木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

週刊現代23年6月4日号より「放射能汚染水」その行方

2011年05月28日 23時37分16秒 | Weblog
週刊現代 23年6月4日号からもう一本記事を載っけておきたいと思います。
「福島放射線汚染は、いよいよ第二幕に突入した」ほんと、これからどうなっちゃうんだろう。もう茨城の海じゃ泳げなくなっちゃうんじゃないだろうか。

<推定1000万キュリー、天文学的放射能量>
 福島第一原発
 止まらない大量の「放射能汚染水」その行方


 日本の原子力開発の最高権威として知られる石川迪夫・日本原子力技術協会最高顧問(77歳)が、5月18日。『電気新聞』に寄稿した論文が関係者に衝撃を与えている。
 石川氏は、福島第一から垂れ流される放射能汚染水は、驚くべき高濃度に達していると指摘する。
<頭の痛い高濃度汚染水の話だ。
 原研OBが集まっての原発対策検討グループの検討結果では、破損した3基の原子炉が持つ放射能の総量は、コバルト60に換算して
約十数億キュリーと推定している。その僅かI%が混入したとして、冷却水が持つ放射能量は1000万キュリーにもなる。これはと
んでもない恐ろしい量なのだ>
 石川氏によると、1万~5万キュリーー程度のコバルト60でも、厚さ1・5mのコンクリート壁で覆われた室内で保管する。今回漏出した水に含まれるのはその1000倍、1000万キュリーと推定される(37万テラペクレルに相当)。
<1000万キュリーとなると、それはもう、感覚外だ。10円(10キュリー)を遣り繰りしている貧乏人に、1000万円を都合せよと言うに等しい>
 さらに心配されるのは当初注入された海水に含まれていた塩分の影響で、推定される炉内に残る塩分量は総計100tにも及ぶ。こ
の大量の塩が、配管や設備の腐食を早め、汚染水が漏出する恐れがあるという。
<この大量の塩が炉心にどう作用し、どのような性状の物体を作っているのか、僕には見当がつかない>
 石川氏は事故後に渡米し、アメリカ・原子力規制委員会のヤツコ委員長と面会、「4号機のプールに水がないというのは、事実誤認だ。使用済み燃料プールの処理は峠を越えた」と主張している。
 いわば目本の「原子力村」を代表する人物の一人だ。その石川氏が、汚染水について身震いするような恐怖を訴えているのである。
3号機は放射線ダダ漏れ
 アメリカ製のロボット「パックポット」の活躍を突破口に、原子炉建屋内の「真の」状況が徐々に分かり始めてきた。
 5月10日には、比較的内部の線量が低い1号機建屋内に作業員が入り、原子炉の水位計を調整。その結果、1号機では水位が想定されていたよりもずっと低く、ほとんどの燃料が溶融(メルトダウン)して容器内部に溶け落ちていることが判明した。
 2号機、3号機では水位計のデータ上、燃料の半分程度が水に浸かっているとされているが、こちらの水位計はいまだ事故後のまま
未調整で、正確な数値を示しているかきわめて疑わしい。
 「水位計というのは、レファレンス(基準水柱)が地震などの影響で不安定になりやすく、あてにならない。1号機が、調整後にようやく水位が測れるようになったのはレファレンスを直したからです。
 2号機、3号機も作業員福島第一内に設置された汚水処理用タンクが建屋内に入り、水位計を調整して初めて正確なデータが取れる」(東京電力中堅幹部)
