カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ナツ の ハナ

2017-08-23 | ハラ タミキ
 ナツ の ハナ

 ハラ タミキ

   わが あいする モノ よ こう いそぎ はしれ
   かぐわしき ヤマヤマ の ウエ に ありて ノロ の
   ごとく コジカ の ごとく あれ

 ワタシ は マチ に でて ハナ を かう と、 ツマ の ハカ を おとずれよう と おもった。 ポケット には ブツダン から とりだした センコウ が ヒトタバ あった。 8 ガツ 15 ニチ は ツマ に とって ニイボン に あたる の だ が、 それまで この フルサト の マチ が ブジ か どう か は うたがわしかった。 ちょうど、 キュウデンビ では あった が、 アサ から ハナ を もって マチ を あるいて いる オトコ は、 ワタシ の ホカ に みあたらなかった。 その ハナ は なんと いう メイショウ なの か しらない が、 キイロ の コベン の カレン な ヤシュ を おび、 いかにも ナツ の ハナ-らしかった。
 エンテン に さらされて いる ハカイシ に ミズ を うち、 その ハナ を フタツ に わけて サユウ の ハナタテ に さす と、 ハカ の オモテ が なんとなく すがすがしく なった よう で、 ワタシ は しばらく ハナ と イシ に みいった。 この ハカ の シタ には ツマ ばかり か、 フボ の ホネ も おさまって いる の だった。 もって きた センコウ に マッチ を つけ、 モクレイ を すます と ワタシ は カタワラ の イド で ミズ を のんだ。 それから、 ニギツ コウエン の ほう を まわって イエ に もどった の で ある が、 その ヒ も、 その ヨクジツ も、 ワタシ の ポケット は センコウ の ニオイ が しみこんで いた。 ゲンシ バクダン に おそわれた の は、 その ヨクヨクジツ の こと で あった。

 ワタシ は カワヤ に いた ため イチメイ を ひろった。 8 ガツ ムイカ の アサ、 ワタシ は 8 ジ-ゴロ トコ を はなれた。 マエ の バン 2 カイ も クウシュウ ケイホウ が で、 ナニゴト も なかった ので、 ヨアケマエ には フク を ゼンブ ぬいで、 ヒサシブリ に ネマキ に きがえて ねむった。 それで、 おきだした とき も パンツ ヒトツ で あった。 イモウト は この スガタ を みる と、 アサネ した こと を ぶつぶつ なんじて いた が、 ワタシ は だまって ベンジョ へ はいった。
 それから ナンビョウ-ゴ の こと か はっきり しない が、 とつぜん、 ワタシ の ズジョウ に イチゲキ が くわえられ、 メノマエ に クラヤミ が すべりおちた。 ワタシ は おもわず うわあ と わめき、 アタマ に テ を やって たちあがった。 アラシ の よう な もの の ツイラク する オト の ホカ は マックラ で なにも わからない。 テサグリ で トビラ を あける と、 エンガワ が あった。 その とき まで、 ワタシ は うわあ と いう ジブン の コエ を、 ざあー と いう モノオト の ナカ に はっきり ミミ に きき、 メ が みえない ので もだえて いた。 しかし、 エンガワ に でる と、 まもなく ウスラアカリ の ナカ に ハカイ された カオク が うかびだし、 キモチ も はっきり して きた。
 それ は ひどく いや な ユメ の ナカ の デキゴト に にて いた。 サイショ、 ワタシ の アタマ に イチゲキ が くわえられ メ が みえなく なった とき、 ワタシ は ジブン が たおれて は いない こと を しった。 それから、 ひどく メンドウ な こと に なった と おもい はらだたしかった。 そして、 うわあ と さけんで いる ジブン の コエ が なんだか ベツジン の コエ の よう に ミミ に きこえた。 しかし、 アタリ の ヨウス が おぼろ ながら メ に みえだして くる と、 コンド は サンゲキ の ブタイ の ナカ に たって いる よう な キモチ で あった。 たしか、 こういう コウケイ は エイガ など で みた こと が ある。 もうもう と けむる サジン の ムコウ に あおい クウカン が みえ、 つづいて その クウカン の カズ が ふえた。 カベ の ダツラク した ところ や、 おもいがけない ホウコウ から アカリ が さして くる。 タタミ の とびちった ザイタ の ウエ を そろそろ あるいて ゆく と、 ムコウ から すさまじい イキオイ で イモウト が かけつけて きた。
「やられなかった、 やられなかった の、 だいじょうぶ」 と イモウト は さけび、 「メ から チ が でて いる、 はやく あらいなさい」 と ダイドコロ の ナガシ に スイドウ が でて いる こと を おしえて くれた。
 ワタシ は ジブン が ゼンラタイ で いる こと を きづいた ので、 「とにかく きる もの は ない か」 と イモウト を かえりみる と、 イモウト は こわれのこった オシイレ から うまく パンツ を とりだして くれた。 そこ へ ダレ か キミョウ な ミブリ で チンニュウ して きた モノ が あった。 カオ を チダラケ に し、 シャツ 1 マイ の オトコ は コウジョウ の ヒト で あった が、 ワタシ の スガタ を みる と、 「アナタ は ブジ で よかった です な」 と いいすて、 「デンワ、 デンワ、 デンワ を かけなきゃ」 と つぶやきながら いそがしそう に どこ か へ たちさった。
 いたる ところ に スキマ が でき、 タテグ も タタミ も サンラン した イエ は、 ハシラ と シキイ ばかり が はっきり と あらわれ、 しばし キイ な チンモク を つづけて いた。 これ が この イエ の サイゴ の スガタ らしかった。 アト で しった ところ に よる と、 この チイキ では タイガイ の イエ が ぺしゃんこ に トウカイ した らしい のに、 この イエ は 2 カイ も おちず ユカ も しっかり して いた。 よほど しっかり した フシン だった の だろう。 40 ネン マエ、 シンケイシツ な チチ が たてさせた もの で あった。
 ワタシ は サクラン した タタミ や フスマ の ウエ を ふみこえて、 ミ に つける もの を さがした。 ウワギ は すぐに みつかった が ズボン を もとめて あちこち して いる と、 めちゃくちゃ に ちらかった シナモノ の イチ と スガタ が、 ふと いそがしい メ に とまる の で あった。 サクヤ まで ヨミカカリ の ホン が ページ を まくれて おちて いる。 ナゲシ から ツイラク した ガク が サッキ を おびて コドコ を ふさいで いる。 ふと、 どこ から とも なく、 スイトウ が みつかり、 つづいて ボウシ が でて きた。 ズボン は みあたらない ので、 コンド は アシ に はく もの を さがして いた。
 その とき、 ザシキ の エンガワ に ジムシツ の K が あらわれた。 K は ワタシ の スガタ を みとめる と、
「ああ、 やられた、 たすけてえ」 と ヒツウ な コエ で よびかけ、 そこ へ、 ぺったり すわりこんで しまった。 ヒタイ に すこし チ が ふきでて おり、 メ は なみだぐんで いた。
「どこ を やられた の です」 と たずねる と、 「ヒザ じゃ」 と そこ を おさえながら シワ の おおい ソウガン を ゆがめる。
 ワタシ は ソバ に あった ヌノキレ を カレ に あたえて おき、 クツシタ を 2 マイ かさねて アシ に はいた。
「あ、 ケムリ が でだした、 にげよう、 つれて にげて くれ」 と K は しきり に ワタシ を せかしだす。 この ワタシ より かなり トシウエ の、 しかし ヘイソ は はるか に ゲンキ な K も、 どういう もの か すこし テンドウ-ギミ で あった。
 エンガワ から みわたせば、 イチメン に くずれおちた カオク の カタマリ が あり、 やや かなた の テッキン コンクリート の タテモノ が のこって いる ホカ、 モクヒョウ に なる もの も ない。 ニワ の ドベイ の くつがえった ワキ に、 おおきな カエデ の ミキ が チュウト から ぽっくり おられて、 コズエ を テアライバチ の ウエ に なげだして いる。 ふと、 K は ボウクウゴウ の ところ へ かがみ、
「ここ で、 がんばろう か、 スイソウ も ある し」 と ヘン な こと を いう。
「いや、 カワ へ いきましょう」 と ワタシ が いう と、 K は フシン そう に、
「カワ? カワ は どちら へ いったら でられる の だった かしら」 と うそぶく。
 とにかく、 にげる に して も まだ ジュンビ が ととのわなかった。 ワタシ は オシイレ から ネマキ を とりだし カレ に てわたし、 さらに エンガワ の アンマク を ひきさいた。 ザブトン も ひろった。 エンガワ の タタミ を はねくりかえして みる と、 モチニゲ-ヨウ の ザツノウ が でて きた。 ワタシ は ほっと して その カバン を カタ に かけた。 トナリ の セイヤク-ガイシャ の ソウコ から あかい ちいさな ホノオ の スガタ が みえだした。 いよいよ にげだす ジキ で あった。 ワタシ は サイゴ に、 ぽっくり おれまがった カエデ の ソバ を ふみこえて でて いった。
 その おおきな カエデ は ムカシ から ニワ の スミ に あって、 ワタシ の ショウネン ジダイ、 ムソウ の タイショウ と なって いた ジュモク で ある。 それ が、 この ハル ヒサシブリ に キョウリ の イエ に かえって くらす よう に なって から は、 どうも、 もう ムカシ の よう な ウルオイ の ある スガタ が、 この ジュモク から さえ くみとれない の を、 つくづく ワタシ は キイ に おもって いた。 フシギ なの は、 この キョウリ ゼンタイ が、 やわらかい シゼン の チョウシ を うしなって、 ナニ か ザンコク な ムキブツ の シュウゴウ の よう に かんじられる こと で あった。 ワタシ は ニワ に めんした ザシキ に はいって ゆく たび に、 「アッシャ-ケ の ホウカイ」 と いう コトバ が ひとりでに うかんで いた。

