万華鏡の魅力のひとつは、大人の人に、忘れかけていた子供の心を思い出させることです。身の回りの楽しいことをテーマにして、ほほ笑みを誘う万華鏡。あなただったらどんなテーマで創ってみたいでしょうか?
黒い漆に金色の蝶が舞う万華鏡は井野文絵さんの作品です。蒔絵の技法で描かれた一対の蝶がとても美しく印象的です。井野文絵さんは和の万華鏡を中心テーマに、白い磁器の万華鏡や手描きの絵がユニークな陶器の作品など、身近に飾って楽しみ、手にとって覗きやすい小型で手持ち型の万華鏡を製作なさっています。
その一方で、漆工芸の万華鏡にも幅を広げ、時間をかけて、美しい日本の伝統工芸を生かした万華鏡も創っています。漆工芸というのは製作過程にとても時間がかかるそうですが、深みのある艶となめらかな質感、温かな感触には、独特の魅力と美しさがあります。
この作品は2ミラーシステム、ドライセルの作品です。先端部にあるオブジェクトセルの部分は木の枠が付いていて、そこを回して映像の変化を楽しみます。正面から光を取り込むタイプなので、光の強さや明るさで表情も変わってきます。小さなセルですが、多彩なガラスオブジェクトを使っていて、回すごとに新しい色模様が展開します。
万華鏡の中に咲く華を探す蝶でしょうか。よく見ると翅には貝殻で点の模様が埋め込まれ、控えめに虹色の光沢を見せています。
透き通って重なり合ったガラスの表情は蝶の翅を思い起こさせるようです。小さな筒の中に広がる世界は覗くたびに新しく、蝶の翅の震えにも似て、かすかな動きにも映像がゆれて、その雰囲気を伝えます。
投影万華鏡展は周囲が暗くなってますますきれいに見えます。この映像は広間から見た、奥の中庭に投影された万華鏡映像です。石灯籠にもこんな模様が・・・そして次の瞬間、こんな色にも変わるんです。外の建物に映し出されたものと同様、とても力強い映像です。
そしてテーブルトップに映し出された映像です。下のほうからどんどん湧き上がってくる色模様の饗宴。
こんなテーブルを囲んでお酒が飲みたいなんて声も聞こえてきます。
こちらは広間の床の間と衝立(右側)に投影された映像です。床の間の映像には鳥かごのモビールが影を映しています。右のほう、手前に見えているのが、床の間に映像を投影するために設置された万華鏡です。
ここは単なる展示会ではなく、ここに居ることで作家さんや「ギャルリ蓮」の万華鏡好きな店長さんやスタッフの方々、そして見に来ている人々と共有することができる感動や驚きがあるんです。投影万華鏡の大きな魅力の一つですね。覗きこまなくても自分の周りに次々と展開する映像に何かを感じ、その稀有な体験を大切に持ち帰っていただけたら嬉しいなあと思いました。
最後になりましたが、投影万華鏡のプロジェクトを通して、万華鏡の楽しみの世界を追求し、広げてくださった依田さんご夫妻にあらためて感謝したいと思います。その開発には大変多くの時間とエネルギーを注ぎ、そして夢を持ち続けていらっしゃいます。心からありがとうございました!