 炉内の水位以外に、東京電力がこれまでに公開しているデータは、原子炉内の圧力、温度、格納容器の圧力、温度、圧力抑制室の圧力、温度などがある。これらから読み取れるのは、炉内の恐るべき実態だ。
 「1号機は炉内の圧力が6・2気圧と高い。一方格納容器のほうは1・3気圧と、大気圧よりわずかに高い程度です。
 1号機は燃料が溶けて圧力容器が損傷し、大量の水漏れを起こしていることが分かっていますが、蒸気はそれほど漏れずに内部に留
まっているんです。格納容器のほうも、ある程度封じ込め機能が生きている。
 ところが2号機は、原子炉がO・9気圧、格納容器がO・5気圧で、ほぼ外気(1気圧)と同じです。つまり、原子炉が損傷してい
るだけでなく、格納容器も封じ込め機能を失っている。
 言うなれば窓を開けて車を運転しているのと同じ。炉内の放射性物質は、そのまま外気に漏出してしまっていると考えられます」(東京電力担当記者)
 元東芝の格納容器設計技術者の後藤政志氏は3号機に注目する。
 「この数字(16日)を見る限り、3号機は圧力容器周りの温度が141℃、格納容器の温度が196℃で、格納容器のほうが高くなっている。これは、圧力容器が損傷し、溶融した燃料が格納容器に落ちている可能性が高いということです。
 これは大変なことです。格納容器内の圧力は、ほとんど大気と同等(約1気圧)ですから、溶融した燃料から出ている放射性物質はそのままツーツーで外気に放出されている」
 実は冒頭で触れた石川迪夫氏も、事故後のかなり早い段階から「3つの炉心とも、溶融している可能性が高い」と指摘していた。しかし、2号機に至っては圧力抑制室が損傷して圧力のデータさえ取れない状態で、溶融した燃料がどこでどのように溜まっているのか、判然としない。
 ある原子炉専門家は、匿名を条件にこう話す。
 「おそらく3つの原子炉の燃料は、すべて溶けている。3つの圧力容器はいずれも損傷を受けて、放射能が漏出していると見られます。
 溶融した燃料ですが、直径4mくらいのいびつな塊となって、圧力容器下部か、格納容器に落ちている。卵の殻のような状態で、表面20㎝程度は硬くなっているが、内部は約2000℃での高温でまだ冷めきっていない。事故発生直後、緊急停止した段階で、熱量は運転
時の7%、1時問以内に2%、丸1日で1%まで冷えますが、そこからが長い。2ヵ月経ったいまでもO・1%くらいまでしか下がっ
ていないんです。溶融した燃料が内部まで固体の状態になるまで冷え切るには、かなり長い時間がかかると見ています」
 それでは、その間に放射性物質は漏出しないのか。この専門家の見立ては以下の通りだ。
 「今回の事故は、チェルノブイリ型の大爆発とはまったく様相が違う。むしろスリーマイル島事故と非常に似ています。揮発性の高いヨウ素131などの放射性物質はすでに事故直後に大半が飛散し、いまはほとんど漏出はありません。だから、周辺地域のモニタリングーポストの数値もかなり下がっている。
 しかし、原子炉から半径1~2㎞の範囲には、溶融した燃料の内部の、高温でドロドロになっている部分から飛び出した気泡の中身
がいまも飛び散っている。原発施設内で高い放射線量が観測されているのはそのためでしょう。とにかく冷却水を循環させて、溶融し
た燃料を早く固体化することです」
外交問題になりかねない
 しかし、多くの研究者が指摘するように、冷却中に再び巨大な地震など不測の事態が起こり、溶融した燃料に力が加われば、爆発的
事態に至る可能性すらある。
 東京電力もこの事実に気が付いている。しかし、とにもかくにも冷却を急ぐというのが、本音のようだ。