 K と ワタシ とは ホウカイ した カオク の ウエ を のりこえ、 ショウガイブツ を よけながら、 ハジメ は そろそろ と すすんで ゆく。 その うち に、 アシモト が ヘイタン な ジメン に たっし、 ドウロ に でて いる こと が わかる。 すると コンド は イソギアシ で とっとと ミチ の ナカホド を あるく。 ぺしゃんこ に なった タテモノ の カゲ から ふと、 「オジサン」 と わめく コエ が する。 ふりかえる と、 カオ を チダラケ に した オンナ が なきながら こちら へ あるいて くる。 「たすけてえ」 と カノジョ は おびえきった ソウ で イッショウ ケンメイ ついて くる。 しばらく ゆく と、 ロジョウ に たちはだかって、 「ウチ が やける、 ウチ が やける」 と コドモ の よう に なきわめいて いる ロウジョ と であった。 ケムリ は くずれた カオク の あちこち から たちのぼって いた が、 キュウ に ホノオ の イキ が はげしく ふきまくって いる ところ へ くる。 はしって、 そこ を すぎる と、 ミチ は また ヘイタン と なり、 そして サカエバシ の タモト に ワタシタチ は きて いた。 ここ には ヒナンシャ が ぞくぞく イシュウ して いた。
「ゲンキ な ヒト は バケツ で ヒ を けせ」 と ダレ か が ハシ の ウエ に がんばって いる。 ワタシ は センテイ の ヤブ の ほう へ ミチ を とり、 そして、 ここ で K とは はぐれて しまった。
 その タケヤブ は なぎたおされ、 にげて ゆく ヒト の イキオイ で、 ミチ が しぜん と ひらかれて いた。 みあげる ジュモク も おおかた チュウクウ で そぎとられて おり、 カワ に そった、 この ユイショ ある メイエン も、 イマ は キズダラケ の スガタ で あった。 ふと、 カンボク の ソバ に だらり と ゆたか な シタイ を なげだして うずくまって いる チュウネン の フジン の カオ が あった。 タマシイ の ぬけはてた その カオ は、 みて いる うち に ナニ か カンセン しそう に なる の で あった。 こんな カオ に でくわした の は、 これ が はじめて で あった。 が、 それ より もっと キカイ な カオ に、 ソノゴ ワタシ は かぎりなく でくわさねば ならなかった。
 カワギシ に でる ヤブ の ところ で、 ワタシ は ガクト の ヒトカタマリ と であった。 コウジョウ から にげだした カノジョ たち は イチヨウ に かるい フショウ を して いた が、 イマ メノマエ に シュツゲン した デキゴト の シンセンサ に おののきながら、 かえって ゲンキ そう に しゃべりあって いた。 そこ へ チョウケイ の スガタ が あらわれた。 シャツ 1 マイ で、 カタテ に ビール ビン を もち、 まず イジョウ なさそう で あった。 ムコウギシ も みわたす かぎり タテモノ は くずれ、 デンチュウ の のこって いる ホカ、 もう ヒノテ が まわって いた。 ワタシ は せまい カワギシ の ミチ へ コシ を おろす と、 しかし、 もう だいじょうぶ だ と いう キモチ が した。 ながい アイダ おびやかされて いた もの が、 ついに きたる べき もの が、 きた の だった。 さばさば した キモチ で、 ワタシ は ジブン が いきながらえて いる こと を かえりみた。 かねて、 フタツ に ヒトツ は たすからない かも しれない と おもって いた の だ が、 イマ、 ふと オノレ が いきて いる こと と、 その イミ が、 はっと ワタシ を はじいた。
 この こと を かきのこさねば ならない、 と、 ワタシ は ココロ に つぶやいた。 けれども、 その とき は まだ、 ワタシ は この クウシュウ の シンソウ を ほとんど しって は いなかった の で ある。

