担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

内積や外積の割り算について。(内積編)

2011-05-25 01:04:30 | mathematics
内積にしろ,外積にしろ,どちらも零ベクトルではないのに,積の結果が 0 や零ベクトルになってしまう『零因子』があるため,普通の数の割り算のような意味での除法というのは定義できないと思われるが,除法もどきはいろいろ考えられるかもしれない。

数の除法(割り算)は,乗法(掛け算)の逆の計算であるが,そもそもそれはどういう意味なのかをちゃんと反省しておく必要があるだろう。


ここでは,0 でない数 a の逆数とは方程式 ax=1 の解 x のことであり,
「a の逆数をかける」=「a を掛けることの逆の操作」=「a で割る」
ということだと了解することにしよう。


この,数の世界における逆数の概念をベクトルの世界にも導入しようとすると,方程式 ax=1 の右辺の 1 に相当するものは何か,という難しい問題が生じる。


まず内積について考えてみよう。

内積の場合は,方程式の右辺を,ふつうの数の 1 にしてしまうというのが一つの考え方かもしれない。

零ベクトルではないベクトル a に対し,方程式
a•x=1
を満たす x を a の「内逆(うちぎゃく)」とでも呼ぶことにしよう。

もちろん,このような x は,もしあったとしても1つだけではない。
たとえば,ベクトル b が a•b=1 を満たすとき,a と垂直なベクトル c について,
a•(b+c)=a•b+a•c=1+0=1
となるので,b+c も方程式 a•x=1 の解になってしまう。

そういうわけで,できれば x にもう少し条件を課して一つだけのベクトルに絞りたいのであるが,そのような方法として思いついたことが2つあるので紹介しておく。

1つめは「条件」とは違うが,よくよく考えると,a•x=1 の自明といっても良い解がすぐに見つかり,それは x=a/|a|2 なので,これを内逆と定義するというやり方である。

2つめは,a•x=1 の解 x のうち,|x| が最小のものだけを内逆と呼ぶことにする,というやり方である。
ただ,このアイデアについては全く吟味していないので,|x| が最小となるような x が複数あるという不具合があるかもしれないし,このような x は実は a/|a|2 に限るということが示せてしまい,結局,上に1つめのアイデアとしてあげたものと同じことになるというオチかもしれない。

ところで,ここまで書いておいてなんだが,
「a で割る」=「a の内逆を掛ける」
という意味に解したとき,a の内逆を掛けるというのは,内積なのか,だとしたら何に掛けるのか,というような疑問が噴出する。
a で割るという操作が必要とされるのは,0 でない実数 b に対して,方程式 a•x=b を解くというシチュエーションかもしれない。
この両辺を『割って』x=○○○ のように答えが出てくる,という計算を期待しているわけである。

例えば a の内逆を a/|a|2 と定義する流儀であれば,この方程式を
(a/b)•x=1 と変形した場合,x は a/b の内逆だから,
解は x=(a/b)/|a/b|2=ba/|a|2 となる。

この答えは,方程式を a•(x/b)=1 と変形したと思って導かれる x/b=a/|a|2 という計算過程によってもたどり着く。

とうわけで,内逆を何にどう掛けるかというと,内逆のベクトルを方程式の右辺のスカラーにベクトルとして掛ける(ベクトルのスカラー倍の計算という意味に解釈する)ということに落ち着いたわけである。


このような除法にどれほどの実用的な価値があるかどうかは不明だが,僕に思いつくのはこの程度の内容だけである。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <読書感想文1106>「あっ、... | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

mathematics」カテゴリの最新記事