 元東京電力社貝で、東海大原子力工学科専任教授の高木直行氏はこう話す。
 「東京電力が5月17日に発表した改訂版の工程表を見て、あれ? と思いました。滞留水を再利用した、循環注水冷却をする、とされていたからです。
 これをやっても、完全に閉じた状態での冷却系統は構成できない。どうしても汚染水が漏れ続けるんです。そのことについての対応が、書かれていません。現状に比べれば、汚染水の漏出量は少なくなるので、それで良しとしているのかも知れません。
 しかし、現状ではタービン建屋からトレンチに汚染水が漏れているという話もありますし、今後も漏出をコントロールできない可能
性が高い。
 ですから、今回の改訂工程表のポイントは、とりあえずの安定冷却を目指すものだ、ということです。汚染水の連続発生は避けられ
ない」
 原子炉安定化のためには、「止める」「冷やす」「閉じ込める」の3工程が必要と言われる。現段階は、閉じ込めることを後回しにし、ともかく燃料を冷やすことを最優先したと言える。
 前出の高木教授は、今回の工程表について独特の表現で評価する。
 「何よりも、安定冷却に重点を置いたということでしょう。不完全ではありますが、よく考えられていると思う。ちょっとズルしているけど、スケジュールを守ることを重視したものだと思います」
 官邸のメンツを守るためか、東電の口約束なのかわからないが、工程表のスヶジュールを重視するあまり、汚染水は今後も漏れ続
ける。それによって、もっとも直接的な被害を受けるのは、当然ながら近隣の住民である。
 「私は、原発周辺の放射線量を調査し、汚染マップを作っていますが、今後も汚染水が土壌に染み込むとなると、土を入れ替えたりして住めるところ、住めないところを住民の意向に合う形で総合的に手立てしないといけない。
 東電の発表している数値は、私自身はまったくと言っていいほど『興味がない』ので、広島大、長崎大、海外の研究者などとネットワークを作って独白に調査しています。放射性物質は、ピーク時の3月15日、16日以降もずっと出続けていることが明白です。文科省のデータですら、あれだけの数値が出ているんですから、人体への影響については周辺20㎞、30㎞圏内だけでなく相当広い地域で考え
なければならないと思います」(京都大学原子炉実験所助教・今中哲二氏)
 阪大名誉教授の住田健二氏も、
 「汚染は、雨が降れば土壌に染み出し、拡大する。海水への影響の本格的な検証もこれから。下手をすれば、外国の海を汚して外交問題にもなりかねない」
 と危惧する。
 汚染水は流出経路がいまだにはっきり特定できていない分、拡散を食い止めるのが難しくなる、しかも今後も、炉心冷却のために汚
染水が出続けるのだ。
 東京電力はいま、仮設のタンクやバージ船などにこの汚染水を貯めることを計画しているが、圧力容器、格納容器の損傷場所が判明
していない以上、すべての汚染水の回収は不可能だ。東電の18日の会見では、建屋の下に溜まっている汚染水が「9万8500㎡」と発表されたが、記者からその根拠を問われると、「1号機のタービン建屋内の水量からの推測と、概算です」と説明するのみだった。い
まだに汚染水の正確な量さえ、判明していないのだ。
 福島放射能汚染は、いよいよ第二幕に突人した。
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週刊現代 23年6月4日号 安斎育郎さん・小出裕章さん対談

