万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

万華鏡を覗く少女

2014-09-29 14:07:53 | 万華鏡ブログ

この絵は、カレイドスコープ・ルネッサンスの立役者、コージー・ベーカーさんの本にも登場するバーバラ・ミッチェルさんの作品です。 このオリジナルを店内に飾っているのは、今年20周年を迎えた麻布十番の「カレイドスコープ昔館」です。 
タイトルは"Katrina's Woodland Illusion"  (カトリーナズ ウッドランド イリュージョン ) 

カトリーナが覗いているのが、「イリュージョン」という一世を風靡した万華鏡です。

今では良く見るタイプですが、考案したのはコージー・ベーカーさん。 ワイルドウッド工房が製作して、たくさん販売されました。
発売当初、次から次へと打ち上げられる花火のような映像が多くの人に驚きをもたらしたこの万華鏡を、この絵の少女は覗いています。
バーバラ・ミッチェルさんは、万華鏡をテーマにした絵画を残していて、ベーカーさんのカレンダー本「Kaleidoscopia」には猫がテレイドスコープを通して蝶を見ているというユーモラスな絵も載っています。

バーバラ・ミッチェルさんの絵には万華鏡が生み出す世界への愛着が感じられますが、それもそのはず、ご本人は多才な方で、万華鏡も製作なさる方でした。 特にSpectraSphere という投影式ポリアンギュラーの万華鏡で、1986年にブリュースター・ソサエティーの創造的作品賞(Award for Creative Ingenuity)を受賞しました。

カレイドスコープ昔館は1994年にオープンしましたが、コージー・ベーカーさんから品ぞろえや、作家の紹介などアドヴァイスを受け、アメリカのカレイドスコープ・ルネッサンスを日本で紹介し続けて来ました。 この絵画もコージーさんから勧められたものと聞いています。 店内のあちこちにコージー・ベーカーさんの時代を思い起こす懐かしい作品や、歴史的に価値のある作品も並び、そこに新しい作家さんの作品も加えられ、現在に至っています。 まだ日本であまり現代の万華鏡のことが知られていなかった頃、この店でたくさん万華鏡を覗いて学んだ作家さんも多いと聞いています。

ここは、万華鏡の世界に浸れるギャラリーです。 万華鏡の知識に詳しいスタッフがいます。 どうぞ、ゆっくり時間を取って訪れてみてください。

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ターニングエンド

2014-09-25 16:45:08 | 万華鏡ブログ

万華鏡にはいろいろなタイプがあることをご紹介してきました。 今日のポイントは「ターニング・エンド」です。 これは手持ち型の万華鏡の本体を回さずに、オブジェクトセルのある先端部だけを回す仕組みを指しています。 

キャロリン・ベネットさんはアクリル製のスマートな作品を創り続けている、長い作家歴を持つ作家さんです。 彼女が目指すのは、誰もが気楽に取り上げて楽しめる作品。 定番中の定番はリキッドサスペンションシリーズの作品で、筒のデザインテーマに合わせて、大きなオイルセルが表現され、外観もスマートで、彩りもきれいな万華鏡です。

昨年と今年のコンベンションで紹介された新しいテーマを含む作品をいくつかご紹介します。 そして、これらは今までとは違って、ターニングエンドになったオイルセルなのです。

左から映像をご紹介します。

 「ベリー」は木の実が描かれた秋らしい雰囲気の万華鏡です。

「ピーコック」は孔雀がテーマです。 

この2本の作品は2013年のコンベンションで発表されたものですが、 セルの縁の部分が映り込んでいます。区切られた模様の反復になっています。 オブジェクトセルをミラーシステムを含む本体と別に作ったところに、微妙な距離ができて、映り込んだものと思われます。
今年のコンベンションで発表された作品は、そのあたりが改良されていました。 映像が連続して反射しています。

「ピーコックフェザー」は筒に孔雀の羽をデザインしました。

「ストロベリー」はイチゴの実と花が描かれた明るい雰囲気の万華鏡です。

そして「ウェディングローズ」は結婚のお祝いにふさわしい作品です。 

一般にターニングエンドの万華鏡の方が、回転させるという一工夫が必要なので、製作には技術と手間が必要とされます。 昔ながらの筒を回す万華鏡があったり、先端部が回るような工夫を施した万華鏡があったりするので、お店などで手に取る機会がありましたら、そのあたりにも注目して、万華鏡を楽しんでいただければと思います。

 

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キルトショウ 

2014-09-18 16:46:38 | 万華鏡ブログ

前々回ご紹介したナップ夫妻(トワイライトII) に捧げた作品として、スティーブン・ホプキンスさん、シェリー・ゴルバさんご夫妻が発表した作品、「Quilt Show キルトショウ」です。 外観もナップ夫妻の作品に少し似ているように見えます。

