担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

<読書感想文1006>ブックガイド<数学>を読む

2010-12-09 23:45:35 | 
岩波書店編集部編,ブックガイド<数学>を読む,岩波科学ライブラリー113,2005.


ある雑誌の編集後記で,僕が高校生の頃に参加したことがある日本数学コンクールのこれまでの歩みをまとめた「寄り道の多い数学」という本が紹介されていたので,興味を覚えて図書館で探した。
そのとき,同書と同じシリーズの岩波科学ライブラリーを集めた棚に並んだラインナップを見て,これは金の鉱脈を探し当てたぞ!と心躍った。
以前,同ライブラリーの「クマムシ?!」という本を書店で見かけて衝動買いしたことはあるが,こんなに僕好みのタイトルがあるとは知らなかった。
そこで今回は衝動買いならぬ衝動借りをしたのだが,そのうちの一冊が本書である。

このライブラリーは,とにかくページ数が100ページちょっとと,分量が少なめで,しかも1ページあたり670字ほどで,とても読みやすい。
というわけで,今年も残すところあとわずかなのだが,今年の目標の22冊に少しでも近づけるため,このライブラリーで冊数を伸ばそうと企んでいるところである。
まあ,持久力がないのでラストスパートをしかけてすぐにへたばってしまうだろうが。

手始めとして,本書を読み終えた。
数学に携わる10人の人々が5冊前後の書籍を紹介しているのだが,紹介の仕方は人様々である。ただし,おおむね,執筆者が自分のそれまでの人生を振り返って,その中で出会った本を中心に紹介している。

本書を読んでみて一番ショックだったのは改めて自分のダメさ加減を思い知らされたことである。
どういうことかというと,この本で紹介されている本のほとんどは,僕が実際に購入していたり,図書館で一度は借りたことがあるものだったのだが,いずれもろくに読んでいないものばかりだったのである。
「ああ,その本ね。最初だけちょこっと読んだことがあるけど・・・。」
「ああ,それ,持ってる,けど全然中身見てないや・・・。」
「ああ,その本はタイトル聞いたことがあって読みたかったけどまだ読んでないや・・・。」
という感想の連発で,読んでいる最中はちょっとばかり自己嫌悪に陥ったが,今はむしろ今回の機会を生かして,せめて一冊でも「未読ゾーン」から「既読ゾーン」に移そうと奮い立っている。

紹介者が,最先端で研究しているバリバリの数学者や,数学作家,数学史家が薦めているからといっても全部が全部数学の本というわけではない。本書の趣旨からいって冊数は少ないが,それでも人文系の書籍も何冊か紹介されており,それらは僕は全く知らないものなので,ぜひ一度図書館で探して手にとってみたいと思っている。

この本は内容からいって数学を志す高校生や大学生向けであり,僕はどちらかといえば執筆者の方々に近い立場にあるため,懐かしい本たちにたくさん再会する場であったが,何冊か新しい本との出会いもあったし,本の紹介文も楽しく読め,たくさん活力を得られた。

なお,黒川重信氏がアルキメデスの『方法』の一節をヒースの『ギリシア数学史』から引用しているが,それは奇しくも原啓介氏が紹介されていたので最近読んだことを思い出した野崎昭弘『数学的センス』の第11話で引用されているのと同じ箇所で,『数学的センス』でその引用を読んだときに味わった感激が蘇った。

『数学的センス』の感想文も早く書かなくちゃ。今年読んだ数少ない本のひとつなのだから。
コメント
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