2011年05月28日 21時53分11秒 | Weblog
このところ「週刊現代」が売れてるとのこと。私も「毎週月曜発売らしい」ということを覚えるくらいこのところ買ってる。
その最新号(5月23日(月)発売の6月4日号)安斎育郎さん・立命館大学名誉教授と小出裕章さん・京都大学原子炉実験所助教の対談は必見です。月曜日には次号と入れ替わっちゃうから皆さん、今夜のうちにコンビニでゲットしてください!
「事故は必ずまた起きる。それでも動かす理由はなんですか
 原発「全炉停止」に反対する人たちに告ぐ」


 事故発生から2ヵ月以上が経過し、ようやく東京電力(東電)は福島第一原発1号機がメルトダウンを起こしていたことを認めた。だが、こうした危機が起こりうることを40年以上も前から訴え続けてきた科学者たちがいる。
 安斎育郎・立命館大学名誉教授と小出裕章・京都大学原子炉実験所助教――。
 この二人が、フクシマの現状をどう見るべきか、被曝の危険性をどう認識すべきか、そして“現代の怪物”原発をどう考えるべきかを論じた。

小出 現在の原子炉内部の状況について分析する前に、まず申し上げておきたいのは、公表されるデータはもはや信頼に値しないということです。
 1号機について言えば、東電は以前、炉内の水位について「燃料棒の先端からマイナス1700mmの位置」と発表してきた。私はそのデータを信頼し、圧力容器の底は大丈夫だけど、配管に穴が開いているために、炉心に注入している水が少しずつ漏れていると推測していました。
 ところが、ここへきて彼らは、水位計が間違っていました、炉心は全部露出していました、などと言い出した。もちろん、この発表も正しいかどうか疑わしいですが、仮にその通りなら、1号機は圧力容器の底に穴が開いているでしょう。
 また、東電によれば圧力容器の温度は110℃程度(5月15日時点)という。しかし、もし溶けた燃料が圧力容器の中に残っているのなら、もっと高い温度になるはずです。その点を踏まえると、もう溶けた燃料棒はすべてが圧力容器の底を抜け、さらにその外側の格納容器に落ちてしまったと思います。
安斎 原発事故の特徴ですね。何か起こっているのか、目視することができないから計器の数値で判断するしかないわけですが、僕は水位計のみならず、温度計や圧力計の観測値が大丈夫な
のかも危惧しています。
 もしそんな状態なら、何に依拠して考えればいいのかわからなくなってしまう。
小出 溶け落ちたウランについては、格納容器の底にも水があると私は推定していて、それによってかろうじて冷却はされていると考えています。
 言ってみれば溶けた燃料はあんパンのような形状で格納容器の底に落ちていて、真ん中、つまり「あん」の部分は溶けたままだけれど、外側はクラスト(表皮)状に固まって冷えている。
危機はいまも進行している
安斎 小出さんの指摘通りだとすると、怖いのは、今後の大きな余震の影響です。今、溶け落ちた燃料は内部が3000℃近い高温のマグマ状になっており、かろうじてその外側が水に浸かって冷えている状態だと推測できます。
 しかし、もしこの状態のまま、大きな地震が起これば、その衝撃で冷え固まっている溶融燃料の外側が割れたり、ヒビが入ってしまうかもしれない。そうなれば内部にある高温の燃料がいきなり大量の冷たい水に触れ、水蒸気爆発が起こる恐れがあります。
 実際、2004年にスマトラ島沖でM9・1の地震が起こった3ヵ月後にはM8・6、さらにその後にもM8・5という巨大な揺れが来た。
 つまり、この先、大きな余震が起これば、これまで以上に大量の放射性物質が放出されるかもしれない。