実際のところ、木部は12枚の細い板を組み合わせて丸い筒にしています。 同じテーマで、さまざまな木材を使って、表情の違う作品をつくりあげました。この作品も木目が大変美しく、きれいに磨き上げられています。
アイホールとセルを囲む黒い部分は木材を加工しています。

シェリー・ナップさんはキルトの作家としても活躍なさいましたが、彼らは、そのシェリーさんのキルトの模様を万華鏡に表現しようと考えました。

黒いラインはいろいろな布をパッチワークした様子を表しています。 ミラーシステムにマスキングという手法でこのラインを生み出しています。

オイルセルにはバーナーワークによるガラスオブジェクトが組み込まれていますが、その中に1-2個、シェリー・ナップさんのオリジナルオブジェクト"ルチーニ" というビーズが入っています。

ブルーとイエローの組み合わせの中に、そのオブジェクトを探すのも楽しいですね。 この写真では白と黒のビーズがそれです。
先端部の回転も滑らか、映像もくっきりと見える高品質の万華鏡で、次から次に生み出されるキルトの模様を楽しみます。

 

 

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夢ボール

2014-09-17 22:46:24 | 万華鏡ブログ

東京・渋谷のBunkamuraで開催中の万華鏡展から、若林寛さんの作品です。 仕掛けと素材の面白さで大きくてユニークな作品を数多く手がける若林さんの作品が入口付近に展示されていました。 
このほんわかと明るいオブジェクトは、遠目には透き通った水晶球のようで、古びた金属風に仕上げた万華鏡の筒、取り付けられた木製の渋い色の台座とあいまって、占い師の前にあってもおかしくない雰囲気です。

近づいて見ると、表面に白い繊維を樹脂で固めたような大きなボール状のオブジェクトです。若林さんに伺ったところ、ペットボトルをちぎって穴をあけたり、溶かしたリした破片をくっつけて、直径20cmのボール状にしたものだそうです。
底の方にフルカラーのLED を内蔵し、当たる光が色を変え、光を通過させて、不思議な雰囲気を醸し出しています。
2ミラーシステムで、先端にダイヤカットのクリスタルを吊るして、揺らぎが出るようにしています。

今日の運勢はどうでしょうか? バラ色に輝いていますが・・・

若林さんの説明を引用すると、「淡雪のように実体のないボールの質感を両手で感じながら少しずつ回転して見ます。映像は薄氷の貼った水面を思わせるような表現」とのこと。 白い繊維状の部分がレースのようにも見え、色のラインがアクセントになっています。きれいなシンメトリーも気持いいですね。

不思議な世界を演出するこの作品は、「夢ボール」というそうです。 

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トワイライト Twilight II by Randy and Sherry Knapp

2014-09-16 10:07:16 | 万華鏡ブログ

日の名残りのある黄昏時、暗くなる前のほのかな明るさ、あるいは夜明け前の薄明・・・そんな意味のある「Twilight II ( トワイライトII)」という作品です。 
ランディー&シェリー・ナップ夫妻のプロダクションシリーズ 「Mandala Series (マンダラシリーズ)」の第5作目として今年発表されたものです。

「トワイライトII」 となっているのは、彼らのごく初期の作品 「トワイライト」のテーマを、現在の彼らの表現で生み出したものだからです。
マンダラシリーズは、ナップ夫妻の映像世界を、手持ち型の作品で豊かに表現するシリーズで、質の高さもあり、また限定版のパーラータイプなどに比べて価格も控えめなので、コレクターにとっては嬉しい作品です。

質の高さは覗きやすさにも通じます。 たとえばアイホールは少し掘り下げた位置にありますから、目をアイホールに近付けやすく、またそうすることで、外部からの光の侵入が防げるので黒い背景に浮かび上がる映像をきれいにとらえることができます。

一方オブジェクトセルは滑らかな回転で、気持ちよく回せます。 黒いローテーターもアイホールもローズエンジンという旋盤で施した彫り込みのラインが美しいですが、ローテーターの場合は滑り止めの意味もあり、機能とデザインが調和しているところが、ナップ夫妻ならではと思います。

この作品は無色透明なオブジェクトが通常よりも多く、その中でオレンジやグリーン、ブルーなどが躍動します。

黒い背景のオイルセルというのがナップ夫妻のスタイルで、初期の頃から追求し続けています。 ポイント数も2ミラー、5ポイント、6ポイントの作品が多いようです。 

イタリアのガラスロッドをバーナーワークで加工するのはシェリーさん。 ランディーさんもガラス工芸の技術があり、ガラスオブジェクトにこだわり続けるのも彼らのスタイルです。

