあおることによって経済を停滞させ、逆に財政を悪化させる要因となる。

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 他方、歳入については、応能負担の原則を徹底し、中小・零細企業や低所得者への減税とともに、担税能力のある高収益大企業や富裕層への増税措置や法人税の特別優遇指置の見直し、証券優遇税制の是正などの細かな対応が必要になる。こういった措置が講じられない限り、今後、ことあるごとに消費税率引き上げが繰り返されることになる。

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 必要なのは巨額の収益をあげているグローバル大企業への減税ではなく、収益の低迷に苦しむ中小企業への減税策である。まして雇用を重視するというのであれば、リストラを推し進める大企業への優遇ではなく、二〇〇六年時点で全国四二一万社のうち四二〇万社に達する中小企業(総務省「事業所・企業統計調査」)や内需型産業企業への支援こそ緊急課題に据えられるべきであろう。そしてこのような財政措置を前提にしたセーフティネットの整備が、内需の好循環の基盤を作り出し、したがって雇用安定の条件となる。

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 政府は介護、医療、保育分野などで雇用を拡大するという。だが他方で、消費税率を引き上げ、月五〇〇〇円を突破すると見込まれる介護保険料などの社会保険料をさらに引き上げる構想を打ち出している。これでは景気を停滞させ、雇用を逆に減らすことになる。求められているのは、一時しのぎではなく、再生産構造の安定を基礎にし、しっかりとした規制をともなう雇用の安定化である。<o:p></o:p>

 日本経済は、今まさに分水嶺にたっている。従来のような輸出競争力強化を最優先する路線を踏襲するのか、あるいはその路線を転換して国民生活の安定を直接的な政策課題に掲げるのか、その選択を迫られているといってよい。<o:p></o:p>