万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

万華鏡の新しい映像表現手段

2007-12-30 20:59:17 | 万華鏡ブログ
今回の映像は、美しい万華鏡映像を展開するカレンダーの表紙です。I.K.A.国際万華鏡協会が協力、緒方和子さんが監修して、株式会社トッパンプロスプリントが独自の技術で、製作したアルミ蒸着転写紙「アルグラス」に印刷を施し、作品化したオリジナルカレンダーだそうです。私の写真ではあまりはっきりとはわかりませんが、実はこれ、結構凄い素材であり、印刷技術だと思います。
内容は、2ヶ月ずつ、計6人の作家さんによる万華鏡の内部映像それぞれ1枚(この表紙の図案とは全く別の映像です)を選んで、メタリックな質感の紙に、ヘアライン加工や、見る角度によりさまざまな反射を見せるホログラム加工を施して印刷したもので、通常の写真よりもさらに、実際の万華鏡の映像表現に近づいた表現方法に思われます。万華鏡を覗いたときに私達が感じる微妙な色の濃淡、光に方向による見え方の違い、輝き方の違い、奥行きなど見事に表現されていて、一瞬の表情を捉えた写真ではありますが、変化を感じることができるから不思議です。万華鏡映像の妖しい美しさが捉えられたこれらの写真を見て、万華鏡アートの新しい表現だなあと思いました。

取り上げられた作品もこの印刷表現にふさわしい品揃えですし、一つ一つ本体の写真と、丁寧に作品の魅力を伝える解説(I.K.A.国際万華鏡協会・緒方豪さんによるもの)が付いており、万華鏡の魅力を伝える意味でもとても素晴らしいカレンダーだと思いましたので、このブログで取り上げさせていただきました。株式会社トッパンプロスプリントのお客様に進呈されるということですが、このカレンダーを見て、万華鏡に興味を持つ人がさらに増えるのではないかと思います。
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2007年を振り返って(2)

2007-12-26 12:54:32 | 万華鏡ブログ
今年は新たに万華鏡の本が2冊出版されました。照木公子さんの「作って遊ぶ魅惑の万華鏡」は、万華鏡に関するいろいろな情報が盛りだくさんの本。作家ものは日本人の作品に限って紹介されています。そして緒方和子さんの「魅惑の世界 万華鏡、十年間の軌跡」は全国各地で万華鏡展を開催してきたギャラリー・ヴィヴァンさんの活動や内外の作家さんからのメッセージ、作品の紹介などこちらも万華鏡に対する思いのたくさん込められた本です。
そしてNHKの「美の壺」をはじめ、テレビ番組の中で、作家さんや作品が取り上げられることもしばしばあり、その影響で万華鏡展や専門店に足を運ばれた人も多いと聞いています。
日本には数は限られていますが、各地に万華鏡を楽しめる場所があります。万華鏡専門店には最新の作品もあり、美術館には珍しい作品や大型の作品もあります。また、デパートなどたくさんの人が集まる場所での万華鏡展示会は、日本特有のものです。アメリカに比べて、一度にたくさんの作品を見れる場所が日本のほうが多いのではないかと思うくらいです。
万華鏡がアートとして、またコレクションアイテムやプレゼントとして知られるようになりつつあることはとても喜ばしく、また日本の万華鏡の水準を高める効果がありました。これから先、どんな展開を見せるのかとても楽しみです。
今日の映像は日本でも人気のあるルーク&サリー・デュレット夫妻の「ラプソディー・イン・ブルー」です。
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2007年を振り返って(1)

2007-12-25 23:08:29 | 万華鏡ブログ
2007年も残り少なくなってきました。振り返ってみると今年は万華鏡的には結構いろいろなことがあった年だったような気がします。一番印象的だったのは、独自の作風を持った日本の作家さんが増えて、多くの作品を発表なさるようになったことです。個展、グループ展など、ひと月に何回も開催された月もありましたが、それぞれに興味深く拝見でき、嬉しいことでした。専門店で扱われる日本人作家さんの作品も飛躍的に増えたことからも、日本育ちの万華鏡が生まれ、万華鏡ファンに喜ばれていることがよく分かります。そして、それらが日本だけでなく、海外でも認められてきていることが中里保子さんの海外での受賞という結果となって表れました。
日本人らしい色合い、丁寧な仕事、和のテーマ、伝統工芸を取り入れた作品、精密機械のような仕組み、新しい試みへの挑戦など、さまざまな視点から日本の万華鏡は進化していると思います。
この映像は今年大活躍だった作家さんの一人、中里保子さんの「花暦」の内部映像です。
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万華鏡映像の素