 タイガン の カジ が イキオイ を まして きた。 コチラガワ まで ホテリ が ハンシャ して くる ので、 マンチョウ の カワミズ に ザブトン を ひたして は アタマ に かむる。 そのうち、 ダレ か が 「クウシュウ」 と さけぶ。 「しろい もの を きた モノ は コカゲ へ かくれよ」 と いう コエ に、 ミナ は ぞろぞろ ヤブ の オク へ はって ゆく。 ヒ は さんさん と ふりそそぎ ヤブ の ムコウ も、 どうやら ヒ が もえて いる ヨウス だ。 しばらく イキ を ころして いた が、 ナニゴト も なさそう なので、 また カワ の ほう へ でて くる と、 ムコウギシ の カジ は さらに おとろえて いない。 ネップウ が ズジョウ を はしり、 コクエン が カワ の ナカホド まで あおられて くる。 その とき、 キュウ に ズジョウ の ソラ が アンコク と かした か と おもう と、 はいぜん と して オオツブ の アメ が おちて きた。 アメ は アタリ の ホテリ を やや しずめて くれた が、 しばらく する と、 また からり と はれた テンキ に もどった。 タイガン の カジ は まだ つづいて いた。 イマ、 こちら の キシ には チョウケイ と イモウト と それから キンジョ の みしった カオ が フタツ ミッツ みうけられた が、 ミンナ は よりあつまって、 てんでに ケサ の デキゴト を かたりあう の で あった。
 あの とき、 アニ は ジムシツ の テーブル に いた が、 ニワサキ に センコウ が はしる と まもなく、 1 ケン あまり はねとばされ、 カオク の シタジキ に なって しばらく もがいた。 やがて スキマ が ある の に きづき、 そこ から はいだす と、 コウジョウ の ほう では、 ガクト が スクイ を もとめて カンキョウ して いる―― アニ は それ を すくいだす の に ダイフントウ した。 イモウト は ゲンカン の ところ で コウセン を み、 オオイソギ で カイダン の シタ に ミ を ひそめた ため、 あまり フショウ を うけなかった。 ミンナ、 はじめ ジブン の イエ だけ バクゲキ された もの と おもいこんで、 ソト に でて みる と、 どこ も イチヨウ に やられて いる の に あぜん と した。 それに、 チジョウ の カオク は ホウカイ して いながら、 バクダン らしい アナ が あいて いない の も フシギ で あった。 あれ は、 ケイカイ ケイホウ が カイジョ に なって まもなく の こと で あった。 ぴかっと ひかった もの が あり、 マグネシューム を もす よう な しゅーっ と いう かるい オト と ともに イッシュン さっと アシモト が カイテン し、 ……それ は まるで マジュツ の よう で あった、 と イモウト は おののきながら かたる の で あった。
 ムコウギシ の ヒ が しずまりかける と、 こちら の テイエン の コダチ が もえだした と いう コエ が する。 かすか な ケムリ が ウシロ の ヤブ の たかい ソラ に みえそめて いた。 カワ の ミズ は マンチョウ の まま まだ ひこう と しない。 ワタシ は イシガケ を つたって、 ミズギワ の ところ へ おりて いって みた。 すると、 すぐ アシモト の ところ を、 シラキ の おおきな ハコ が ながれて おり、 ハコ から はみでた タマネギ が アタリ に ただよって いた。 ワタシ は ハコ を ひきよせ、 ナカ から タマネギ を つかみだして は、 キシ の ほう へ てわたした。 これ は ジョウリュウ の テッキョウ で カシャ が テンプク し、 そこ から この ハコ は ほうりだされて ただよって きた もの で あった。 ワタシ が タマネギ を ひろって いる と、 「たすけてえ」 と いう コエ が きこえた。 モクヘン に とりすがりながら ショウジョ が ヒトリ、 カワ の ナカホド を ウキシズミ して ながされて くる。 ワタシ は おおきな ザイモク を えらぶ と それ を おす よう に して およいで いった。 ひさしく およいだ こと も ない ワタシ では あった が、 おもった より カンタン に アイテ を すくいだす こと が できた。
 しばらく しずまって いた ムコウギシ の ヒ が、 いつのまにか また くるいだした。 コンド は あかい ヒ の ナカ に どすぐろい ケムリ が みえ、 その くろい カタマリ が もうぜん と ひろがって ゆき、 みるみる うち に ホノオ の ネツド が ます よう で あった。 が、 その ブキミ な ヒ も やがて もえつくす だけ もえる と、 クウキョ な ザンガイ の スガタ と なって いた。 その とき で ある、 ワタシ は カワシモ の ほう の ソラ に、 ちょうど カワ の ナカホド に あたって、 ものすごい トウメイ な クウキ の ソウ が ゆれながら イドウ して くる の に きづいた。 タツマキ だ、 と おもう うち にも、 はげしい カゼ は すでに ズジョウ を よぎろう と して いた。 マワリ の クサキ が ことごとく ふるえ、 と みる と、 そのまま ひきぬかれて ソラ に さらわれて ゆく あまた の ジュモク が あった。 ソラ を まいくるう ジュモク は ヤ の よう な イキオイ で、 コンダク の ナカ に おちて ゆく。 ワタシ は この とき、 アタリ の クウキ が どんな シキサイ で あった か、 はっきり おぼえて は いない。 が、 おそらく、 ひどく インサン な、 ジゴク エマキ の ミドリ の ビコウ に つつまれて いた の では ない か と おもえる の で ある。
 この タツマキ が すぎる と、 もう ユウガタ に ちかい ソラ の ケハイ が かんじられて いた が、 イマ まで スガタ を みせなかった 2 バンメ の アニ が、 ふと こちら に やって きた の で あった。 カオ に さっと ウスズミイロ の アト が あり、 セ の シャツ も ひきさかれて いる。 その カイスイヨク で ヒヤケ した くらい の ヒフ の アト が、 ノチ には カノウ を ともなう ヤケド と なり、 スウ-カゲツ も チリョウ を ようした の だ が、 この とき は まだ この アニ も なかなか ゲンキ で あった。 カレ は ジタク へ ヨウジ で かえった トタン、 ジョウクウ に ちいさな ヒコウキ を みとめ、 つづいて ミッツ の あやしい ヒカリ を みた。 それから チジョウ に 1 ケン あまり はねとばされた カレ は、 イエ の シタジキ に なって もがいて いる カナイ と ジョチュウ を すくいだし、 コドモ フタリ は ジョチュウ に たくして サキ に にげのびさせ、 リンカ の ロウジン を たすける の に てまどって いた と いう。
 アニヨメ が しきり に わかれた コドモ の こと を あんじて いる と、 ムコウギシ の カワラ から ジョチュウ の よぶ コエ が した。 テ が いたくて、 もう コドモ を かかえきれない から はやく きて くれ と いう の で あった。
 センテイ の モリ も すこし ずつ もえて いた。 ヨル に なって この ヘン まで もえうつって くる と いけない し、 あかるい うち に ムコウギシ の ほう へ わたりたかった。 が、 そこいら には ワタシブネ も みあたらなかった。 チョウケイ たち は ハシ を まわって ムコウギシ へ ゆく こと に し、 ワタシ と 2 バンメ の アニ とは また ワタシブネ を もとめて ジョウリュウ の ほう へ さかのぼって いった。 ミズ に そう せまい イシ の ツウロ を すすんで ゆく に したがって、 ワタシ は ここ で はじめて、 ゲンゴ に ぜっする ヒトビト の ムレ を みた の で ある。 すでに かたむいた ヒザシ は、 アタリ の コウケイ を あおざめさせて いた が、 キシ の ウエ にも キシ の シタ にも、 そのよう な ヒトビト が いて、 ミズ に カゲ を おとして いた。 どのよう な ヒトビト で ある か……。 オトコ で ある の か、 オンナ で ある の か、 ほとんど クベツ も つかない ほど、 カオ が くちゃくちゃ に はれあがって、 したがって メ は イト の よう に ほそまり、 クチビル は おもいきり ただれ、 それに、 いたいたしい シタイ を ロシュツ させ、 ムシ の イキ で カレラ は よこたわって いる の で あった。 ワタシタチ が その マエ を とおって ゆく に したがって その キカイ な ヒトビト は ほそい やさしい コエ で よびかけた。 「ミズ を すこし のませて ください」 とか、 「たすけて ください」 とか、 ほとんど ミンナ が ミンナ ウッタエゴト を もって いる の だった。
「オジサン」 と するどい アイセツ な コエ で ワタシ は よびとめられて いた。 みれば すぐ そこ の カワ の ナカ には、 ラタイ の ショウネン が すっぽり アタマ まで ミズ に つかって しんで いた が、 その シタイ と ハンゲン も へだたらない イシダン の ところ に、 フタリ の オンナ が うずくまって いた。 その カオ は ヤク 1 バイ ハン も ボウチョウ し、 みにくく ゆがみ、 こげた ランパツ が オンナ で ある シルシ を のこして いる。 これ は ヒトメ みて、 レンビン より も まず、 ミノケ の よだつ スガタ で あった。 が、 その オンナ たち は、 ワタシ の たちどまった の を みる と、
「あの キ の ところ に ある フトン は ワタシ の です から ここ へ もって きて くださいません か」 と アイガン する の で あった。
 みる と、 キ の ところ には、 なるほど フトン らしい もの は あった。 だが、 その ウエ には やはり ヒンシ の ジュウショウシャ が ふして いて、 すでに どうにも ならない の で あった。
 ワタシタチ は ちいさな イカダ を みつけた ので、 ツナ を といて、 ムコウギシ の ほう へ こいで いった。 イカダ が ムコウ の スナハラ に ついた とき、 アタリ は もう うすぐらかった が、 ここ にも タクサン の フショウシャ が ひかえて いる らしかった。 ミズギワ に うずくまって いた ヒトリ の ヘイシ が、 「オユ を のまして くれ」 と たのむ ので、 ワタシ は カレ を ジブン の カタ に よりかからして やりながら、 あるいて いった。 くるしげ に、 カレ は よろよろ と スナ の ウエ を すすんで いた が、 ふと、 「しんだ ほう が まし さ」 と はきすてる よう に つぶやいた。 ワタシ も あんぜん と して うなずき、 コトバ は でなかった。 グレツ な もの に たいする、 やりきれない イキドオリ が、 この とき ワレワレ を ムゴン で むすびつけて いる よう で あった。 ワタシ は カレ を チュウト に またして おき、 ドテ の ウエ に ある キュウトウジョ を イシガケ の シタ から みあげた。 すると、 イマ ユゲ の たちのぼって いる ダイ の ところ で、 チャワン を かかえて、 クロコゲ の オオアタマ が ゆっくり と、 オユ を のんで いる の で あった。 その ボウダイ な、 キミョウ な カオ は ゼンタイ が クロマメ の ツブツブ で できあがって いる よう で あった。 それに トウハツ は ミミ の アタリ で イッチョクセン に かりあげられて いた。 (ソノゴ、 イッチョクセン に トウハツ の かりあげられて いる カショウシャ を みる に つけ、 これ は ボウシ を サカイ に カミ が やきとられて いる の だ と いう こと を きづく よう に なった。) しばらく して、 チャワン を もらう と、 ワタシ は サッキ の ヘイタイ の ところ へ もちはこんで いった。 ふと みる と、 カワ の ナカ に、 これ は ヒトリ の ジュウショウヘイ が ヒザ を かがめて、 そこ で おもいきり カワ の ミズ を のみふけって いる の で あった。
 ユウヤミ の ナカ に センテイ の ソラ や すぐ チカク の ホノオ が あざやか に うきでて くる と、 スナハラ では モクヘン を もやして ユウゲ の タキダシ を する モノ も あった。 サッキ から ワタシ の すぐ ソバ に カオ を ふわふわ に ふくらした オンナ が よこたわって いた が、 ミズ を くれ と いう コエ で、 ワタシ は はじめて、 それ が ジケイ の イエ の ジョチュウ で ある こと に きづいた。 カノジョ は アカンボウ を かかえて ダイドコロ から でかかった とき、 コウセン に あい、 カオ と ムネ と テ を やかれた。 それから、 アカンボウ と チョウジョ を つれて アニ たち より ヒトアシ サキ に にげた が、 ハシ の ところ で チョウジョ と はぐれ、 アカンボウ だけ を かかえて この カワラ に きて いた の で ある。 サイショ カオ に うけた コウセン を さえぎろう と して おおうた テ が、 その テ が、 イマ も もぎとられる ほど いたい と うったえて いる。
 シオ が みちて きだした ので、 ワタシタチ は この カワラ を たちのいて、 ドテ の ほう へ うつって いった。 ヒ は とっぷり くれた が、 「ミズ を くれ、 ミズ を くれ」 と くるいまわる コエ が あちこち で きこえ、 カワラ に とりのこされて いる ヒトビト の サワギ は だんだん はげしく なって くる よう で あった。 この ドテ の ウエ は カゼ が あって、 ねむる には すこし ひえびえ して いた。 すぐ ムコウ は ニギツ コウエン で ある が、 そこ も イマ は ヤミ に とざされ、 キ の おれた スガタ が かすか に みえる だけ で あった。 アニ たち は ツチ の クボミ に よこたわり、 ワタシ も ベツ に クボチ を みつけて、 そこ へ はいって いった。 すぐ ソバ には きずついた ジョガクセイ が 3~4 ニン オウガ して いた。
「ムコウ の コダチ が もえだした が にげた ほう が いい の では ない かしら」 と ダレ か が シンパイ する。 クボチ を でて ムコウ を みる と、 2~3 チョウ サキ の キ に ホノオ が きらきら して いた が、 こちら へ もえうつって きそう な ケハイ も なかった。
「ヒ は もえて きそう です か」 と きずついた ショウジョ は おびえながら ワタシ に きく。
「だいじょうぶ だ」 と おしえて やる と、 「イマ、 ナンジ-ゴロ でしょう、 まだ 12 ジ には なりません か」 と また きく。
 その とき、 ケイカイ ケイホウ が でた。 どこ か に まだ こわれなかった サイレン が ある と みえて、 かすか に その ヒビキ が する。 マチ の ほう は まだ さかん に もえて いる らしく、 ぼうと した アカリ が カワシモ の ほう に みえる。
「ああ、 はやく アサ に ならない の かなあ」 と ジョガクセイ は なげく。
「オカアサン、 オトウサン」 と かすか に しずか な コエ で ガッショウ して いる。
「ヒ は こちら へ もえて きそう です か」 と きずついた ショウジョ が また ワタシ に たずねる。
 カワラ の ほう では、 ダレ か よほど ゲンキ な ワカモノ らしい モノ の、 ダンマツマ の ウメキゴエ が する。 その コエ は ハッポウ に こだまし、 はしりまわって いる。 「ミズ を、 ミズ を、 ミズ を ください、 ……ああ、 ……オカアサン、 ……ネエサン、 ……ヒカル ちゃん」 と コエ は ゼンシン ゼンレイ を ひきさく よう に ほとばしり、 「うう、 うう」 と クツウ に おいまくられる アエギ が よわよわしく それ に からんで いる。 ――おさない ヒ、 ワタシ は この ツツミ を とおって、 その カワラ に サカナ を とり に きた こと が ある。 その あつい ヒ の イチニチ の キオク は フシギ に はっきり と のこって いる。 スナハラ には ライオン ハミガキ の おおきな タテカンバン が あり、 テッキョウ の ほう を ときどき、 キシャ が ごう と とおって いった。 ユメ の よう に ヘイワ な ケシキ が あった もの だ。

