観るも八卦のバトルロイヤル

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「白旗の少女 命のドラマスペシャル」感動していいのかな? こんな悲壮な実話に、日本人として恥じました

2009年10月01日 | 映画・ドラマ
 とにかく涙涙で、心も身体も活性化される思いだった。どこかで観たことある? という思いが15分くらいで蘇った。「終戦45年ドラマスペシャル 白旗の少女」。1990年だから20年程前になる。当時ハリウッド女優として馳せた工藤夕貴が印象的だった。玄米のおにぎりを握って「ねえねえがわるかったねー」という台詞と、にいにいが海岸で眠っている間に射殺されていた。そして、洞窟の中で、手足の無い老人の若山富三郎。その妻に子どもが豆をかんで柔らかくして食べさせる。それが20年を経て印象に残っているシーン。
 自分も若く、沖縄も中国も知らない頃だったので、あまり興味が無かった。ただ、怖いという思いだったが、今回の「白旗の少女 命のドラマスペシャル」を観て、「終戦45年ドラマスペシャル 白旗の少女」とほぼ同じの進行。原作があるからそうなのかも知れないが、本人富子(八木優希)と鈴木杏。凄まじさを感じた。そして、前回より、臨場感ある作り方で、本当に、あの戦争を憎まずにはいられない。こうして書いている今でさえ、涙が止まらないのだ。こんなこと初めて。
 沖縄の人々は古来から独自の文化を守り、そして平和に生きていた。日本と言うより、中国に近い文化が発達しているのだから、彼らを日本人の枠に入れるのは気の毒でさえある。それがたまたま、日本に属していたことから、日本人としての義務を余儀なくされながらも差別、酷使され、そして、民間人でさえも4人に1人は命を失った。それも生きられる命を失った人も多い。
 実は、沖縄が好きで、今月中にも長期旅行を企画していたのだが、このドラマを観て、軽々しく行けない気持ちになって、断念している。そう、不本意ながら、私は、日本人なのである。
 ドラマに話しを戻そう。主演の子役・八木優希が巧い。「蛍の墓」の節子とオーバーラップしたが、こんな小さな子がたった1人で数カ月生きていたのが奇跡だ。運命だと思う。彼女に冷たかった人々も、攻めることは出来ない。誰もが、自分のことで精一杯の極限状態だったのだから。我々はそんな極限状態を生涯実感出来る日は無いと思う。
 そんな富子に希望と平安を与えてくれた老夫婦。ご主人は手足が無く、奥様は目が見えない。それを今回は、菅原文太、倍賞千恵子が演じていた。富子自身も、彼らのお陰で生きていると悟っているが、今、この平和な時代で、大人の自分だったら、ガマの前で、「ここにおじいとおばあがいる」と白旗を振ったであろう。が、あんな小さい子にそんな考えもないだろうし、西洋人というだけで怖い時代だったのだから仕方ない。
 あの老夫婦は、命を失ったことだろう。が、なぜ? あんな立派な人が死ななくてはならなかったのか。寿命を全う出来なかったのか?
 倍賞千恵子さんが自然な年齢を演じていて、素晴らしい。殆どの女優はリフトアップなど整形をしている中、自然な老いを魅せている。これも女優としての義務なのではないだろうか。いくら若いと言われても顔のしわが無いだけで、背格好は老人そのもの。しわが無いだけにかえって哀れな某女優たち。倍賞さんみたいに力があれば、見栄えなど関係ない。自然に老いて、老いたからこそできる演技。倍賞さんこそ、昭和を代表する本物の女優だ。
 菅原文太もしかり。押さえた中にも重みがある。今、重みのある演技を出J切る役者はどれだけ居るだろうか? 数字ではなく、演技。若山富三郎を越えた、菅原文太。
 今や、イケメン若手のドラマばっかしじゃん。それに、バラエティに押されてるテレビ界。技量のある役者、俳優とかタレントではなく、役者の本当のドラマを作ろう。
 このドラマだって人気役者を起用せず、作ったからこそ深いのだ。まあ、そこで黒木瞳。1人くらいはネームバリューが必要だろう。彼女の回想とナレーションで話しは進むが、ごめんなさい。彼女、必要なかった。
 自分は、アメリカが好きで、今度産まれ変わるならアメリカ人になりたいとさえ思っていた。しかし、アメリカは、自分たちの恥部を封印している。封印して更なる悲劇を生みすぎている。ベトナム然り。中東然り。
 おかしな大和魂に汚染されて散った人々。前にも書いたが、武士道は捕虜になることは認めている。いつから武士道が大和魂になってしまったのだろう。
 ここまで突き詰めさせるドラマだった。後世に残して欲しい。
 そして教科書にさえ、その姿をさらした彼女の気持ちを、今やっと分かったような気がした。それはほんの少しである。白旗の少女の写真を目にした時、戦争を知らなかっと子どもの頃は、ただの風景写真だったのだ。そして、あの写真を目にした瞬間、富子さんは生存していたとう事実が凄い。