角川学芸ブックス 同時通訳松本 道弘角川学芸出版このアイテムの詳細を見る |
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「同時通訳のパイオニア・西山千を通して知る通訳の現場から、コミュニケーションの本質に迫る!
達人が語る同時通訳の世界!」
とあるように西山千さんを紹介することを通して同時通訳のなんたるかを語ろうという本です。
かなり個性の強い文章なのでちょっととっつきにくい感じですが、手話通訳を目指す人にもとても勉強になると思います。
<もくじ>
第1章 同時通訳とは
同時通訳は翻訳マシーンではない
日本の同時通訳の黎明期と主な通訳者
「あなたは話す人の気持ちを全然意識していない。もし、その人の国を思う情熱とか、危機感が感じられないのだったら、通訳なんかやめてしまいなさい。」と体を震わせて叱るのです。(『通訳ブースから見る世界』原不二子著)
同時通訳をディベートに結びつける小松達也
同通業界はプロレスの世界か
戦後日本での英語
通訳の現場
同時通訳は、「道」か「術」か
通訳と翻訳
通訳者はコンピューターではない。一つの言語を他の言語に、機械的に転換するのが役目ではない。言葉で埋めてはならない空間がある。それが遊びである。翻訳者でも遊びが必要、いわんや通訳者においてをやだ。「声に表情がない。」「スピーカーの顔を見て、通訳しなさい」と、即興性と非言語コミュニケーションのスキルを重んじられたのも、言葉とシンボルを繋ぐ、イメージ力を強調されていたのだ。
同時通訳と逐次通訳
同時通訳は瞬間芸
第2章 通訳者の心得
同時通訳の8つのポイント
通訳の真髄
通訳者は語学力よりも情報力
西山名人が女子大生に与えた忠告に「語学力」という概念は入っていない。あくまでも情報力と、常識である。コモンセンスは、単に人々が共有する情報ではなく、良識を含む知恵のことだ。気配りも資格のうちの一つだ。
名人の口癖がある。You must understand first.
(まず、よーく理解しなさい。)
通訳者になぜ、速読とディベートが必要か。それは言語より情報だ。
通訳者に必要な英語力
通訳者に求められている英語力とは、まず受信能力ではないだろうか。一を聞いて十を知る。その語感は多読と多聴から生まれる。
メモの取り方
西山名人は、文章にすれば3ページになる内容でも1枚のスケッチにすればまとまるから、メモとは絵であるべきだと仰る。
金山氏も同時通訳のプロであっただけに、メモを地図だと位置づけられておられ
さまざまな名人たちの通訳に学ぶ
「言葉を訳さず、ロジックを訳せ」
同時通訳は女の世界
「通訳よりまず、思考訓練が大切だ。自分の頭で考えることがなくて、人の頭の代弁ができるだろうか。」
肯定的なのか否定的なのか、論理の流れを瞬時に捉え、うまく整理するディベート思考が要なのだ。
難訳語
異言語の化学的結合、これが物理的結合を重んじる他業者の教えとは決定的に違う。
名人の口癖。「理解せずに、訳してはいけません。同時通訳者でも、"You must understand first." これを忘れてはいけません。理解できるまで待ちなさい。」
第3章 同時通訳者になる
同時通訳者になる
同時通訳けものみち
「松本さん、いっしょにやりませんか?」
アメリカ大使館入館
入館後の学習
(逐次通訳には、思考する時間がある。)ところが、同時通訳となると、思考というプロセスが奪われるから、二つの言語、文化、思考過程を同時に使い分けなればならない。英語を話す時と、日本語話す時とでは、思考回路が違うのですよ、瞬間に切り替える時間が要るのです、というのが名人の口癖であった。同時通訳をするということは、二つの思考回路を自由自在に切り替える技術のことだ。」
逐次通訳で学ぶ
翻訳の達人
日本一の同時通訳者を目指す
「同時通訳日本一になって恩返しします。」
第4章 西山千に学ぶ同時通訳術
通訳者とは?
通訳の正確さと発言者の心得
通訳者になるには
通訳者の語学力
通訳術の習得法とメモの取り方
通訳者の落とし穴
誤解とくいちがい
通訳者のあるべき姿
第5章 西山千という通訳者
出会い
通訳者はどうあるべきか
表の白州次郎と裏の西山千
西山千の英語は音楽だ
通訳者に必要な音感
西山流コミュニケーション術
スミマセンの意味
罪か恥かを超越する眼
二つの祖国を持つ名人の不幸
西山千の言葉
第6章 現代の同時通訳
IT時代の同時通訳者たち
同時通訳とディベートは二卵性双生児
新崎隆子を育てたのはディベート
同時通訳者は本来一匹狼
プロ通訳は自己責任
翻訳とは何か
名人・西山千の風姿
あとがき
西山千略歴
西山千の主な著書
西山千の主な翻訳書