万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

中里保子さん 20周年記念作品集

2023-09-13 22:58:12 | 万華鏡ブログ

中里保子さんが万華鏡作家として20年の節目を記念して作品集を発行しました。 この作品集が素晴らしいのは中里さんが万華鏡に向き合う時と同様に、作品集の制作にも全身全霊で取り組まれていたからです。その熱意が写真家の方、編集の方、印刷の方をも巻き込んで、結実しました。私も英文作成の部分で関わらせていただきましたが、中里さんの文章を読みこむことで、彼女の考えや作品への想いが伝わってきて、理解を深めることができたことは大きな喜びでした。私にとっても25年ほどになる万華鏡と向き合った人生の中でずいぶん長い間中里さんという作家さんを見てきたなあと、この作品集に関わって改めて感じ入る次第です。そして作るのはからっきしダメな私ですが、万華鏡制作に関してたくさん質問させていただき、本当にいろいろなことを教えてもらいました。感謝しています。

初めて中里さんに会ったのは、2005年アメリカでの万華鏡公募展。陶芸家、辻優子さんとのコラボレーションによる時計の万華鏡は、そのユニークな外観と繊細な内部映像が強く印象に残りました。日本にもこんな作家さんがいるんだとちょっと驚いた出会いでした。次に印象的だったのはアメリカでのBrewster Kaleidoscope Societyの コンベンションで「秋草」が受賞したとき。 あの作品は本当に美しくて、和のテイストの表現が秀逸で、内部映像も魅力的だったので、日本の仲間として受賞は誇らしく思いました。

Brewster Kaleidoscope Society のコンベンションでは毎回新作の発表があり、中里さんは毎年未発表の大型作品を抱えてアメリカに行きました。出発の直前まで眠らずに手を加えたこともしょっちゅうで、成田で顔を見るまで心配したものです。私もアメリカに着いてから作品を見せてもらうのが楽しみでした。それらのいくつかは People’s choice awardを受賞しましたが、目の肥えた万華鏡コレクターやギャラリーの方、作家の方の投票で決まる賞なので、とても価値のある、記録するべき賞だと思います。その意味でもそれらの作品を再び見ることのできる作品集で良かったなと思います。

素晴らしい作品の数々をすべてここではご紹介できませんが、私が好きだった作品を2点ほどご紹介します。この「秋嶺」は個展で拝見したものですが、アンティークガラスの美しい表現が素敵でした。まだガラスのこともあまり知らず、制作のご苦労など考えが及びもしなかった私はただそのデザインとユニークな表現方法に素敵だなあと感激したのでした。今回この部分の文章を中里さんが編集の方の協力を得て推敲したものを読み、説明を聞いて、初めてその制作のご苦労を知りました。

これは神楽坂のグループ展で拝見し、素敵だなと思った「ローズ・ガーデン」です。
シリンダーを水平に回すオブジェクトの作品で、「哲学の小径」や「はなみずきの頃」も大好きなのですが、これはガラスの美しさと手の込んだ金属の部分の造りがすごくて、薔薇の香りを感じるような万華鏡だと思いました。また本で出会えて嬉しいです。

日本の伝統工芸、伊勢型紙を取り入れた作品群は、その渋い魅力を現代的に万華鏡に取り入れました。そのセンスが素敵でした。

万華鏡は外観だけでなく、内部映像があってこその作品なので、どのようなミラーシステムで、何を映し出すかが作家さんの個性の見せどころです。小さな覗き口から覗くのもあるし、大きな覗き口から両目で覗く作品もあります。中里さんの見せたかったものを改めてこの本で追体験しながら鑑賞しました。どの作品にも中里さんの作家としての想いが込められていることや今までの経験をご自身の言葉で語られています。お人柄まで伝わってくる素敵な本です。

そして必見の素敵なおまけがあります。受賞作品のページにあるQRコードを読み取ると、なんと内部映像を含めた動画を見ることができます。これがまた綺麗で嬉しくなります。たくさんの方に見てほしいです。

(この本は本屋さんでは買えませんが、万華鏡展、万華鏡ギャラリー、万華鏡ミュージアムなどでご覧になれます。 ご購入のご希望は中里さんのウェブサイトのBOOKのページから、あるいは上記の場所でもお求めになれると思います。私のオンラインショップでも販売いたします。税込み6600円です)

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