今日は、午前8時から我が地区の大般若行事があった。多分、本当は「だいはんにゃ」と言うのだろうけれど、我が地区では昔から「おはんにゃ」と呼んでいる。
まずは、集会所広場で、三崎の伝宗寺から運んできた箱の下をくぐり、今年1年の健康などを祈る。この箱の中には、大般若経の経典がたくさん入っており、その下をくぐるので、経典をいただいた、読破したほどの意味があるのだろうか。私が子供の頃は、まだ道路が整備されておらず、若い衆が夜中に峠を越えて三崎まで歩き、経典の入った箱を担いで我が地区まで持ち帰っていた。そうして、早朝より集落の道を担いで歩き、各家の角々で住民がその経典の入った箱の下をありがたく、くぐっていた。さらには、42歳の厄年の男性がいる家庭には、庭まで入っていたらしい。その時代の地区住民のエネルギーを感じる気がする。しかし今は、車で経典を迎えに行って、集会所広場でかざして参集者が箱の下をくぐるというだけになったようだ。
私は、大般若の行事はこれだけのものだろうと思っていた。ところが、この後に本当の大般若会があることを昨年初めて知った。興味があったので、昨年に続いて今回も参加した。正式には、「大般若転読祈祷会」というものらしい。だから、大般若といえばこちらの行事を指すようで、はじめに書いたような、経典の入った箱の下をくぐるというのは、ここ名取独特の行事のように思える。
さて、大般若会だが、伝宗寺の和尚さんが来られてから、我が地区の無人のお寺に集まり、中央壇上に十六善神様の掛け軸をお祀りして、和尚が「般若心経」などを唱える。そして、同行して来た小僧さんや地区の代表者数人が手分けをして、「大般若経」を1巻ずつ手に取り、声を出して「大般若波羅密多経第○巻・・・」と唱えながら、蛇腹折りの経典を右へ、左へ、前へとパラパラとめくる。その所作をしながら「般若心経」の最後の一説だけを唱え(これを転読というらしい)、最後に「降伏一切大魔最勝成就(ごうぶくいっさいだいまさいしょうじょうじゅ)」と唱えて、この地区の悪魔祓いをする。それらが終わったあと、和尚が分厚い経典の1巻を手にし、一人一人の背中を経典で数回たたいてくれる。このたたきは少々痛いが、なかなか気持ちよく、健康になるような気がしてくる。このあと、和尚が再び簡単にお経だか呪文だかを唱えておしまいとなった。
「大般若経」は全部で600巻からなっており、かの西遊記のモデルとなった中国の僧玄奘三蔵法師が、4年かけてサンスクリット語から中国語に翻訳したというものだ。だから、本来は600巻全部をパラパラめくりするのだろうけれど、昨年も今年も経典の入った箱は1つだけしか持ってきていないので、そこには100巻ほどしか入っていなかった。そういえば、子供の頃は、経典の入った箱を数個運んできていたので、当時は600巻全部を迎えていたのかもしれない。そして、和尚ほかのパラパラめくりの時唱える呪文は、その玄奘法師の御徳に感謝して、大般若経の威光により、天下泰平、五穀豊穣、福寿延命、万民和楽をお祈りしているのであろう。
今年も無病息災でありますように!