小出 それが最悪のケースですね。そこまでいかなくとも、溶けたウランが格納容器も突き破り、地面に達してしまうかもしれない。格納容器は厚さ4㎝くらいの鋼鉄製ですが、1400~1500℃で溶けてしまう。一方でウラン燃料は2800℃に達しますから、鋼鉄といっても溶ける。
 鋼鉄の下には分厚いコンクリートが打設されていますが、そこをも溶かしてしまえば地中に落ち込み、地下水を汚染する。あるいは、地下水と触れて水蒸気爆発を起こす可能性もある。ま
だまだ予断を許しません。
安斎 むしろ、より危機が進行しているかもしれない。東電は5月17日に修正した工程表を公表しましたが、来年1月までに収束を日指すという目標は変えなかった。しかし、無理でしょう。
小出 まず無理でしょうね。原子炉建屋内の放射線量は高いところで毎時1000~2000ミリシーベルトもある。そんなところではとても作業などできない。
安斎 東電の工程表は、出せとせっつかれたので思いつく限りの課題を並べただけ。原子力工学科に通う大学院生が書いたレポートのようなものです。そもそも、どの情報が正しいのかわか
らないまま書かれたんですから、そのとおりに進むわけがない。
小出 まずは作業環境を整備しなければなりません。そのためには、敷地内に溢れた約9万tもの汚染水を抜かなければならない。
 私は巨大タンカーに汚染水を移し、そのうえで柏崎刈羽原子力発電所に運びこんではどうかと考えています。柏崎刈羽原発なら、汚染水を処理することができるかもしれないからです。
 ただ、溜まった水を汲み出すのも容易ではありません。原子炉建屋の地下に通じるピット(排水を溜める穴)にはポンプが設置されているので、そこから汲み上げることも考えられますが、設備が水没していたら、それも不可能です。
安斎 僕は福島第一の敷地内に幅2m、深さ数mで長さは1mくらいの緊急塹壕を掘って表面を固める処理などを施し、そこに汚染水を流し込んだらどうかと思う。池をつくると蓋をするのが大変ですが、幅2m程度の塹壕なら屋根を設置できる。もちろん、それだけでは不十分ですが。
小出 人員の確保も課題ですね。専門知識を持ち、実力のある作業員が必要です。
安斎 チェルノブイリ事故では、いわば”突撃隊”が編成され、多くの作業員が急性放射線障害で死亡したわけですが、この日本で国家のため、ましてや東電のために死んでくれなどというのは許されない。これまで、原発の設置を推進してきた電気事業連合会のような団体が他の電力会社とも連携して、総力を挙げて作業員を確保すべきです。
 また、一定の知識と経験を持つ、引退したOBたちにも手伝ってもらう必要があるでしょう。
異常な放射線量
小出 東電はここへきて、格納容器ごと水で満たす「水棺」を断念しました。しかし、私は当初から、そんなものはできるはずがないし、やる意味もないと主張していました。すでに2号機では圧力抑制室が破損したことが明らかになっていましたし、1、3号機にしても、格納容器の圧力が上がらないということは、どこかに穴が開いているということですから、水が溜まるはずがない。そうしたことは東電もわかっていたはずなのに水棺にこだわり、結局は時間を浪費した。
 そして東電は原子炉建屋地下に溜まった汚染水を循環させて冷却に使うことも検討していますが、そんなことより簡単な方法がある。
 私としては、すでに圧力抑制室に設置されている残留熱除去系と呼ばれる系統を利用して冷却すればいいと思っています。この系統には熱交換器がありませんが、途中の配管を付け替えて設置すればいい。
安斎 あまりにも作業状況が悪いことを考えると、いずれ冷却を諦め、チェルノブイリの「石棺」と同じように、コンクリートなどで原子炉ごと固めてしまうことを迫られる時期が来るか
もしれません。