2007-12-21 22:31:15 | 万華鏡ブログ
万華鏡の内部に展開する映像にはいろいろな個性があります。作家さんによるそれらの個性こそが、作家モノの万華鏡の醍醐味と言っても過言ではありません。今回の映像写真はみずあめやさんの少し大きめのシリーズOW-7「鉄線」です。このシリーズのオブジェクトケースはガラスのワンドの中に、オイルとさまざまな「映像の素」が入っています。しかし、一つ一つのオブジェクトは強い個性を主張せずに、「素」に徹している感じがします。組み合わされて映像になった時に、初めて曼荼羅模様としての個性が発揮されるところが、みずあめやさんの映像の特徴だと思います。織物でいえば、縦糸と横糸が幾重にも重なり合って重厚な色模様を演出するように、絵画ならたくさんの小さな色の点が光と模様を浮き上がらせる点描画のように。
個展のときに、たくさんのワンドだけが入った箱を拝見しましたが、とてもきれいでしたので、外側のデザインにふさわしい映像効果をもたらすオブジェクトの調合はきっと楽しいだろうなあと勝手に思いました。きっと作家さんも万華鏡に命を吹き込む大切な過程を楽しんでいらっしゃるのではないでしょうか。そして見る人の目と心を惹きつける作品が出来上がるのですね。
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エミール・ガレ風の万華鏡

2007-12-20 23:33:28 | 万華鏡ブログ
パートドヴェールという技法で作られたガラスの筒には葡萄の模様、覗き口のところには葡萄の葉をあしらい、装飾はんだで植物のつるをオブジェクトセルの周りに這わせたエミール・ガレ風のこの万華鏡はどなたの作品か分かるでしょうか。 
このところ何回かご紹介した和の万華鏡の作家、溝口好晴さんの作品です。日本の伝統工芸に加えて、ガラスの万華鏡にも挑戦なさいました。石膏を割って出来上がってきた筒の印象から、このようにアール・ヌーボーのデザインで万華鏡を創ったそうです。個展の会場では、ガラスの作品はこれだけだったと思いますが、源氏物語の世界から生まれる万華鏡も、19世紀末にヨーロッパで一世を風靡したアートを取り入れた万華鏡も、どれも溝口さんの世界をごく自然に作り上げていました。さまざまな工芸技術に通じていらっしゃる作家さんだからこそできる幅の広さですね。内部映像は、光を通して淡いピンク色になる貝や白い珊瑚などのオブジェクトが生み出す6ポイントの、やさしい印象の世界を展開します。
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溝口好晴万華鏡展から(3)

2007-12-17 17:26:57 | 万華鏡ブログ
この万華鏡は源氏物語シリーズと同じように、金箔や銀箔を使った美しい紙に、溝口さんの手になる般若心経の書を重ねています。この万華鏡は蓋を取ると、覗き口があり、万華鏡であることがわかりますが、この形は経典を入れる経筒を模したものだそうです。 平安時代の終わり頃に経典を経筒に収めて地中に埋めるということが行われ、その経筒がこのような形をしていたと説明していただきました。ありがたいお経というだけでなく、その背景や歴史までその表現に取り込んでいるところに感心してしまいました。
この作品だけでなく、溝口さんの作品は2ミラーシステムが多く、その中でも、今回の個展ではオイルタイプが多く展示されていました。万華鏡を覗くアイホールの位地を中心に置くために、覗き口は小さめですが、筒の奥にきれいなバランスで映像が展開します。オブジェクトはガラスのほか、天然石、珊瑚、貝、真珠など、自然の素材を多く取り入れます。さらに漆に混ぜる顔料の粉など細かい粒も使われています。宮古島から取り寄せているという貝殻は小さくて美しい形をもち、透き通るほどの薄さで、光を通して淡い色を演出。珊瑚や真珠の立体感のあるオブジェクトと組み合わされて、静かで深みのある映像を生み出します。ラピスラズリの青に金をあしらったオブジェクトなど独特の表現も素晴らしいと思いました。
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溝口好晴万華鏡展から(2)

2007-12-14 21:55:27 | 万華鏡ブログ
溝口好晴さんは日本古来の伝統技法を用いた新たな万華鏡世界を目指しています。そのまま置いても、日本的な空間や場所に、昔からあったように違和感なく存在する万華鏡。この写真の「女御茶入」も茶入れの姿を崩さず、蓋を取ればそこに覗き口があることに初めて気付くでしょう。どの作品も、覗き口の見え方や、オブジェクトセルの組み込み方など、自然に、美しくしつらえてあり、伝統の形を大切になさっていることがよく分かります。
素焼きの陶器に漆、金箔を施したうえに、平安時代の女性の姿を描いた、手の込んだこの作品も源氏物語絵巻をテーマに製作されたものです。
前回ご紹介した、源氏物語を「書」で表現する万華鏡、そしてこの「絵」で表現する万華鏡、どちらも究極の「和の万華鏡」ですね。
源氏物語からたくさんのテーマを見つけ、その表現は、外部も内部もまだまだ新たな境地や展開がありそうで、楽しみです。
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溝口好晴万華鏡展から(1)