透明、半透明、細いライン、煌めき・・・いろいろな要素を組み込んで黒い背景に浮かび上がる映像美は、ゆっくりと流れて変化し続けるところが何といってもその醍醐味です。
美しい映像に、人生の黄昏どきもこうありたいと思ってしまいます。

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色を織る ― 羽石茂さん・泉さんの万華鏡

2014-09-12 22:43:04 | 万華鏡ブログ

今日から始まった東京・渋谷 Bunkamuraでの「万華鏡展」に伺いました。 国内外のたくさんの万華鏡作品を手にとって楽しめる素晴らしい万華鏡展です。 毎年秋の恒例となった万華鏡展ですが、出品数でも、来場者数でも最大級ということで、初日からにぎわっていました。 主催者のご了解を得て撮影させていただきました。

その中から、羽石茂さん・泉さんご夫妻の作品をご紹介します。 最初の作品は「アルシオーネ」 その意味はすばる星団の中でひときわ輝いている星の名前だそうです。
大きな覗き口からは、片目を閉じなくても広い視野の映像が見えています。 広すぎて私のカメラでは全景をとれませんでしたが・・・

一方に目を転じると、色をまとった柱の周りに細かい曼荼羅模様が展開します。 この色をまとった柱はミラーシステムの一部に工夫をして生み出され、オブジェクトの色を映し出しています。 鏡とは違った素材で、反射の度合いが違っているため、柔らかい色になっているそうです。

反対側に目を転じると、その柱が3本見えています。 曼荼羅映像が細かく重なりあい、また違った色模様です。 さまざまな色の糸を紡いで美しい模様の織物に作り上げたような映像にすっかり魅せられました。 
この写真はオイルセルから生まれた映像ですが、セルは交換できるようになっていて、ドライセルも用意されています。 

次は「月の響」(つきのね)シリーズの作品です。 ステンドガラスの造形と個性的な装飾ハンダの模様が目を惹きます。

ベースやスタンド部分までステンドガラスの技法で作られた一体感のある美しい外観です。

ライトが内蔵されていて、スイッチ一つで幻想的な世界に浸ることができます。 

次も「月の響」シリーズの作品ですが、こちらは独特のミラーシステムを使って、覗き口が3か所あります。

ひとつのミラーシステムながら、3つの映像を見せるところが珍しい作品です。 その一つです。 美しいですね。

オブジェクトセルはドライとオイルで3個用意されていて、交換して楽しめます。 また内蔵のライトの種類も替えられるので、さらに多彩な映像表現を楽しめます。

泉さんの創られるオブジェクトセルは、とても個性的です。 ガラスだけでなく、質感の違うリボン、糸など繊維系のオブジェクトを効果的に取り込んでいます。  光を受けて強く輝くものと柔らかく輝くものが組み合わされることで、引き立て合うのだなと感じました。
次の一瞬で浮き上がる色が変わり、違う世界を展開して見せる万華鏡の面白さを、お二人で創り上げているのが素敵ですね。

 

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カレイドリリー 

2014-09-08 14:40:21 | 万華鏡ブログ

久しぶりの更新となりました。 今日は新進の万華鏡作家、兼古麻衣さんの「カレイドリリー」という作品をご紹介します。 この作品は高さ9cmにも満たない小さな万華鏡ですが、美しく展開する映像が魅力的な作品です。
ガラス製の筒の内側に挟み込まれたレースが優しい、優雅な印象を与えます。

小さなオブジェクトセルの中には、これまた小さな、手作りのガラスオブジェクトが見えています。 形や色味を工夫し、きらめきのあるメタルオブジェクトをちょっと加えて生み出された8ポイントの映像は、想像以上に華やかで変化に富み、大きな喜びを与えられる気がします。

2ミラーシステムの第3面に少しだけ反射する素材を使っているので、光の当たり具合によってオブジェクトの色が柔らかく曼荼羅模様の周りを飾ります。

 

ボディーの下地の色と、オブジェクトの色合がコーディネートされているので、何種類かのヴァリエーションがあり、お好きな色合いを探す楽しみもあります。

小さな万華鏡というのはそれなりに製作に手間と技術が伴うものです。 焦点距離を考えると覗き口にレンズは欠かせません。 小さなオブジェクトから、いかに魅力的な映像を作りだすかという大きなチャレンジもあります。 
いろいろな工夫を重ねて生み出された小さな万華鏡は、軽くて持ちやすく、身近に置いていつでも楽しめます。
この万華鏡を覗いて、日々の生活の中に幸せな時間を見つけてくれたら、作家さんの本望だと思います。  

兼古麻衣さんは9月12日から23日まで東京、渋谷のBunkamura Gallery で開催される万華鏡展で初出品なさるそうです。 

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