 ヨ が あける と サクヤ の コエ は やんで いた。 あの ハラワタ を しぼる ダンマツマ の コエ は まだ ミミソコ に のこって いる よう でも あった が、 アタリ は しらじら と アサ の カゼ が ながれて いた。 チョウケイ と イモウト とは イエ の ヤケアト の ほう へ まわり、 ヒガシ レンペイジョウ に セリョウジョ が ある と いう ので、 ジケイ たち は そちら へ でかけた。 ワタシ も そろそろ、 ヒガシ レンペイジョウ の ほう へ ゆこう と する と、 ソバ に いた ヘイタイ が ドウコウ を たのんだ。 その おおきな ヘイタイ は、 よほど ひどく きずついて いる の だろう、 ワタシ の カタ に よりかかりながら、 まるで コワレモノ を はこんで いる よう に、 おずおず と ジブン の アシ を すすめて ゆく。 それに アシモト は、 ハヘン と いわず シカバネ と いわず まだ ヨネツ を くすぶらして いて、 おそろしく ケンアク で あった。 トキワバシ まで くる と、 ヘイタイ は つかれはて、 もう イッポ も あるけない から オキザリ に して くれ と いう。 そこで ワタシ は カレ と わかれ、 ヒトリ で ニギツ コウエン の ほう へ すすんだ。 ところどころ くずれた まま で やけのこって いる カオク も あった が、 いたる ところ、 ヒカリ の ツメアト が しるされて いる よう で あった。 とある アキチ に ヒト が あつまって いた。 スイドウ が ちょろちょろ でて いる の で あった。 ふと その とき、 メイ が トウショウグウ の ヒナンジョ で ホゴ されて いる と いう こと を、 ワタシ は コミミ に はさんだ。
 いそいで、 トウショウグウ の ケイダイ へ いって みた。 すると、 イマ、 ちいさな メイ は ハハオヤ と タイメン して いる ところ で あった。 キノウ、 ハシ の ところ で ジョチュウ と はぐれ、 それから アト は ヨソ の ヒト に ついて にげて いった の で ある が、 カノジョ は ハハオヤ の スガタ を みる と、 キュウ に たえられなく なった よう に なきだした。 その クビ が ヤケド で くろく いたそう で あった。
 セリョウジョ は トウショウグウ の トリイ の シタ の ほう に もうけられて いた。 はじめ ジュンサ が ひととおり ゲンセキ ネンレイ など を とりしらべ、 それ を キニュウ した シヘン を もろうて から も、 フショウシャ たち は ながい ギョウレツ を くんだ まま エンテン の シタ に まだ 1 ジカン ぐらい は またされて いる の で あった。 だが、 この ギョウレツ に くわわれる フショウシャ なら まだ ケッコウ な ほう かも しれない の だった。 イマ も、 「ヘイタイ さん、 ヘイタイ さん、 たすけて よう、 ヘイタイ さん」 と ヒ の ついた よう に なきわめく コエ が する。 ロボウ に たおれて ハンテン する ヤケド の ムスメ で あった。 か と おもう と、 ケイボウダン の フクソウ を した オトコ が、 ヤケド で ボウチョウ した アタマ を イシ の ウエ に よこたえた まま、 マックロ の クチ を あけて、 「ダレ か ワタシ を たすけて ください、 ああ カンゴフ さん、 センセイ」 と よわい コエ で きれぎれ に うったえて いる の で ある。 が、 ダレ も かえりみて は くれない の で あった。 ジュンサ も イシャ も カンゴフ も、 ミナ ホカ の トシ から オウエン に きた モノ ばかり で、 その カズ も かぎられて いた。
 ワタシ は ジケイ の イエ の ジョチュウ に つきそって ギョウレツ に くわわって いた が、 この ジョチュウ も、 イマ は だんだん ひどく ふくれあがって、 どうか する と ジメン に うずくまりたがった。 ようやく ジュンバン が きて カリョウ が すむ と、 ワタシタチ は これから いこう バショ を つくらねば ならなかった。 ケイダイ いたる ところ に ジュウショウシャ は ごろごろ して いる が、 テント も コカゲ も みあたらない。 そこで、 イシガケ に うすい ザイモク を ならべ、 それ で ヤネ の カワリ と し、 その シタ へ ワタシタチ は はいりこんだ。 この せまくるしい バショ で、 24 ジカン あまり、 ワタシタチ 6 メイ は くらした の で あった。
 すぐ トナリ にも おなじ よう な カッコウ の バショ が もうけて あった が、 その ムシロ の ウエ に ひょこひょこ うごいて いる オトコ が、 ワタシ の ほう へ コエ を かけた。 シャツ も ウワギ も なかった し、 ナガズボン が カタアシ ブン だけ コシ の アタリ に のこされて いて、 リョウテ、 リョウアシ、 カオ を やられて いた。 この オトコ は、 チュウゴク ビル の 7 カイ で バクダン に あった の だ そう だ が、 そんな スガタ に なりはてて も、 すこぶる キジョウブ なの だろう、 クチ で ヒト に たのみ、 クチ で ヒト を つかい とうとう ここ まで おちのびて きた の で ある。 そこ へ イマ、 マンシン チマミレ の、 カンブ コウホセイ の バンド を した セイネン が まよいこんで きた。 すると、 トナリ の オトコ は きっと なって、
「おい、 おい、 どいて くれ、 オレ の カラダ は めちゃくちゃ に なって いる の だ から、 さわり でも したら ショウチ しない ぞ、 いくらでも バショ は ある のに、 わざわざ こんな せまい ところ へ やって こなくて も いい じゃ ない か、 え、 とっとと さって くれ」 と うなる よう に おっかぶせて いった。 チマミレ の セイネン は きょとん と して コシ を あげた。
 ワタシタチ の ねころんで いる バショ から 2 メートル あまり の チテン に、 ハ の あまり ない サクラ の キ が あった が、 その シタ に ジョガクセイ が フタリ ごろり と よこたわって いた。 どちら も、 カオ を クロコゲ に して いて、 やせた セ を エンテン に さらし、 ミズ を もとめて は うめいて いる。 この キンペン へ イモホリ サギョウ に きて ソウナン した ジョシ ショウギョウ の ガクト で あった。 そこ へ また、 クンセイ の カオ を した、 モンペスガタ の フジン が やって くる と、 ハンドバッグ を シタ に おき ぐったり と ヒザ を のばした。 ……ヒ は すでに くれかかって いた。 ここ で また ヨル を むかえる の か と おもう と ワタシ は ミョウ に わびしかった。

