何気ない風景とひとり言

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紀三井寺-(3) (和歌山)

2019年05月18日 | 寺社巡り-和歌山

【和歌山・和歌山市】紀三井寺はもとは真言宗山階派に属していたが、昭和二十三年(1948)に独立して救世観音宗総本山を名乗り、山内に子院6ヶ寺および末寺14ヶ寺を包括する。
紀三井寺の正式な寺号は「紀三井山金剛宝寺護国院」だが、山内に湧き出る3つの霊泉から「紀三井寺」という名前で親しまれてきた。

正面に大きな千鳥破風を設け、「救世殿」の扁額を掲げた本堂に....。 唐破風の向拝は、4本の角柱の向拝柱を配した三間で、水引虹梁が3分割され、真ん中が高く両側の丸桁の位置にある。 正面に一間の擬宝珠高欄付き切目縁があり、母屋は二間の吹き放しの外陣と内陣が格子で仕切られている。 格子の上には西国巡礼寺院らしく多くの奉納額がずらりと掛けられ、真ん中の上の欄間に懸仏が懸けられていて興味深い。 組物は彫刻が施された尾垂木の三手先で、組物間が詰組になっているなど細部に禅宗様が用いられている。
本堂前右手の石段を上ると、直ぐ右に朱塗りの多宝塔、左には一間の外陣が吹き放しになった開山堂が建つ。 開山堂の向拝の龍の彫刻に目を見張らされた。 龍頭と上半身の木鼻、そして水引虹梁に下半身の彫刻が施され、まるで龍が向拝柱を突き抜けている姿になっていて珍しいと思う。
開山堂の向拝から優美端厳な朱塗りの多宝塔をしばし眺める。 多宝塔は室町時代の再建で、山内に現存する最古の建物とされるが、修復や整備がキチンと行われているようであまり古さを感じさせない。 本堂側である南面が正面だが、両側面(多分後方も)が和様の盲連子の窓であるのに、正面は黒い縁取りの禅宗様の花頭窓になっていて面白い。 また、初層には親柱に逆蓮頭を乗せた禅宗様高欄付きの廻縁を設けている。
多宝塔から開山堂境内の東側に進むと、覆屋に紀三井寺の鎮守である三社権現が鎮座する。 しかし、正面に工事用テントががっちりと張れていて拝観できない状況だ。 罰が当たりそうだが、テントの隙間から少し強引にカメラを突っ込んでなんとか撮影....写真を見ると、春日造りとみられる檜皮葺の三社が並んでいるが、痛みがみられるので老朽化が進んでいるようだ。

入母屋造本瓦葺の本堂(観音堂とも称す)...宝暦九年(1759)建立の総欅造り....厨子内に安置の本尊十一面観世音菩薩像」は為光上人が彫ったものとされる

正面側面とも五間で、正面三間は唐破風の向拝

水引虹梁は3分割され、各虹梁の上に動物(中央は鳳凰か)の彫刻を施した本蟇股、両側虹梁には一角獣らしき木鼻が付く...兎毛通しは猪目懸魚
 
軒廻りは二軒繁垂木、組物は二手目と三手目が尾垂木の三手先、組物間に詰組があり細部に禅宗様が用いている/組物から出ている尾垂木の先に彫刻が施されていて、二手目は波で三手目は龍頭だ

二間の外陣は吹き放しで、中央間口の上に「救世殿」の扁額
  
正面に擬宝珠高欄付き切目縁、向拝柱は角柱だが外陣は6本の丸柱/外陣と内陣の結界は格子で仕切られ、格子の上に奉納額がならび、真ん中の欄間に懸仏が懸けられている/本堂前縁に鎮座する十六羅漢の第一尊者の賓頭盧尊者....「お身代わりなで仏」といわれる

多宝塔が建つ高台から眺めた本堂....屋根に乗る大きな千鳥破風の棟に三つ盛り井桁の紋を入れた鬼板、拝に猪目懸魚、妻飾は虹梁蟇股

本堂の妻は正面の千鳥破風と同じように大棟に三つ盛り井桁の紋を入れ鳥衾を乗せた鬼板、拝に三つ花懸魚、妻飾は鳥の彫刻を施した虹梁蟇股
 
本堂に向かって右手の石段を上ると平地で、直ぐ右手に多宝塔、左手に開山堂が建つ

露盤宝珠を乗せた宝形造本瓦葺で三間四方の開山堂....正面と側面に切目縁を設けている

正面一間が吹き放しの外陣で、外陣と内陣の間の結界は格子で仕切られている....軒廻りは二軒繁垂木、組物は出組で中備は中央間に蟇股、脇間に蓑束
 
面取柱の上に出三斗、水引虹梁上の中備は脚間に獅子の彫刻を配した本蟇股....龍頭と上半身の木鼻、水引虹梁に下半身が施された見事な彫刻で、龍が向拝柱を突き抜けている姿だ/母屋の正面中央間の梁に鳥の彫刻を配した本蟇股

本瓦葺屋根の多宝塔(重文)....室町時代文安六年(1449)の再建....山内堂宇で最古の建物のようだ

大師堂前から眺めた鮮やかな朱塗りの多宝塔(北側の側面)

上層の軒廻りは二軒繁垂木、12本の柱を立て組物は四手目が尾垂木の四手先、円形の高欄を巡らす

三間の初層は中央間に桟唐戸、側面の脇間は盲連子の窓

下層の軒廻りは二軒繁垂木で軒支輪を設けている....組物は出組で中備は側面と正面脇間に蓑束、正面中央間のみ本蟇股

多宝塔の正面は中央間に紋らしき文様を入れた桟唐戸で、脇間は禅宗様の花頭窓

初層に禅宗様高欄付き廻縁....四天柱内の内陣に鎮座する五智如来坐像は室町中期の様式

開山堂境内の南側に鎮守社の三社権現社と春子稲荷社が鎮座している

正面に工事用テントが張られた三社権現社....左隣の小さなお社は春子稲荷社
 
「春子稲荷大明神」の額が掲げられ、明神居を構えた宝形造銅板葺の春子稲荷社/切妻造本瓦葺の正面三間の覆屋に鎮座する三社権現...手前は巡拝供養碑

痛みがあって老朽化が進んでいる三社権現の檜皮葺の社(春日造りのようだ)
 
開山堂境内の南端の石垣の上に鎮座する舟光背形十一面観音石仏と宝篋印塔/塔身に「西国三十三度」と刻まれた巡拝塔の宝篋印塔....大きく反り返った隅飾突起は江戸期作と推、伏鉢に格狭間を入れ、大きな請花上にかなり欠落した九輪

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