次は大きな金屏風に映し出された映像です。左右から1台ずつの万華鏡を使って映像を投影しているので、屏風の面の向きによって交互に違う「動く映像」が投影されます。
金屏風の横には大きなスクリーンがあり、向こう側から投影された映像が大きく動いています。二等辺三角形に組んだミラーシステムの映像です。黒と白のコントラストに時々薄い色味が加わる映像展開で、ほかのカラフルなものとはちょっと別の、魅力あふれるお洒落な映像です。
次は平面でなく、球面に投影された映像です。白い大きなボールにはこんな風に模様がつきました。
映像はどれも留まることなく形や色を変えていきますので、どの写真もほんの一瞬をとらえたものです。小さなセルの中で、とても小さなオブジェクトひとつひとつの動きがこんなに多彩な模様を生み出すことに本当に驚かされます。
この「華あかりⅢ 投影万華鏡展」は2月14日までやっています。 つづく・・・
「すごい!」「きれい!」と見上げた時は歓声を上げた人々も、多彩な変化に圧倒されて言葉を失い、たたずんで映像を見続けています。投影される万華鏡は、たいていフラットな白いスクリーンに映し出されるように創られますが、この万華鏡はもっと強い力を持っているのでしょう。小雨の中、そこにあるすべてのものに、こんなにきれいに投影されています。
実際の万華鏡の映像をプロジェクターで投影しているのですが、これほど大きく、鮮やかに見えることに本当に驚かされます。 素晴らしい体験でした。
建物の中、大広間でも夢の世界にまぎれこんだような体験ができます。小型の投影万華鏡を10数台設置して、美しい映像世界があちこちに展開します。
そのうちのひとつ。心温まる映像ですね。
障子に映し出されたファンタジックなアートは、投影万華鏡と影絵による作品で、月を見上げるウサギ、跳ねるウサギ、長野のリンゴ、雪の結晶が映し出されます。万華鏡映像がどんどん変わるので、つい見いってしまいます。 依田さんの工房のHさんが影絵の部分を担当なさっていますが、昨年の作品も、ふらのやまべ美ゅーじあむの作品も、いつも温かさが伝わってくる素敵なデザインで、見る人をやさしい気持ちにさせてくれると思います。 つづく・・・・
素敵な万華鏡の企画展のお知らせです。長野 善光寺の宿坊「白連坊」内にある「ギャルリ連」さんは万華鏡ファンにはよく知られたギャラリーですが、2010年も依田満さん・百合子さんご夫妻の投影式万華鏡展「華あかりⅢ」(地図内の白連坊をクリック)を開催中です。
これから伺うので写真は昨年のものですが、今年はさらにすばらしいとのことで、私も楽しみにしています。
14日の日曜日まで開催中です。企画展は、14:00から21:00まで。夕方暗くなったころには外にも美しい万華鏡映像が映し出されるそうです。(今回初)
依田さんご夫妻は、この数年投影式万華鏡の開発に取り組んでいらっしゃいます。
ギャルリ連さんでの企画展も3回目。また富良野の万華鏡ミュージアムでも、昨年秋に投影式万華鏡を取り入れたイベントを行いました。しかもこの万華鏡は毎回改良され、映像世界はますます素晴らしく進化しているそうですから、すごいことです。
一人でも多くの方に見ていただきたくて、お知らせ編を書きました。今年のレポートは、もう少しお待ちください。
この企画展は第7回長野灯明まつりの中のイベントとして行われています。
長野オリンピック記念の行事で、善光寺も5色にライトアップされ、参道や宿坊でもいろいろな企画があります。楽しそうですね。
エッフェル搭が万華鏡になったシリーズを創ったのは、ジュディス・ポールさん・トム・ダーデンさんのイメージス工房です。タイトルは「フレンチコネクション」。テーマはフランスです。以前「Passport to Paris」という、もう少し大きめのエッフェル搭の万華鏡がありましたが、今回のシリーズは小型化し、テーマを絞り込んで、色も10色あり、それぞれ異なったミラーシステム、異なったテーマです。
今日ご紹介するブロンズ色の万華鏡のテーマは「アート」です。ミラーシステムは2ミラー4ポイントで、四角い映像です。何とモナリザの絵までオブジェクトになっています。メタルワークによる小さなエッフェル搭やパレット、アンティークな雰囲気のメダルや花などが、次から次へと現れては消えていきます。