 ヨアケマエ から ネンブツ の コエ が しきり に して いた。 ここ では ダレ か が、 たえず しんで ゆく らしかった。 アサ の ヒ が たかく なった コロ、 ジョシ ショウギョウ の セイト も、 フタリ とも イキ を ひきとった。 ミゾ に ウツブセ に なって いる シガイ を しらべおえた ジュンサ が、 モンペスガタ の フジン の ほう へ ちかづいて きた。 これ も シセイ を くずして イマ は こときれて いる らしかった。 ジュンサ が ハンドバッグ を ひらいて みる と、 ツウチョウ や コウサイ が でて きた。 リョソウ の まま、 ソウナン した フジン で ある こと が わかった。
 ヒルゴロ に なる と、 クウシュウ ケイホウ が でて、 バクオン も きこえる。 アタリ の ヒサン シュウカイサ にも だいぶ ならされて いる ものの、 ヒロウ と クウフク は だんだん はげしく なって いった。 ジケイ の イエ の チョウナン と スエ の ムスコ は、 フタリ とも シナイ の ガッコウ へ いって いた ので、 まだ、 どう なって いる か わからない の で あった。 ヒト は つぎつぎ に しんで ゆき、 シガイ は そのまま ほうって ある。 スクイ の ない キモチ で ヒト は そわそわ あるいて いる。 それなのに、 レンペイジョウ の ほう では、 イマ やけに りゅうりょう と して ラッパ が スイソウ されて いた。
 ヤケド した メイ たち は ひどく なきわめく し、 ジョチュウ は しきり に ミズ を くれ と うったえる。 いいかげん、 ミンナ ほとほと よわって いる ところ へ、 チョウケイ が もどって きた。 カレ は キノウ は アニヨメ の ソカイサキ で ある ハツカイチ チョウ の ほう へ より、 キョウ は ヤハタ ムラ の ほう へ コウショウ して ニバシャ を やとって きた の で ある。 そこで その バシャ に のって ワタシタチ は ここ を ひきあげる こと に なった。

