狭いといえば狭い。

ひょんなところで高校の同級生にあった。
向こうはこちらに気づいていなかったようだが，懐かしさのあまり僕の方から声をかけてしまった。
こちらの名前は思い出せなかったようだが，同じ部活動だったこともあり，一応は覚えてくれていたようだ。

高校卒業以来，十数年ぶりの再会である。

彼の第一声は

「太った？」

だった。

予期せぬ鋭いジャブに，僕はとっさに応戦できなかった。
僕は彼を見たときに高校の頃とほとんど変わっていないという印象を抱いていたのだが，癪だったので「まあ，お互いにね」と，事実にそぐわない返答をしてしまった。

彼の第ニ声は

「なんでこんなところにいるの？」

だった。

これは僕も彼に対して思っていたことだし，僕自身についてもそう思っていたので，今度はたじろがずに「それはお互い様でしょう。」と答えた。

彼は忙しい身なので再び相まみえることはないかもしれない。

まあ，とにかく驚いた。
お互い気づかずにかなり近いところにいたのだが，ちょっとボタンを掛け違えていたら会うことはなかっただろう。

それにしても，世間は狭いとはよく言ったものである。