オブジェクトの面白さも楽しみですが、映像を印象付けるのは、その色合いです。
ターコイズブルーと柔らかいオレンジ色の組み合わせがとてもユニークで、きれいなのです。そしてメタルワークのゴールドが重なり、立体的な映像となって目に飛び込んできます。いつものように、小さな粒状のオブジェクトが流れながら輝き、大きなオブジェクトの間の空間を飾ります。お洒落でアートの香りのある映像展開です。
この万華鏡は「Wrap It Up(ラップ・イット・アップ)」というシリーズで、ジュディスさんの撮った写真を、より丈夫なビニールに印刷して筒に巻いています。
今日ご紹介するのは、“葡萄園”がテーマです。たわわに実った葡萄の写真が筒を飾ります。そして映像も豊かな実りとワインの楽しみを見せています。
ワインオープナーや樽のラベルなどワインに関わるアイテムが時々見えて、意外な模様となっています。葡萄の房もオブジェクトとしてインパクトがありますが、その合間を縫って、オイルの中を動き回る小さな紫やグリーンの粒ビーズの動きがとてもきれいです。 面白いオブジェクトというだけでなく、きれいな映像表現をいつも考えて、私たちを楽しませてくれる作家さんです。
「アートの庭」で開催中の喜多里加さんの作品展から、小嶌淳さんとのコラボレーションによる万華鏡をもう1点ご紹介します。電動式の万華鏡なので、スイッチを入れれば自動的に映像の変化を楽しめます。
万華鏡の筒は先の少し広がった三角柱で、喜多さんの手彫りの模様のざっくりとした質感とブルーやピンク、ゴールドの彩色が、重厚で落ち着いた華やかさを見せています。上にある持ち手のついた蓋をはずすと、覗き口が3か所あり、それぞれが違う映像を見せる仕組みになっています。
一つ目は オーラのある2ミラーの映像。
ふたつめは 際限なく広がる3ミラーの映像。
そして3つめはリボンのように長く連なる映像。
台座の部分には宝物みたいなオブジェクトがいっぱい載ったトレイが回っていて、それを照明が輝かせています。ダイクロイックガラスをフュージング加工したきらめくガラス宝石や、光沢のある貝殻、メタルワーク、チェーンなどジュエリーみたいなオブジェクトは、並んでいるだけでもきれいですが、3つのミラーシステムを通してまた違った魅力を見せています。好きなオブジェクトを自分でトレイに載せることもできるのも楽しいです。
小嶌さんは細部までこだわる創り方で、陶器、ガラス、木、金属という異なった素材を使いこなし、デザインします。万華鏡にはいろいろな素材を使うことが多いですが、そのコーディネートの仕方は魅力的な万華鏡創りにつながってきますね。喜多さん、小嶌さんの作品を拝見するといつもそんなことを思います。
国立駅近くの「アートの庭」で開催中の「陶芸家 喜多里加の世界」展に伺いました。喜多さんは独特の表情を持つ陶芸の技術を生かして、ランプシェードや花瓶、陶板の額、水指や茶わん、皿、雛人形など生活の中に楽しみを演出するような様々の素敵な作品を製作なさり、とても人気のある作家さんです。
その中で、万華鏡作家小嶌淳さんとのコラボレーションによる万華鏡も大人気だそうで、毎年楽しみにしている万華鏡ファンの方も多いと聞きます。今日ご紹介する作品は「アルケミスト(錬金術師)」というシリーズです。
一つ一つ個性のある筒に合わせて、ミラーシステムを考え、オブジェクトを選び、万華鏡に仕上げます。 同じものはないので、外からはうかがい知れない中の世界を私たちはわくわくしながら覗きます。
今回のブルーの作品は、とても変わった映像で、どんなミラーシステム?と疑問に思いました。
繰り返す反射映像が、部分的に違っているのがわかるでしょうか。連続性があるようで、ないのです。不思議ですね。
そして小嶌さんの演出する映像は、幻想的な輝きを生み出す、ダイクロイックガラスをフュージングで加工したオブジェクトや、光沢のある貝殻を磨いたものなど、ひと手間もふた手間もかけて製作したオブジェクトから生まれます。とても個性的な映像を拝見して、小嶌さんの映像世界を堪能することができました。
この作品展は2月21日まで開催中です。詳しくはウェブサイトをご覧下さい。