木村晴美さんがご自身のブログで「困った手話通訳者2」として、こんなことを書いておられる。
■聴者慣れして自分と通じる聴覚障害者たちはエリートだが、普通のろう者は知識や情報量が足りないからと次第に指導者的ふるまいをするようになる。
相変わらず厳しいご指摘です。
ところで、
私も以前参加した司法通訳模擬演習で、ある有名な手話通訳者が模擬通訳に立って、口型付きのいわゆる古典的な「中間型手話(?)」で通訳したところ、被告人役(だったかな?)のろう者から「全然わからんかった」とバッサリやられている場面を目の当たりにして、自分自身を振り返って「まっ青になった」経験があります。
(1)「日本語で言い換えているに過ぎない」という問題
「ある有名な手話通訳者」は、自分なりに(日本語で!)言い換えた手話表現、つまり裁判官や検察官の言ってる内容を「簡単な日本語」に言い換えたのをそのまま中間型手話で表現されていたので、私も見ていて「意味をつかみにくいなぁ~」とは感じていたのですが、私がやってもあんな感じなんだろうなぁと思っていたので、「全然わからんかった」の評価には自分の問題としてショックでした。
(2)「話者(誰の発言なのか)」をどう伝えるかの問題
それと、その通訳者は、誰の発言かをいちいち指さして示していたのですが、その「PT(検察官)」「PT(裁判官)」と指さすたびに、何というか手話のリズム(?)がブチブチに切れてしまって、文の流れがガタガタになってしまって、結局誰の発言がまるでつかめないし、その指さしたあとに表現した手話文も意味がつかめない、という状態になってたように思います。
司法場面において「ロールシフト」によって話者を伝えるのが良いのかどうかは私の力量を超えた課題ですが、「あれをろう者が通訳していたらどうやるかなぁ~?」と想像してみると、指さしはもっと小さな動きで、「サイバンカン」と口型で示しておいて、ロールシフトした「裁判官が検察官に向かった目で」手話を繰り出すような・・・。そんな簡単にはいかないでしょうけど・・・。
この問題は、模擬裁判員裁判を見学している間中ずっと引っかかった点です。誰が話者であるのか?裁判長、検察官、弁護人と最低でも3人のやりとりがある上に、犯罪の状況説明の中にも複数の人が登場して、何が何だかわからなくなります。その上、模擬通訳後半では、弁護士役の先生がわざと「異議あり!」なんて突然叫んだりして、通訳者を泣かせてました。この課題は「個人の工夫」のレベルを超えていると思います。専門家による「司法手話通訳の研究」が必要ではないでしょうか。
(3)全日ろう連「司法手話(単語)」をどう使いこなすかの問題
もう一つは司法用語を手話でどう通訳するかの問題がありますよね。いま日本手話研究所「新しい手話動画」サイトで、司法関係の手話を掲載しておられますが、何かあれを用いるルールを決めておかないと、木村さんが言われるように「(新しい)司法手話を知らないろう者が悪い」みたいな態度の手話通訳者が出てくる畏れがないとも言えません。例えば「~法」という手話表現ひとつ取っても、今は、左手「(指文字の)ほ」+右手「ろ」の手形を振り下ろす、表現のようですが、私の地元であの手話を自然に使いこなしているろう者は残念ながら多いとは言えません。まして「条約」の手話なんて、一年前の全国ろうあ者大会でも全日ろう連幹部が「苦笑いしながら」表現していたような状態です。
司法場面の手話通訳において(政見放送手話通訳の初期にもこんなルールが流布しましたが)、「意訳」してはいかん、元の日本語を忠実にそのまま表現せよ、などという言説を、ろう者がどう整理していくのか、もっと研究(?)が進まないと、木村さんが指摘されたような知識で頭でっかちになってしまった手話通訳者が「幅を利かせる」状態になってしまうのではないでしょうか?
■聴者慣れして自分と通じる聴覚障害者たちはエリートだが、普通のろう者は知識や情報量が足りないからと次第に指導者的ふるまいをするようになる。
相変わらず厳しいご指摘です。
ところで、
私も以前参加した司法通訳模擬演習で、ある有名な手話通訳者が模擬通訳に立って、口型付きのいわゆる古典的な「中間型手話(?)」で通訳したところ、被告人役(だったかな?)のろう者から「全然わからんかった」とバッサリやられている場面を目の当たりにして、自分自身を振り返って「まっ青になった」経験があります。
(1)「日本語で言い換えているに過ぎない」という問題
「ある有名な手話通訳者」は、自分なりに(日本語で!)言い換えた手話表現、つまり裁判官や検察官の言ってる内容を「簡単な日本語」に言い換えたのをそのまま中間型手話で表現されていたので、私も見ていて「意味をつかみにくいなぁ~」とは感じていたのですが、私がやってもあんな感じなんだろうなぁと思っていたので、「全然わからんかった」の評価には自分の問題としてショックでした。
(2)「話者(誰の発言なのか)」をどう伝えるかの問題
それと、その通訳者は、誰の発言かをいちいち指さして示していたのですが、その「PT(検察官)」「PT(裁判官)」と指さすたびに、何というか手話のリズム(?)がブチブチに切れてしまって、文の流れがガタガタになってしまって、結局誰の発言がまるでつかめないし、その指さしたあとに表現した手話文も意味がつかめない、という状態になってたように思います。
司法場面において「ロールシフト」によって話者を伝えるのが良いのかどうかは私の力量を超えた課題ですが、「あれをろう者が通訳していたらどうやるかなぁ~?」と想像してみると、指さしはもっと小さな動きで、「サイバンカン」と口型で示しておいて、ロールシフトした「裁判官が検察官に向かった目で」手話を繰り出すような・・・。そんな簡単にはいかないでしょうけど・・・。
この問題は、模擬裁判員裁判を見学している間中ずっと引っかかった点です。誰が話者であるのか?裁判長、検察官、弁護人と最低でも3人のやりとりがある上に、犯罪の状況説明の中にも複数の人が登場して、何が何だかわからなくなります。その上、模擬通訳後半では、弁護士役の先生がわざと「異議あり!」なんて突然叫んだりして、通訳者を泣かせてました。この課題は「個人の工夫」のレベルを超えていると思います。専門家による「司法手話通訳の研究」が必要ではないでしょうか。
(3)全日ろう連「司法手話(単語)」をどう使いこなすかの問題
もう一つは司法用語を手話でどう通訳するかの問題がありますよね。いま日本手話研究所「新しい手話動画」サイトで、司法関係の手話を掲載しておられますが、何かあれを用いるルールを決めておかないと、木村さんが言われるように「(新しい)司法手話を知らないろう者が悪い」みたいな態度の手話通訳者が出てくる畏れがないとも言えません。例えば「~法」という手話表現ひとつ取っても、今は、左手「(指文字の)ほ」+右手「ろ」の手形を振り下ろす、表現のようですが、私の地元であの手話を自然に使いこなしているろう者は残念ながら多いとは言えません。まして「条約」の手話なんて、一年前の全国ろうあ者大会でも全日ろう連幹部が「苦笑いしながら」表現していたような状態です。
司法場面の手話通訳において(政見放送手話通訳の初期にもこんなルールが流布しましたが)、「意訳」してはいかん、元の日本語を忠実にそのまま表現せよ、などという言説を、ろう者がどう整理していくのか、もっと研究(?)が進まないと、木村さんが指摘されたような知識で頭でっかちになってしまった手話通訳者が「幅を利かせる」状態になってしまうのではないでしょうか?
現実でしょ。