2007-12-12 23:55:21 | 万華鏡ブログ
西宮市のギャラリーストラッセで開催されていた溝口好晴さんの万華鏡展<源氏物語絵巻>に伺いました。 源氏物語をテーマに和の万華鏡を製作されていることは伺っていましたが、それらを拝見するチャンスに恵まれたのはラッキーでした。今回は源氏物語の作品を含め、さまざまな工芸技術を駆使した素晴らしい作品が展示され、新たな境地を開拓し続ける創作活動を、十分に見せていただきました。豊かな表現をこのブログでもご紹介したいと思います。
この写真は源氏物語の万華鏡十数点のうちの三点。「源氏物語の中に表現されている彩りをイメージし、各帖ごとにその色を筒に表し、物語の流れを映像で表現している」との説明です。各帖の物語のポイントとなる歌を選んで、溝口さんが自ら書かれた素晴らしく美しい文字で筒を飾っています。金箔や銀箔を配した美しい背景に文字を重ねる方法は、作家さんが失敗の中から発見した技だそうです。また色の部分は、漆に使われる顔料の粉を使っているそうですが、ざらっとした質感に趣があり、色合いも魅力的です。手で触ったり、筒を回したりしても全く問題ないほど、しっかりと耐久性のある仕上がりです。姿の美しさ、自然さを大切になさっている溝口さんの万華鏡は、細部のデザインにもそのこだわりを見せます。このシリーズのオブジェクトセルは奥ゆかしく竹ひごの中に収められていますが、源氏物語絵巻の表現に欠かせない御簾を連想してのデザインだそうです。
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赤津純子さんの作品展から(3)

2007-12-11 20:35:55 | 万華鏡ブログ
今日ご紹介するのは「ジュレ」という作品です。初めて赤津さんの作品を拝見したのが2005年仙台万華鏡美術館主催の「スリーセンス万華鏡コンテスト」でした。視覚、聴覚、嗅覚に心地よく働きかける万華鏡というテーマに多くの方が応募なさいました。その折の出品作がこの作品であり、それ以来作り続けてきた赤津さんの、万華鏡に寄せる想いのこもった作品だと思います。
透明なガラスの筒を通して中のドライハーブや貝殻など自然の恵みを装飾として見せています。ゼリーで寄せたようなイメージで、「ジュレ」というタイトルです。
先端の丸いものは優しい響きのオルゴールボールで、万華鏡を回転させると微かな音が鳴ります。覗き口の側には小さな穴があり、そこから中のハーブやアロマオイルの爽やかな香りを感じます。透明な筒の中に組み込まれているのは通常の表面反射鏡を組み合わせたものではなく、長いプリズムなので、外側の透明なガラスを通してみても全く不自然さがありません。オブジェクトセルはオルゴールボールの下の部分で、ドライハーブやジルコニア、ガラスビーズなどの入ったドライセルです。側面に使った色ガラスの効果で、万華鏡を覗きながらまわすと、光の当たり具合でその色を取り込み、背景の色が変わる面白さもあります。当時の出品作の中でも見た目は小さくて、シンプル、普通っぽくておとなしい印象でしたが、実はいろいろな工夫やアイディアを閉じ込めた、とてもユニークで不思議な魅力のある作品であると評価された万華鏡です。
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赤津純子さんの作品展から(2)

2007-12-06 20:23:46 | 万華鏡ブログ
昨日ご紹介した赤津純子さんの「パヴォーネ」(孔雀)の内部映像です。ワンドに対してミラーシステムを斜めに取り付け、2ミラーの映像を斜めに広げる効果を持たせています。ガラスのレース棒を細く引いたオブジェクトを多用した細長いオイルワンドは、中心から放射線状に大きく広がる映像を生み出し、孔雀が羽を広げたような華やかな映像効果を出しています。時折見えてくるパールの粒も羽の模様になって見えます。
ミラーシステムの第3面を、スランピングを施して曲線になった透明な色ガラスを使うことで、映像の縁がカーブを描いています。周囲にも緑色の輝きが生まれ、薄い箱の中に思いがけない映像の広がりを楽しむことができます。
繊細なオブジェクトのひとつひとつ、丁寧な装飾はんだ、精密なミラーの組み方など、赤津さんの手になる仕事の美しさがとても印象的でした。
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