鴨着く島

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トランプ流パフォーマンス

2019-07-02 13:49:07 | 日本の時事風景

大阪で行われた日本では初のG20は一応は成功裏に終わったが、その話題を上回ったのがG20終了直後に行われたアメリカ・トランプ大統領の金正恩との電撃的会談だった。

アメリカの国務省も予想していなかったトランプ大統領独自のツイッターでの呼びかけ「このツイッターを見ていたらたとえ数分でもいいから板門店で会いたい」に何と金正恩が応じて板門店で会ってしまったのだ。

二月のハノイでの2回目の会談では全くの物別れに終わったのだが、あの時はボルトンという対北朝鮮強硬派の補佐官の入知恵があってせっかくのトランプ流が発揮できなかったのを、今度のツイッターでの突然の申し入れによって、不和で終わったことを誰にも邪魔されずに打開したかったのだろう。

数分のはずが1時間近くの会談になった。中身は知らされていないが、おそらく2か月くらい前に金正恩に送られたトランプ大統領の親書に基づくものではないか。

非核に関して言えば「すべての核施設及び核弾頭の全面廃棄」ではなく、もう少し緩いものを提示したのではないだろうか。想像の域を出ないが・・・。

かってのアメリカ大統領の誰もがなし得なかった、と握手をしながら金正恩が言っていたが、板門店に敷かれた北と南の国境を越えて北朝鮮に初めて足を踏み入れたのは、見応えがあった。

これで俺のノーベル平和賞受賞が現実味を帯びたなーーとトランプ大統領は内心思ったかもしれない。

前の共和党選出の大統領だったブッシュが「北朝鮮とイランは悪の枢軸だ」と言ってはばからなかったまさにその北朝鮮。

そこに単身で(護衛官は付いているが)乗り込み、悪の枢軸の親玉とにこやかに握手したうえ、相手国に足を踏み入れるという離れ業をやってのけた(※もっとも韓国の文在寅大統領が先んじたが・・・)わけだから、平和への大きな一歩であることは間違いないことだ。

だが、そんなものではノーベル賞は無理だろう。現在のような朝鮮戦争の結果として結ばれた休戦協定で非武装地帯が設けられ板門店でお互いに監視しあう形から、最低でも終戦宣言にまで持って行かなければ平和賞の候補にも上るまい。

ただ、終戦宣言を締結することは取りも直さず、韓国における米軍の存在理由がなくなって基本的には撤退になるわけで、それをアメリカ保守層や韓国の保守層がやすやすと認めるかどうかだ。おそらく認めまい。

さらにさらに、この際トランプは日米安保という冷戦時代の遺物であり、また国連憲章違反に抵触する「日米二国間軍事同盟」の廃棄を現実化すれば、むしろそっちの方でノーベル平和賞候補に推薦されるだろう。そして日本側の当事者である安倍首相も(廃棄に賛成すれば)同様にノーベル平和賞候補だ。

日米安保条約が廃棄されたら、待ってましたと中国が、ロシアが狙ってくるーーそう考える人は戦後の冷戦構造でしかものを考えられない旧人類。今や主義主張を越えて経済も人も文化もボーダーレスの多元的交流の時代になっているのだから、すぐさま中国がロシアがと恐怖心をあおるのはおかしい。

むしろ中国は日本をお手本にしたいくらいであり、ロシアは北方領土交渉に前向きになるだろう。北朝鮮による拉致問題もアメリカ頼みでは「らち」が明かないのは分かり切った話で、それよりも中国を経由した方が解決は早いだろう。アメリカに忖度しない日本独自の外交力が試される時代になっているのだ、安倍さん。

世界はそれを待っている。