 一方で、原発周辺の汚染状況も深刻です。僕は4月中旬と5月初旬に現地に入りました。いわき市から入り、浪江町、飯舘村付近まで放射線量を測定して回ったんですが、途中の大熊町あ
たりから、極端に線量が高くなりましたね。地表近くでは、1時間あたり実に80マイクロシーベルトに達した。菜の花が群生していて桜も満開と、景色は美しいのですが、人間はひとりもいない。正直言って、とても避難した住民の皆さんが帰れる状況ではないですよ。
 また、福島市の保育園で放射線量を測ったところ、園庭の地表から30~40mのあたりで毎時6マイクロシーベルトもあった。平時の東京だと最高でもO・07マイクロシーベルトくらい
ですから、100倍近いレベルです。
小出 う~ん……(絶句)。改めて、原子力に関わってきた人間として、これほどの事故が起こってしまったことに責任を感じますね。
安斎 私も放射線の専門家として、今回のような事態を食い止めることができなかったことには忸怩たる思いがあります。
 しかし、それほど深刻な状況でありながら、政府は学校での積算放射線量の上限を年間20ミリシーベルトにしています。一般に、放射線量は100ミリシーベルトを超えるとがんを発症する確率がO・5%増えるとされていますが、低線量でも浴び続ければ発がんリスクは増す。余計な被曝はしないというのが鉄則なのですから、20ミリシーベルト以下ならいいということにはならない。
小出 その通りです。
安斎 被曝を少しでも抑えるには、汚染された上の表面を削るのが効果的です。測定してみると、表面から2~3mほど削れば、線量は半分以下になる。
 ただし、文科省が検討している、表層土と深層上の入れ替えはあまり意味がない。入れ替え作業に手間がかかることはもちろん、その方法ではグラウンドの下に汚染上が溜まっている状況に変わりはないですから。
 それに、今のところは3月中に放出された放射性物質が主な線源になっていますが、さらなる爆発などで新たな放射性物質の放出があれば、同じ手は使えなくなる。
 むしろ、校舎の裏など少し離れた場所に深い穴を掘り、そこに汚染土を埋めたうえで、表面を鉄板やスクラップになったクルマなどで覆うといい。
 また、放射線は窓を透過しますから、教室でも窓際は線量が高く、部屋の中央に行くと半分程度に減るという傾向があります。ですから当面の措置として、窓に近い部分の表層土を窓から遠ざける方向に運ぶとか、窓際にはロッカーや本棚などを並べて遮蔽することも考えたほうがいい。
小出 福島の事故は、長期にわたって放射性物質が撒き散らされているという点で、スリーマイル島事故やチェルノブイリ事故とも違う、人類が初めて経験する事故ですから、様々な対策
を検討すべきでしょうね。
安斎 自分の被曝量を知ることも大事です。学校では、代表者を決めて線量を測り、1日ごとにグラフ化しておく。一方で内部被曝については測定が難しい。(内部被曝を測定する)ホールボディカウンタは数千万円もするので数が少ないですから。
 ただ、バイオアッセイと言って、尿や血液から内部被曝量を調べる方法もありますから、地域ごとに代表者を決め、試料を提供してもらって分析することも検討すべきでしょう。
 あわせて、がんの早期発見も大切です。例えば東北地方の人については、特別の医療体制を構築し、被災者証明があれば、いつでも無料で検査を受けられるような仕組みを考えてもいい。
原子力村の巻き返し
小出 今問われているのは、これからも原発に頼っていくのかという根本の問題です。私は一貫して、すべての原発を即刻停止するべきだと主張してきたわけですが、福島の事故が今も進行中なのに、未だに日本国内で原発が運転されていることが信じられません。原発は一度事故を起こしたら、取り返しが付かないということを、今回の事故で学ばなくていつ学ぶのでしょうか。
