鴨着く島

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安保は分断を生む

2023-07-21 19:36:03 | 専守防衛力を有する永世中立国
種子島の西表市に属する馬毛島では、これまで計上されていた自衛隊基地建設に関する予算が1700億円から3500億円に嵩上げされたという。しかも地元には何の連絡もなかったそうだ。

自衛隊基地なんだから防衛省の予算内で、仮に大幅に予備費を投入するにしてもそれなりの通知が地元にあってしかるべきだろう。

この政府の「突出」に対して自衛隊基地建設に賛成の自治体は大喜びだろう。基地建設への予算増額に見合った助成金が生まれるからだ。

地元の建設業者や商工会は積極的とは言わないまでも、自衛隊基地建設には賛成の立場だが、馬毛島に新しく港湾を整備する過程で一定の海域の漁業権を取り上げられた漁業者は反対している。

陸の業者と海の業者の間に深い溝が生まれ、お互いに知り合いも多いだろう小さな地域に分断が生まれているのだ。

また南西諸島で最も西に位置し台湾にも近い与那国島では、かなり前から自衛隊基地の建設を要望していた地元だが、自衛隊基地建設のゴーサインが出て始まったはいいが、その自衛隊基地に敵基地攻撃タイプのミサイル部隊がやって来るというので困惑が起きている。

お笑い芸人の殺し文句ではないが、「聞いてないよ!」そのものだ。

私の地元鹿屋でも、去年の11月から自衛隊鹿屋航空隊基地を使用した米軍による無人偵察機MQ9の運用が始まったが、MQ9の運用に関する情報は一切地元に知らされていない。防衛上の機密だそうである。

これも「聞いてないよ!」のパターンだ。

このような軍事機密を伴った展開は近年の米中対立によるもので、それまで盛んに唱えられてきた対中国への「国際法を守れ」という牽制から一歩進んだ一種の脅しへと明らかに変化している。

これは単なる台湾問題というより、米中の覇権争いへと移行しつつあると考えた方がよい。

その矢面に立たされているのが日本だ。

あの鄧小平以来「政経分離」の原則で深いつながりを持ち続けて来た日本が、いったいなぜこうも「対中敵視策」に転換したのだろうか。

結局のところアメリカの対中敵視戦略に巻き込まれたというのが正解だろう。

そもそも日米安保という「二国間軍事同盟」は戦後世界では無用のもので、国際紛争はすべて国連を中心に常任理事国のイニシアチブによる「集団安保」によって解決すべきはずだった。

1992年のソ連邦崩壊後、実は日米安保は解消されて仕方がないという認識がアメリカ側にはあったのだが、日本側の安保至上主義者や日米同盟があった方が日本独自の戦力が最小限に抑えられるという革新勢力の言い分の奇妙な合意で日米安保は残されたのであった。

もっとも1970年の安保改定の節目で「自動延長」が決定され、その後の自民党政治ではそれが催眠術化し、誰もが日米安保は日本にとってなくてはならぬものという認識に変質して行った。

つまり自衛隊の存在(による戦力保持)には反対しても、日米安保(による米軍の戦力)には反対しないという訳の分からない認識が護憲勢力のみならず多くの日本人の認識にもなって来たのである。

今度の日本南西部における戦力の増強は結局アメリカ側の対中敵視策に基づくもので、日本は日米安保という「不可侵条約」にひき摺らているだけの話である。

今回言われている南西諸島の基地建設による分断も馬毛島の自衛隊基地(とは言いながら実は米軍の空母艦載機離発着訓練場)整備による分断も、また大きく言うなら沖縄における米軍基地再編問題もすべて日米安保条約の日本側の対応なのだ。

この分断のもとを断つには日米安保の廃棄しかないだろう。その上で「永世中立国」を宣言すべきだ。

そうなったら日本は中国や北朝鮮にやられまくるではないか――そう思う人は世界で最も安全で頼りになるアメリカへ移住すればよいではないか。