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「銀河パトロール隊」 E.E.スミス

2018-05-29 21:44:18 | 読書
 
レンズマンシリーズの記念すべき第1作がこの銀河パトロール隊だ。E.E.スミスの有名なスペースオペラ。日本ではレンズマンというアニメーション映画が作られた。ただこの映画は登場人物はそのままだが原作と内容が異なっている。意外と知られていないが、CGを用いたアニメのはしりでもある。邦画アニメで初めてCGが使われたのはドラえもんだった記憶があるが、その次に来るのではないだろうか?冒頭でボスコーンから追われてブリタニア号。これがCGで1秒間に24コマというアニメと異なり、30コマ以上ということで滑らかな動きを表現できるとあった。実際はそれをフィルムに焼いて映画館で流すからその恩恵を得ることはできないと思うのだが。とにかくそんなことより、CGで描かれたブリタニア号のいかにもCGという表面の描写に興奮した。このほか主人公キムの手にレンズが移植される場面などでもCGが使われていたと記憶する。また技術的にはオプチカル合成という手法も取り入れられた映画だった。ハイテク技術を使った場面は感動したが、同じものがアニメでの表現に変わるとその貧相さにがっかりしたものだ。そんな技術面ばかりに興味があって内容は覚えていない。この映画を逆にノベライズ化したものが講談社X文庫というこれまた出来立てのレーベルの第一弾で吉川 惣司の文で出版された。映画のシーンが口絵に挿入されていた。もちろんこれは買って読んだ。そのうちに、オリジナルを読もうと、創元SF文庫から出ていた「銀河パトロール隊」を買ってみた。恐らく中学生の時あたりだろう。ところがまったく面白味を感じずほとんど読まず積読状態。時が流れどういうわけかまた読みたくなり、改めて買おうと思ったらこれが絶版となっている。調べてみると、一度絶版になっていた上に、新訳版として再販していたが、それさえ絶版となっているのが現状のようだ。そこで電子書籍で購入。訳は当初、小西宏だったが、新版では小隅黎である。小西版の記憶は全くないが、小隅版はいくらか読みやすくなっているのではないかと思う。
主人公キムボール・キニスンが主席の優等生でそれが卒業するところから始まる。その卒業証書的に、手にレンズを装着されるのだ。つまりいきなりレンズマンとして登場する。レンズの秘密はまだよくわかっていない。アリシア人によって作られ、機能も分かっているが、詳細はアリシア人が無口のためはっきりわからない。
レンズマン同士はレンズを通して、異性人とも会話ができる。それは言葉ではなく、言葉を越えた思念として伝わる。
記憶に残っていたヴァスカークとともにボスコーン軍団に挑む。しかし苦肉の策で、自機を爆破して救命艇で逃走する。逃げた惑星で未知の生物に襲われピンチになったところ、これまた記憶にある龍の姿のようなウォーゼルに助けてもらう。すごく強くて頼れる戦士だと思っていたウォーゼルだが、敵によって近々殺されてしまうだろうと、ちょっと諦めモードの鬱っぽいキャラだった。過去に敵に挑んできたヴェランシア人たちだが1人として生きて帰ったものはいない。何やらその敵は、体だけでなく精神もコントロールすることができるらしい。そのため仲間で挑んでも互いに殺し合うように精神をコントロールされてしまうからであった。そこで弱気になっていたウォーゼルだが、キムが励ましつつ対抗しようと手伝う。キムの方が上位にいる。
「トレンコ」宇宙船が故障しトレンコと言う惑星に降りる。いや降りようとするが、猛烈な風のため着陸できない。レンズマン仲間の誘導により想像絶する方法で着陸することができた。この星は形を持たない。また生物も胞子から誕生するやあっという間に成長する。そしてその端から他の生物を食べる。食べながら自分も食べられているという奇妙な光景。すごい星だ。
14章。キムは遂に昇進する。組織からの束縛から解放され独立したレンズマンになるのだ。自分がそれに値するのか?戸惑いつつ、ふさわしいのだと上官から励まされる。その帰還する道中の晴れがましさ。それはまさにグレーレンズマンだ。
無敵の強さを持つキムだが、アルデバラン系惑星での任務の際、作戦に失敗し瀕死の重症を負う。入院した病院で(ここでついに)クラリッサ・マクドゥガルという看護婦と出会う。ベッドに拘束されてイライラするキムは悪態ばかりつくが、退院後すぐにアリシアへ再度修行に行きたいと希望する。アリシアでは導師から改めてさらにレベルの高い修行を受ける。この風景は精神を鍛えるというようなイメージだ。スターウォーズ的であり、東洋の精神修行のようでもある。
つまりアリシアの導師は思考をコントロールする達人である。その姿は脳だけという姿だ。新たな能力を身に付けたキムは敵の意識を、それを感じさせず侵入して意のままにコントロールすることができるようになった。SFではあるが、どちらかというとテレパシー合戦のような様相を帯びてくる。そうしてヘルマスの居所を見つけ出したキムであるが、ヘルマスもしたたかで。しっかりキムの動きを察知し、意識を操られないよう強力なバリアを張って防御を固める。単独では侵入攻撃が不可能と考えたキムは一旦地球に引き返す。そして多くの軍勢を率いて、そして自分はトロイの木馬作戦でまた単独ボスコーンに乗り込んでいくのだ。
全員バリアで防御されていたボスコーンだが、犬だけ無防備だった。その犬の思考を乗っ取り、それをきっかけにボスコーン兵達の思考を乗っ取っていく。さらに強力な麻薬シオナイトを基地内に撒き、敵の大部分を麻痺させる。ヘルマスもバリアを張り思考を乗っ取られるのを防いでいた。そしてキムに機関銃で応戦する。キムは強固な宇宙服を用意しており、無傷だ。ただ思考防御したヘルマスは強敵で攻撃ができない。そしてヘルマスのもう一つの秘密兵器、高エネルギー放射装置。これは思考によってコントロールする。それを操作しようとしたヘルマスの思考に隙ができた。そこで気付く、装置を作動すると思考に隙ができ乗っ取られる危険がある、つまりそれを避けるためには装置を作動することができないという相剋が起きる。ならば作戦は一つヘルマスに絡みつくことだ。そしてヘルマス共々機関銃掃射の嵐に飛び込んだ。キムは強固な装甲に守られたが、ヘルマスは貧弱な装甲しか身につけていない。ヘルマスは弾丸によって最期を迎えた。
決着はレンズのテレパシー的攻撃によるものではなく、機関銃の玉という原始的な物理的攻撃によって着いたのだった。
前半は各話完結的な話で、様々な惑星へまさにパトロールし問題を解決するという話が続く。中盤、それでも未熟ゆえに瀕死の攻撃を受ける。そこでクラリッサ・マクドゥガルと知り合う。その後、クリスが海賊につかまりそれを救うという絡みがあるが、ほとんど出番がない。瀕死の重傷を負って治療後退院してから、修行し直し、さらに強力なレンズマンとなり、ヘルマス率いるボスコーン軍団と対決する。大軍勢対大軍勢の戦いではあるが、核はキムとヘルマスの一騎打ちだ。
スターウォーズの元ネタだとか、そんなマニアックな解説はできないが、近未来の兵器を駆使して対決するSFではなく、相手の意識を乗っ取ったり、操作したりし対決するという点では珍しいSFだと思う。しかも書かれた年代からすると全く稀有な存在と言える。
 
20171229読み始め
20180529読了

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