担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

プライム教布教活動メモ。

2023-05-05 23:43:09 | mathematics
William Prager という連続体の物理学の研究者(おそらく大家といってよいのではなかろうか)が 1961 年に出版した "Introduction to Mechanics of Continua" は 1980 年に共立全書の一冊として日本語訳が出された。

訳書の 6 ページの中ほどに,「ダッシュのついた座標とダッシュのない座標」という言い回しにひっかかり,先を読めなくなってしまった。

残念ながら手元に原書があるわけではないのだが,幸いなことに Dover 版を Google Books で一部閲覧できた

それによると,ちょうど原著 7 ページの末尾あたりが該当箇所であるが,"the primed and unprimed coordinates" とある。

もっとも,それが 1961 年当時の記述そのままかどうかは保証の限りではない。Google Books の Dover 版は 2004 年に発行されたものらしいからである。

なお,Birkhäuzer から 1961 年に出たドイツ語版では英語版と同じく 7 ページの下の方に "der gestrichenen und ungestrichenen Systeme" とある。

訳は「プライム」で良いはずであるが,日本で当時広く使われていた「ダッシュ」をわざわざ訳語として採用した訳者の配慮は理解できるものの,それから 43 年も経った令和の現在であっても高校数学の教育現場で未だに「ダッシュ」と教えているのかと思うといたたまれない。

通常の用法とはずれているであろうが,私はこの現象を「ガラパゴス化」と呼びたい。

かつてコンピュータ上で動作するプログラムを「ソフトウェア」,略して「ソフト」と呼んでいたのが,スマホの普及とともに「アプリ」(アプリケーションの略であろう)という呼び方に取って代わられてしまった。このフットワークの軽さというか,腰の軽さを教育現場でも発揮できないものだろうか。記号の読み方をわざわざ記している教科書は少なく,口伝で継承されてしまうため,改変は非常に難しいのだろうか。

いや,今のご時勢ならばむしろ数学解説系人気 YouTuber が「プライム」と連呼していればより若い世代に浸透しそうな気がする。
こう考えれば未来は明るいといえるのかもしれない。

余談であるが,古くはソフトウェアに「紙物」,ハードウェアに「金物」という訳語を充てようという試みがみられたのだが,それらは定着せずに終わったようで,今では古文書でしかお目にかからない。

言葉というのは我々ヒトにとってコミュニケーションの根幹にかかわるものだけに,小うるさいことをネチネチ言い続けると人々の機嫌を大きく損なう恐れがあるのだが,私はせめて自分の担当授業の中ではプライム教を布教し続けていく覚悟である。

ビー・ダッシュなんて読んだら,加速してどっかに飛んで行っちゃいそうでしょ?

え,ファミコンゲームの B ボタンダッシュをご存じない・・・?

こりゃまた失礼いたしました~!(© 植木等)
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