 バシャ は ジケイ の ヒト-カゾク と ワタシ と イモウト を のせて、 トウショウグウ シタ から ニギツ へ でた。 バシャ が ハクシマ から センテイ イリグチ の ほう へ きかかった とき の こと で ある。 ニシ レンペイジョウ-ヨリ の アキチ に、 ミオボエ の ある、 キイロ の、 ハンズボン の シタイ を、 ジケイ は ちらり と みつけた。 そして カレ は バシャ を おりて いった。 アニヨメ も ワタシ も つづいて バシャ を はなれ、 そこ へ あつまった。 ミオボエ の ある ズボン に、 マギレ も ない バンド を しめて いる。 シタイ は オイ の フミヒコ で あった。 ウワギ は なく、 ムネ の アタリ に コブシダイ の ハレモノ が あり、 そこ から エキタイ が ながれて いる。 まっくろく なった カオ に、 しろい ハ が かすか に みえ、 なげだした リョウテ の ユビ は かたく、 ウチガワ に にぎりしめ、 ツメ が くいこんで いた。 その ソバ に チュウガクセイ の シタイ が ヒトツ、 それから また はなれた ところ に、 わかい オンナ の シタイ が ヒトツ、 いずれ も、 ある シセイ の まま コウチョク して いた。 ジケイ は フミヒコ の ツメ を はぎ、 バンド を カタミ に とり、 ナフダ を つけて、 そこ を たちさった。 ナミダ も かわきはてた ソウグウ で あった。