 菅首相にしても、浜岡原発を一旦、止めるとは言いましたが、2~3年後に防波堤が完成すれば再開するという含みがありますので、素直に評価はできない。
 もちろん、一国の総理がそこまで要請したのは初めてですから前向きに捉えたいのですが、この事態にあって、なお原発が稼動し、日本人の多くが停電は困る、電気が足りなくなって豊かな暮らしができなくなると困る、と言い続けているのを見ると、正直言って絶望的な気分になります。
安斎 浜岡原発を巡っては、僕も40年前から地元住民と議論を重ねてきましたが、今回止めると言っても2~3年ですからね。その間に、原発をどうするのか、この国の電力需要をどうやって賄っていくのか、国民の間で合意形成を急ぐ必要があります。
小出 私は総務相統計局のデータをもとに試算したことがありますが、たとえ原発がなくとも、実は火力と水力だけでピーク時であっても電力供給は完璧にできる。
 電気が足りないなどと喧伝するのは、この事態になっても原子力に執着する人たちの脅しに過ぎない。
安斎 電力貯蔵技術の開発も焦眉の課題です。春と秋は電力が余りますから、その分を貯蔵して夏や冬に回せないか。
 電力使用の平準化も必要ですね。これは冗談ではなく、僕は夏の高校野球は秋にやるべきだと思う。例年、窓を閉めきってクーラーをかけ、高校野球を観戦する8月中旬が電力需要のピー
クになりますから。
 自販機のない生活も考えた方がいい。自販機文明は原発3~4基分の電力を使用しているんですよ。さらに、商品である飲料にしても、例えばアルミ缶はたったひとつ作るのに、60Wの電球を9時間、点けっ放しにしたのと同じだけの電力を消費するんです。もちろん、いきなりなくすのは難しいでしょうが、コンビニの前に自販機を置く必要はまったくない。
小出 原発を推進したい人々は、原発はCO2を出さないから環境にいいと主張します。でも、生命体にとって一番怖いのは放射能でしょう。C02だけを悪者にして、それを出さないから原発はエコだとかクリーンだという宣伝はもう止めるべきです。
安斎 こういうことを言うからでしょうが、政府は我々のような原発反対派の主張にはいっさい耳を傾けようとしませんね。
小出 確かに、私も福島第一について、政府から意見を求められたことは一度もありません。
安斎 原発推進派は垣根を作り、反対派を弾圧してきました。この国は国家と産業界が、原発を誘致して町の財政を豊かにしたいという自治体を巻き込んで、いわば総力体制で原発を推進してきたのです。
小出 おっしゃる通りですね。産・官・学の「原子力村」と呼ばれる強固な共同体が存在し、そこに加わらない私や安斎さんの意見は徹底的に無視されたまま、今日まで来てしまった。
安斎 原子力村の住人にとって、我々のような存在は、邪魔だったんでしょう。僕はこれまで様々な嫌がらせを受けましたから。’70年代から東電には”安斎番”がいて、僕を尾行したりしていた。ある時など、カネを出すからアメリカに留学してくれとも言われた。とにかく、日本からいなくなってほしかったんですね。
小出 私はそういうハラスメントを受けた覚えはないですね。安斎さんほど悪くなかったんでしょう(笑)。
 安斎さんは長く東大に在籍されていましたから、私のいる京大とは校風の違いもあるのではないですか。
安斎 確かに、僕は推進派学者のお膝元である東大の原子力工学科の1期生ですからね。国としては、日本の原子力開発の草分けになるはずだったのに、とんでもない奴だと思っているに違いない。原子力村の住人にとって、我々の主張は”遠吠え”に過ぎないかもしれません。でも、我々は原発依存から脱却するために、これからも吠え続けますよ。

