月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

本棚を整理してみた件

2014-08-06 | 
もう1年半くらい前から、一度は本の整理をしなければならないと思っていた。

実家にいた時、母に買ってもらったウォールナットの本棚。
見た目以上にたくさんの本が収納できるスグレモノだ。
それでも、本はあふれてあふれて、クローゼット、本棚の上、さらには床にまで積み上げられていた。

気になりつつもなかなか整理ができなかったのは、私が「整理下手」だからである。
そう言うと、「意外~!」と言われることが多いが、私が好きなのはあくまでも「掃除」=「汚いものをきれいにする」であって、整理整頓ではない。
空間把握能力が人一倍弱いので、整理整頓に異常なほど時間がかかってしまう。
さらに、重いものが苦手。
なので、本の整理をするとなると1日仕事では済まないことがわかっていたので、ずっと先延ばしにしていたのだ。

しかし、もう限界。
断捨離を決意。
休みの日に、とにかく本を全部床に出して、「残すもの」「古本屋に送るもの」に分けていった。

途中、収拾がつかなくなって、こんなことに・・・


さらには「大掃除あるある」の「アルバムを見てしまう」に匹敵する、「好きな本のあのページめくり」に入ってしまい、もうどうにもならなくなってしまった。

大学時代に使っていた教材が出て来る。


右は近松門左衛門の原文、左は万葉仮名で書かれた「万葉集」。
こんなものをよく読んでいたものだと感心する。
近松門左衛門は、横に読み方を書いているのがいじらしい。

私は古典文学の花である平安文学をやりたくて「文学部国語国文学科国語国文学専攻」という早口言葉みたいなところで学んでいたのに、なんとうちの大学はなぜか平安時代の専門の先生だけがいなかったのだ!
本当にひどい話である。
今でも古今和歌集とか、伊勢物語とか、更級日記とか・・・そういうのを研究したかったなと思うことがある。
正直、近松門左衛門も万葉集もほとんど興味がない。

そんなことを思い返したり・・・。

また、日本酒関連の本がこの1年でこんなにたまったことも感慨深かった。


雑誌関係をあわせたら、もっとある。
一番左端なんて、もう「酒米ハンドブック」やからね!
一体どういう人がこのハンドブックを活用するのかと思うけど、まあ、買ってしまった。
頑張ってるよな、私・・・。と、また整理の手が止まる。(こんな撮影してるし)

さらに、「そうだ!この機会に、自分の人生に影響を与えた10冊を選んでみよう!」とよけいなことを思いついてしまった。
もはや目的が何なのか忘れかけ・・・。

そして、選んだのがこちらだ。


※太宰の「パンドラのはこ」は、中に収録されている「正義と微笑」
※鷺沢さんの「葉桜の日」は、中に収録されている「果実の舟を川に流して」

あとで書こうと思っていることとも関わってくるのだけど、このラインナップを見たら、「あー、結局、私は20代後半以降、人生に影響を与えてくれるような本に出会っていないんだ」と思った。
全部10代~20代前半に読んだ本ばかり。
これはどういうことなんだろう。その後に出会っていないのか、私の感性が鈍ったのか。
おそらく後者なんだろうなと思う。
この10冊(ベスト20にしたら20冊)を超えるようなものは、これから先も出会うことはないのだろうなと思う。
やはり10代~20代前半の感性といったら、もうびんびんで、これから涸れていくだけの人間と比べ物にもならない。
本がないのではなく、私が感じ取れないのだ。

もちろん今でも「感動」はする。
「いい本に出逢った!」と思うことも多々ある。
ただ、「人生に影響したか?」と聞かれると、そこまではいかないのだ。
感性が鈍ったというよりは、もう人生が後半だからなのだろうか。

この2、3年で読んだ本で、「おおー!!」となったのは、三浦しをんの「舟を編む」。
中島京子の「小さいおうち」。
高田郁のみをつくしシリーズ。
もしかしたら、それくらいかもしれないな。

まあ、この1ヶ月くらいは昔のようにたくさん本を読んでいるけれど、この2、3年は酒に溺れていて読書量がぐーっと減っていたので、いい本に出会うチャンスが少なかったということもある。
これからまた自分の人生に影響を与えてくれるような本に出逢えたらいいのだけれど・・・。

それから、今回、本の「残す」「処分」の分別をやっていて思ったことがある。
一体何を基準にするのか、ということ。
まず、自分の中で決めたのは、「これ、どんな話だっけ?」と記憶にないようなものは処分するということ。
記憶に残らないような本は、残しておいても仕方がない。
ただ、例外として、たまらなく好きな作家、自分の人生に影響を与えてくれた作家のものは、とにかく残すということ。
それと、お金がない大学時代に古本屋で買い漁った文学は、もう二度と読み返さなくても捨てない。

私は基本的に本を処分できないのだけれど、そうやって見ていったら、意外に処分にまわっていく本があった。
でも、それは面白いくらい、この5年以内に読んだ本ばかりだった。
先述したことと関わってくるが、結局、最近読んだ本は影響を与えるどころか、記憶にすら残らないものが多いのである。
なるほどなぁ・・・と、そんなことにも感心しながら作業を進めていった。

今回特に思ったのは、私はやっぱり鷺沢萠さんが好きなんだなぁということ。
彼女の本はほとんど全部持っているのではないだろうか。それも単行本で。
先に挙げた「果実の舟を川に流して」。
この作品を「いい」「好き」と言っている人にまだ出会ったことはないけれど、私は本当にこれを読んだときに打ちのめされた。
まだ作家になろうと思っていた若い時だ。
感動するとか、そういうレベルの話ではなくて、ただただ打ちのめされた。
宮本輝の「夢見通りの人々」にも共通するところがあるが、「あー、こういうものを私は書きたかったんだ・・・」と思ったのだ。
思ったのだけど、書けないことを知っていたから打ちのめされた。
その延長線上に佐藤多佳子の「しゃべれどもしゃべれども」もあるのかもしれない。

鷺沢さんの作品を40歳過ぎた私が読んだら、どう感じるんだろう。
久しく読んだことがない。
彼女がもし生きていたら・・・まだ新しい作品が世に出されていたら・・・そんなことも考える。
だけど、もう彼女はいないので、20代の頃に夢中になっていたあの作品を振り返るしかない。

このお盆休みにでも何冊か再読してみよう。
どう感じるのか、楽しみであり、不安でもある。

ちなみに、本棚は2日がかりで片付いた。


そんなに入っているとは信じられないかもしれないが、この本棚は文庫だと奥に3列並ぶのだ。
だから、棚1段で100冊くらい入っている。
それでも今回は思い切って、だいぶん処分した。200~300冊くらいかな。
今はすっきり片付いて見ているだけで気持ちがよい。

次は仕事の資料とクローゼットといろんなガラクタを片付ける。
いろいろスッキリさせたいのだ。
機能的に暮らすために。
このお盆休みが勝負だな・・・。