医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

元市原市職員 公金横領事件 初公判

2014-03-24 22:30:57 | 傍聴記
 元市原市職員 布施正太郎被告の公金横領事件が、午後3時半から5時まで、7階の714号法廷で、第1回の公判(即日結審)が開かれました。
 714号法廷というのは、傍聴席が20人くらいの手狭な法廷です。公金横領事件にもかかわらず裁判官が複数で審議する合議体ではなく単独審議です。岡田龍太郎という裁判官も判事補から判事になったばかりの若手です。
 対審席はというと、男の検事が一人と弁護側には弁護士一人と司法修習生が二人いるのですが、一人は対審席に座れず傍聴席からメモを取っていて、対審席に座っている修習生もまだ見習いで、黙って座っているだけの様子です。ここまでの雰囲気的で、自分としては、もうすでに肩すかしを食ったような気分でした。
 布施被告本人というと、弁護側前のベンチでスーツを着て特に緊張している様子もなく普通に座っていました。
 傍聴席はというと、わたし以外には、どうやら布施被告の関係者である市役所職員や証人として出廷した被告の妻と被告の勤務先となる建設会社の社長などが座っていたようでした。

 裁判官が入廷すると、布施被告が証言台の前に立ち、氏名、生年月日などを述べ、検察官が起訴状の朗読を始めました。
 その起訴状によりますと、被告は平成20年4月1日から市原市役所の保健福祉部生活福祉課主任として生活保護法における被保護者に対する生活扶助支給等を行う業務に従事していたものであるが、被保護者が死亡していたにもかかわらず、被保護者に対する生活扶助が廃止されていない事を利用して、生活保護費を横領しようと考え平成20年夏頃から生活福祉課を転出する平成23年3月31日までのあいだに亡くなった受給者4人に対してa24回、b15回、c4回、d13回にわたり、生活福祉課において封筒に入れられた現金a322万円、b212万円、c47万円、d31万円、その他18名に対する計761万円を着服横領したものである。
 罪名および罰条 業務上横領 刑法253条

 検察官の起訴状朗読が終わると、布施被告が再び証言台の前に立ち、岡田裁判官が黙秘権の説明をしたのち、罪状認否において、布施被告は すべて間違いありませんと罪を認めました。弁護人の意見も同意見でした。

 その後、証拠調べに入り検察官から被告の身上経歴が述べられ、それによりますと被告は市原市内の高校を卒業後、平成3年に市原市職員に地方公務員として採用され、平成20年4月1日から平成23年3月31日まで生活福祉課で業務を行い、同年9月から休職し平成24年1月に復職して他の部署で業務にあたっていたところ平成25年7月に本横領事件の発覚により市原市役所から懲戒処分を受けて現在にいたっている。前科前歴はなし。

 犯行に至る経緯としましては、被告は生活福祉課の第一班のケースワーカーとして、主に高齢介護施設に入居する銀行口座をもたない単身の生活保護の被保護者に施設にて、現金で生活保護費を手渡す業務を請け負っていた。市原市において生活保護世帯は約3000件あり、その生活保護の支給開始、変更、廃止手続きは、MCIという電算システムで一括管理され担当者がシステムに入力することにより実行されていた。
 被保護者が死亡した場合の廃止手続きは、保護決定調書を作成し、責任者の決裁を得て保護廃止通知書を発送することにより保護廃止手続きを行っていましたが、本横領事件当時は担当ケースワーカー以外の者が住民基本台帳等により被保護者の死亡を確認する体制になっていなかったために、平成20年7月頃に廃止手続きが遅れ生活保護費が誤って支給され出納課に返納する事なく、その後、被告人は生活保護費を保管し、生活費などに費消した。
 これをきっかけに、その後も死亡した身寄りのない受給者(a,b,c,d)には廃止手続きをとらなくても担当した自分以外は生活保護費の横領が発覚する可能性が低いと考え、廃止手続きがせず生活保護費を横領して、自らの買い物や食費などの生活費およびパチンコ代などの遊興費に費消しました。
 そして横領を誤魔化すために、生活保護費支給内訳書には、保管していた4人の印鑑を押印するなど事件が発覚しないようにしていたようです。(虚偽公文書作成罪?) 
 その後、市原市では、全国的にすでに亡くなっている受給者に対して生活保護費を支給し続けるなどの生活保護の不祥事が発生したため、平成25年1月頃に生活保護廃止世帯のケースファイルの点検を実施したところ、被告人による横領事件が判明し調査を行い同年8月に被告人を刑事告訴にするに至りました。
 以上を立証するために甲1号証から29号証と乙1号証から29号証が検察官から提出されました。 
 甲一号証は市長の告訴状、二号証は総務部長の供述調書(横領金については返納を受けているが、市民の血税を公僕である市役所職員が横領することは絶対にあってはならないし許されないので捜査のうえ厳重な処分をお願いします等)
 乙3号証は被告人の犯行経緯の供述書(生活保護費着服の犯行の動機については、まぁいいかと軽い気持ちでやったのが原因です。着服することは悪い事だとは分かっていたのですが、お金が出来る事は甘い誘惑でした。結局ばれて問い詰められるまでにお金は自分のために使い果たしてしまいました。ばれる事は分かっていたのですが、ばれてもすぐに返せばいいやと、まぁいいやと軽い気持ちでやってしまいました。着服をつづけていたのは、ローンがあり自由に使えるお金が必要だったことと、性格的に恰好つける見栄をはることがあった為です。しかし、着服金は、良い洋服や派手な生活などには使わず、後輩に昼食を奢ったり生活費に使ったのが殆どです。)

 弁護側の立証として、被害弁償の領収書等の弁1から2号証が提出され、被告人の勤務先となる建設会社の社長が、被告人を指導監督していく情状証人として証言しました。
 その後は、被告人の妻が、同様に情状証人として証言しました。
 それによりますと、被告人の妻は、事件が発覚するまでは、被告人に家計および貯金、住宅ローン、カードローンの管理は任せていたので横領の事実は分からなかったようです。しかし、これからは自分が管理して被告人ともコミュニケーションを取り、間違いのないようにやっていきたいと述べました。ローンのあった自宅は売り払い、利子を含めた横領金913万円は親族の助けもあり返金していますとのことです。
 そして、被告人本人の犯行に至る証言として、平成20年の夏頃に出来心で行った最初の着服事件がばれるのが怖かったので、生活保護廃止手続きのパソコン入力が遅れても、その仕事を先延ばしにして着服を続けてしまった。着服横領に計画性はありませんでした。着服する前は雑誌を週に一冊、パチンコは週に一回1万から2万円程度でした。横領してからもお金は、生活費と遊興費として雑誌を週に3冊、外食やたばこ、パチンコが週に3回3万までと、特に大きい買い物などには使わなかったので、妻や職場の人たちには平成25年7月の市の調査まで全くばれませんでした。
パチンコなどで負けているので着服したお金は残っていません。

 裁判官からの質問で、パソコンでの生活保護廃止手続きが遅れたのは、特にミスとはいえないのではないか?お金も出納係に返納すれば何の問題もなかったはず。
 被告人 はいそうです。しかし期間までに入力しなくてはならない。(??)

検察官からの論告求刑

 本件は、公務員の市民の信頼を裏切る悪質な事案であり、生活保護の公務に対する市民の信頼を著しく裏切る犯行である。被告人は地位を利用して常習的に横領を繰り返し犯行態様は悪質である。被害結果も重大である。動機に酌量の余地はない。
 被告人を懲役3年に処するのが相当と考えます。

判決は4月14日に言い渡し。

市民の感情としましては、実刑の厳しい罰にしてほしいものです。
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