モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

岸野忠孝さんの水墨画

2011年06月18日 | 岸野忠孝の水墨画
岸野忠孝水墨画展のお知らせ
会期●6月27日(月)―7月3日(日)
会場●加島美術 東京都中央区京橋2-9-9 03-5250-8002


                                            個人蔵

前回記事の「かたち」No.08の表紙の写真の背景にある絵は
岸野忠孝という人が描いた水墨画ですが、
パッと見た感じでは「曼荼羅」のようなイメージがありますね。
しかしタイトルを見ると「塔」となっていたので、
五重塔を真上から描いたものだと解釈できます。


岸野さんは現場主義というのを貫いていて、
見慣れたモチーフでも必ずそれを眼前にして描くとのことです。
いま簡単に「真上から描いたもの」と言いましたが、
五重塔を真上から見下ろせるような足場はふつうありえません。
これは想像で描いたものと思われます。
そうだとすると岸野さんの作としては異例のものということになります。
異例ではありますが、「現場主義」との違和感はほとんど感じられません。
五重塔を真上から見ると、こんなふうに見えるということがすんなりと了解されます。


歴史に名を残した水墨画家――たとえば江戸時代の池大雅や長澤芦雪にしても、
ある意味での現場主義者で、貪欲なまでにものをよく見ています。
そして見ることが昂じてファンタジックな世界を描くに至ることがあるのですね。
岸野さんの「塔」もそういう例で、「見る」ことが熟していって、
リアルの中からファンタジックなイメージが生成されてきたように思われます。
言い換えると、「見る」ことの果てに描き出された幻想の世界です。



「梅」(個展出品予定)


岸野さんの絵は、「線」あるいは「用筆」ということが主体になっています。
それは、西洋画の描き方とは異なっているということで、
いま、そういう描き方をする絵描きさんはいなくなりました。
遠近法や陰影法に依ることなく、線で空間の奥行きを作り出す方法が
岸野さんの作画法のベースになっています。



「松」(個展に出品予定)



画業はすでに50年を超えています。
現在は視力がだいぶん衰えているとのことですが、
岸野さんの写実はいまや「心眼で見る」域に達しています。
あるいは身体全体で見ようとする気力にあふれています。


東京の都心まで、どうか是非見に来ていただきたいと思います。


岸野さんの作品はこちらでも見れます。
加島美術へのアクセス



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