こいで・ひろあき/'49年、東京生まれ。東北大学工学部原子核工学科、同大学院を経て京都大学原子炉実験所助手(現・助教)。伊方原発設置許可取り消し訴訟では住民側証人に
あんざい・いくろう/'40年、東京生まれ。東京大学工学部原子力工学科の1期生。同大医学部助手、立命館大学教授を経て同大名誉教授、同大国際平和ミュージアム名誉館長
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books213「政権交代の悪夢」阿比留瑠比著(新潮選書)

2011年05月28日 17時25分07秒 | books
政権交代の悪夢 (新潮新書)
クリエーター情報なし
新潮社

産経新聞記者による民主党めった斬りの本。帯には「愚かすぎる政権の酷すぎる内幕」とあって、菅内閣の原発事故対応に頭に来ていて妙に共感して買ってしまいました。
「民主党政権は政治を堕落させ、国家を壊滅の危機に陥れてしまった。」って、自民党御用新聞の産経新聞に言われたくないよね。自民党長期政権が政治を堕落させたから政権交代があったんだし、原発を無定見に作ってやりたい放題旨い汁を吸ってきたのは自民党議員なんだから。
ただ、今の菅政権の酷さを再確認するには良い反面教師(教本?)となるし、民主党政権の「能力不足」(「政治主導」でありながら有能な官僚と有機的に連携して効果的に政策を行っていく能力がまだまだないこと)も著者の言われるとおりなんだろうと思う。
そうはいいつつ、浜岡原発を停め得たのは「民主党」政権だったからだと思うし、この「混沌」の中から様々な情報ツールを通じて私たちの「政治」への関心がいつになく高まっていることは決して悪い事じゃないなって思う。自民党・河野太郎さんのツイッターなんて、菅政権の「酷さ」がなかったら決して読むことなかったって思うし、社民党・福島瑞穂さんのツイッターも読み始めた。菅直人にはとっとと辞めて欲しいけど、会社の上司も国のトップもそういうヤツに限って「居座る」んだよね。それに「じゃあ誰になって欲しい」って尋ねられた時にちゃんと名前を言える民主党の政治家が自分の中にないのも僕自身「無責任」だなって感じている。もっと私自身が国会議員一人一人のやっていること、発言、その考え方や実行力をキチンと見ていくことが大切だよなぁ~と思う。
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books212「30分でわかるiPhone」(発行 ソシム)

2011年05月28日 15時45分19秒 | books
30分でわかるiPhone―iPhone 4&iOS 4対応
クリエーター情報なし
ソシム

久しぶりのブックレビューはiPhoneのハンドブック。先週例によってブックオフで見つけた一冊(500円/定価950円+税)。
iPhoneは2008年7月11日の初代(訂正;日本で初めて発売されたのはiPhone3GでiPhoneとしては2代目でした。)発売日に池袋のビックカメラで偶然ゲット。それ以来の付き合いだからもう丸3年。去年6年24日にiPhone4が発売になりましたがホワイトが欲しくてずっと我慢していました。結局半年でギブアップ、11月の始めにiPhone4に機種変更しました。すでに5発売のうわさも出ていますが、とっても快適です。
肝心の本の紹介が最後になってしまいましたが、とってもわかりやすいマニュアルです。すでにiPhone4を使っている自分にとっては「Check Point」の囲み記事と各ページの欄外に書いてある1行知識が何気に役立ちました。
でもこうしてマニュアルを読むと使いこなせていなかった機能がたくさんあって驚きました。高機能なだけに1冊持っていて損はないですね。
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books211「自転車トラブル解決ブック」丹羽隆志著(山と渓谷社)

2011年05月04日 11時15分37秒 | books
自転車トラブル解決ブック (Outdoor)
クリエーター情報なし
山と溪谷社

自転車が気持ちよいシーズンになってきましたねぇ~。
かっこいい自転車欲しいなぁ~。私が狙ってるのはミニベロ・タイプ。でも高いんですよねぇ~。アマゾンの欲しいものリストに入れておいた「2011 BRUNO(ブルーノ) MINI VELO 20ROAD ターコイズ」はいつのまにやら「在庫切れ、再入荷予定は立っておりません」になっていた。悲しい。
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ラーメン07_ら~めん七流門(なると)

2011年05月02日 12時06分55秒 | food
会社近くのお奨めラーメン屋さん第二弾は「七流門(なると)」
写真は「らーめん(中盛り)」750円です。
上司からもらったクーポンを使って味玉をトッピング。
麺は太麺で、スープは魚介系ダシが効いた味噌あじな感じ。
乗っかってるもやしの量が半端でないです。その上に豚肉が乗っけてありますが、最初はどこから箸を付けたものやら迷うほどです。
スープを飲み切るとはいきませんでしたが、なかなか美味しかったです。
<2010-02-10 12:39:33記>

ずいぶん久しぶりに「七流門」にやってきました。ブログで見たら去年の2月以来だ!
ラーメン小650円。スープ甘めですが、太麺によく馴染んでいて美味い!豚肉にもやしが特色ですが、麺がイケる! 今回は「小」だったのでスープも飲み干しました。あるいはスープが進化したおかげかも?「七流門」は神田で好きなラーメン屋さん上位5本の指に入りますねぇ。東口の大勝軒、麺屋武蔵・神山、の次くらいかな。
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