 バシャ は それから コクタイジ の ほう へ で、 スミヨシバシ を こして コイ の ほう へ でた ので、 ワタシ は ほとんど メヌキ の ヤケアト を イチラン する こと が できた。 ぎらぎら と エンテン の シタ に よこたわって いる ギンイロ の キョム の ヒロガリ の ナカ に、 ミチ が あり、 カワ が あり、 ハシ が あった。 そして、 アカムケ の ふくれあがった シタイ が トコロドコロ に ハイチ されて いた。 これ は セイミツ コウチ な ホウホウ で ジツゲン された シン ジゴク に ちがいなく、 ここ では すべて ニンゲンテキ な もの は マッサツ され、 たとえば シタイ の ヒョウジョウ に した ところ で、 ナニ か モケイ-テキ な キカイテキ な もの に おきかえられて いる の で あった。 クモン の イッシュン あがいて コウチョク した らしい シタイ は イッシュ の あやしい リズム を ふくんで いる。 デンセン の みだれおちた セン や、 おびただしい ハヘン で、 キョム の ナカ に ケイレンテキ の ズアン が かんじられる。 だが、 さっと テンプク して やけて しまった らしい デンシャ や、 キョダイ な ドウ を なげだして テントウ して いる ウマ を みる と、 どうも、 チョウゲンジツ-ハ の エ の セカイ では ない か と おもえる の で ある。 コクタイジ の おおきな クスノキ も ねこそぎ テンプク して いた し、 ハカイシ も ちって いた。 ガイカク だけ のこって いる アサノ トショカン は シタイ シュウヨウジョ と なって いた。 ミチ は まだ トコロドコロ で けむり、 シシュウ に みちて いる。 カワ を こす たび に、 ハシ が おちて いない の を イガイ に おもった。 この ヘン の インショウ は、 どうも カタカナ で かきなぐる ほう が ふさわしい よう だ。 それで ツギ に、 そんな イッセツ を ソウニュウ して おく。

  ぎらぎら の ハヘン や
  カイハクショク の モエガラ が
  ひろびろ と した、 パノラマ の よう に
  あかく やけただれた、 ニンゲン の シタイ の キミョウ な リズム
  すべて あった こと か、 ありえた こと なの か
  ぱっと はぎとって しまった、 アト の セカイ
  テンプク した デンシャ の ワキ の
  ウマ の ドウ なんか の、 フクラミカタ は
  ぶすぶす と けむる デンセン の ニオイ

