対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

ハンソンの楕円軌道論1

2018-03-23 | 楕円幻想
『科学的発見のパターン』(村上陽一郎訳、講談社学術文庫、1986)の第4章「理論」は、ハンソンのケプラー論である。ここでハンソンは卵円形(物理的な仮説)と楕円(幾何学的な仮説)との関係を明確にしようと試みていた。取り上げてみよう。

火星―太陽系において、力関係は次のように考えられていた。太陽の力は火星を離心円の接線方向に動かし、軌道が円から外れる力は火星にある。火星が円から内側に移動するその動きは秤動と呼ばれていた。「円から楕円へ」がケプラーの歩みだが、円軌道に疑問をもったとき、最初に想定されたのは卵形であった。秤動の先には卵形があった。
ケプラーにおいて惑星軌道の物理は楕円ではなく卵形に想定されていた。楕円は卵形軌道を解明する代替手段(数学的道具)であった。卵形と楕円は並行していたが、力点はあくまでも卵形にあった。
『新天文学』第58章で、卵形(卵円形)が楕円に変わる。ハンソンはここに焦点を当てている。