鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

怒りの鎮め方

2024-04-22 19:39:59 | 日記

新聞の囲み記事に面白い研究があった。

「怒りは紙に書いて捨てよ」というものだ。

名古屋大学の心理学(認知科学)の研究では、怒りの感情が起きた時、その怒りの感情を引き起こした状況と怒りの気持ちを客観的に紙に書き、丸めてゴミ箱にポイ捨てさせると、怒る前の気持ちと同程度にまで高ぶった気持ちが下がるという。

ただし、紙に書いて裏返しにしただけではさほど怒りの感情は収まらなかったというから、「丸めてポイ」が有効だったことになる。

これは実は昔から同様のことが行われていたこととつながっている。

例えば人から苦情の手紙などを貰った時、その苦情がまったく身に覚えがないか相手が誤解している時など、「なんでこんなことを書いて寄越すのか!」とばかり、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだりすることがある。俗に言う鬱憤を晴らすというやつである。

またかなりの数のラブレターをもらっていたが、実は相手には他に本命がいてそっちの方がうまく行き、自分の方はすっかり忘れ去られたような時、怒り心頭となって数多のラブレターをビリビリに引き裂きゴミ箱の中に叩きつける――ようなやり方で、怒りを収め、気持ちの整理が付く場合などである。

ただしこの二例ではただもらった紙(手紙)をくしゃくしゃにするだけで、その紙に怒りの感情がなぜ起きたかについての「客観的な記述」をすることはない。

一例目では苦情の内容についてその評価を客観的に書き込む、つまりどこが相手の誤解なのかを冷静に指摘したうえで、丸めてポイすれば怒りの感情は(相手への憐みの感情に置き換わり)スーッとするだろう。

また二例目では怒りのヒートアップはかなりのものに違いなく、感情の爆発はなかなか抑えがたいものがあるだろうが、相手のラブレターを破り捨てる前に「さようなら、縁が無かった、ああ自由になった、さばさばした」とでも太字の黒マジックで相手の名前を消すように書き散らせば怒りの感情は相当収まるのではないか。

こういったトラウマを解消するやり方として、そのトラウマが起きた状況についてあたかも「テレビジョンの向こうの世界」で起こったかのごとく、距離を置いてみると怒りの感情や悲しみの感情が軽減される場合が多いはずである。

親子関係のトラウマも恋愛のもつれのトラウマも、そして近年多発している災害に関してのトラウマも、何時かは軽減されて行く。

一般的には「時が解決する」と言われるが、その「時」の中身は経験の積み重ねによってある程度「客観的に見ることができる」度合いが高まるということだ。

身近な人の死は多かれ少なかれトラウマを誘発するが、身近な人の死を数多く体験すれば、やがてトラウマは限りなく小さくなるだろう。

ただやはり戦争に起因するトラウマだけは経験したくないし、誰にも経験して欲しくない。

戦争を始めた者への怒りはどう鎮めたらよいのか、怒りの連鎖はどう断ち切れるのだろうか。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