 トウカイ の アト の はてしなく つづく ミチ を バシャ は すすんで いった。 コウガイ に でて も くずれて いる カオク が ならんで いた が、 クサツ を すぎる と ようやく アタリ も あおあお と して サイカ の イロ から カイホウ されて いた。 そして アオタ の ウエ を すいすい と トンボ の ムレ が とんで ゆく の が メ に しみた。 それから ヤハタ ムラ まで の ながい タンチョウ な ミチ が あった。 ヤハタ ムラ へ ついた の は、 ヒ も とっぷり くれた コロ で あった。 そして ヨクジツ から、 その トチ での、 ヒサン な セイカツ が はじまった。 フショウシャ の カイフク も はかどらなかった が、 ゲンキ だった モノ も、 ショクリョウ-ブソク から だんだん スイジャク して いった。 ヤケド した ジョチュウ の ウデ は ひどく カノウ し、 ハエ が むれて、 とうとう ウジ が わく よう に なった。 ウジ は いくら ショウドク して も、 アト から アト から わいた。 そして、 カノジョ は 1 カゲツ あまり の ノチ、 しんで いった。

 この ムラ へ うつって 4~5 ニチ-メ に、 ユクエ フメイ で あった チュウガクセイ の オイ が かえって きた。 カレ は あの アサ、 タテモノ ソカイ の ため ガッコウ へ いった が ちょうど、 キョウシツ に いた とき ヒカリ を みた。 シュンカン、 ツクエ の シタ に ミ を ふせ、 ついで テンジョウ が おちて うもれた が、 スキマ を みつけて はいだした。 はいだして にげのびた セイト は 4~5 メイ に すぎず、 ホカ は ゼンブ、 サイショ の イチゲキ で ダメ に なって いた。 カレ は 4~5 メイ と イッショ に ヒジヤマ に にげ、 トチュウ で しろい エキタイ を はいた。 それから イッショ に にげた ユウジン の ところ へ キシャ で ゆき、 そこ で セワ に なって いた の だ そう だ。 しかし、 この オイ も こちら へ かえって きて、 1 シュウカン あまり する と、 トウハツ が ぬけだし、 フツカ ぐらい で すっかり ハゲ に なって しまった。 コンド の ソウナンシャ で、 トウハツ が ぬけ ハナヂ が でだす と たいがい たすからない、 と いう セツ が その コロ だいぶ ひろまって いた。 トウハツ が ぬけて から 12~13 ニチ-メ に、 オイ は とうとう ハナヂ を だしだした。 イシャ は その ヨル が すでに あぶなかろう と センコク して いた。 しかし、 カレ は ジュウタイ の まま だんだん もちこたえて ゆく の で あった。

 N は ソカイ コウジョウ の ほう へ はじめて キシャ で でかけて ゆく トチュウ、 ちょうど キシャ が トンネル に はいった とき、 あの ショウゲキ を うけた。 トンネル を でて、 ヒロシマ の ほう を みる と、 ラッカサン が ミッツ、 ゆるく ながれて ゆく の で あった。 それから ツギ の エキ に キシャ が つく と、 エキ の ガラスマド が ひどく こわれて いる の に おどろいた。 やがて、 モクテキチ まで たっした とき には、 すでに くわしい ジョウホウ が つたわって いた。 カレ は その アシ で すぐ ひきかえす よう に して キシャ に のった。 すれちがう レッシャ は みな キカイ な ジュウショウシャ を マンサイ して いた。 カレ は マチ の カサイ が しずまる の を まちかねて、 まだ あつい アスファルト の ウエ を ずんずん すすんで いった。 そして イチバン に ツマ の つとめて いる ジョガッコウ へ いった。 キョウシツ の ヤケアト には、 セイト の ホネ が あり、 コウチョウシツ の アト には コウチョウ らしい ハッコツ が あった。 が、 N の ツマ らしい もの は ついに みいだせなかった。 カレ は オオイソギ で ジタク の ほう へ ひきかえして みた。 そこ は ウジナ の チカク で イエ が くずれた だけ で カサイ は まぬがれて いた。 が、 そこ にも ツマ の スガタ は みつからなかった。 それから コンド は ジタク から ジョガッコウ へ つうじる ミチ に たおれて いる シタイ を ヒトツヒトツ しらべて みた。 タイガイ の シタイ が ウツブセ に なって いる ので、 それ を だきおこして は クビジッケン する の で あった が、 どの オンナ も どの オンナ も かわりはてた ソウ を して いた が、 しかし カレ の ツマ では なかった。 シマイ には ホウガク チガイ の ところ まで、 ふらふら と みて まわった。 スイソウ の ナカ に おりかさなって つかって いる トオ あまり の シタイ も あった。 カシ に かかって いる ハシゴ に テ を かけながら、 そのまま コウチョク して いる ミッツ の シガイ が あった。 バス を まつ ギョウレツ の シガイ は たった まま、 マエ の ヒト の カタ に ツメ を たてて しんで いた。 グンブ から カオク ソカイ の キンロウ ホウシ に ドウイン されて、 ゼンメツ して いる ムレ も みた。 ニシ レンペイジョウ の モノスゴサ と いったら なかった。 そこ は ヘイタイ の シ の ヤマ で あった。 しかし、 どこ にも ツマ の シガイ は なかった。
 N は いたる ところ の シュウヨウジョ を たずねまわって、 ジュウショウシャ の カオ を のぞきこんだ。 どの カオ も ヒサン の キワミ では あった が、 カレ の ツマ の カオ では なかった。 そうして、 ミッカ ミバン、 シタイ と ヤケド カンジャ を うんざり する ほど みて すごした アゲク、 N は サイゴ に また ツマ の ツトメサキ で ある ジョガッコウ の ヤケアト を おとずれた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ハイキョ から | トップ | カイメツ の ジョキョク 2 »

コメントを投稿

ハラ タミキ 」カテゴリの最新記事