万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

Homo Faber 2024

2024-09-09 17:42:46 | 万華鏡ブログ

Homo Faber 展はイタリア、ベネチアで9月1日から30日まで開催されている現代のアート・クラフト展で、世界中のアーティストが参加し、クラフトマンシップを見せる作品展です。 中里保子さんの万華鏡作品が展示されることになり、この機会にベネチアを訪問し、どんな展覧会なのか見てきました。ベネチアのマルコ・ポーロ空港に到着すると、さっそくこのような看板があり、ワクワクします。

会場はサン・マルコ寺院の向かいのサン・ジョルジュ・マッジョーレ島です。サン・マルコ広場から船で5分ほど。8月31日は出展者とゲストのためのプレイベントがあり、中里さんとふたりで参加しました。

入口のこのカラーの組み合わせが今回のロゴにも使われています。シンプルでおしゃれでイタリアっぽいですね。

展覧会の構成は、”The Journey of Life” 人生の10のステップをテーマにした10か所の展示。

”Birth”、”Childhood”、”Celebration”、”Inheritance”、”Love”、”Journeys”、"Nature"、”Dreams”、”Dialogues”、”Afterlife”をテーマに敷地内の10か所の建物でまったく異なった雰囲気でデザインされた会場です。

会場の建物は、サン・ジョルジュ・マッジョーレ教会の施設。庭と回廊をめぐって散策しながら、展示を見ます。
外は強い日差しでまぶしく、木陰がほっとする場所でした。

 

回廊には、同じテーマで創られたいろいろなアーティストの作品群。最初の”Birth” の展示が始まります。

次が、子供時代(Childhood)を表現する部屋で、多様な作品が並び、そこに万華鏡も含まれます。出展の招待を開催の財団から提案されたとき、中里さんはどんな作品がふさわしいのか、とても悩まれました。現代のアーティストが出展する展示会ですから、子供向けではなく、大人の中の子供時代への郷愁を感じさせる作品がふさわしいのではと考えました。部屋はブルーで天井と壁をデザインしています。

会場に入ってみると、ドールハウスと動物フィギュアの間に万華鏡がありました。

中里保子さんの、”Mandala”、”Katagami”、”Haku”、”Rin”、そして山見浩司さんの”Gozzira” です。

多様な素材や種類の作品群の中で、われらが万華鏡は静かにたたずんでいました。 展示作品に触ることは憚られるのは理解できますが、触って覗いて万華鏡の面白さ、美しさを体験をしてほしいなと心から願います。作品には作家名、国名、(解説用)QRコードがついていますが、万華鏡と一目でわかる人がいるかなと心配になりました。ユニークで特別なこのような展示会において、万華鏡の特殊さをいつも以上に感じ、何とか万華鏡作品への理解を深めてほしいと思いました。

次の部屋は”Celebration” がテーマ。 まったく違う展示方法で大きな鏡のテーブルにガラスの食器や造形作品などが飾られていました。

”Love”の展示室には多彩な花のオブジェが並びます。

”Nature ”の展示室から。

”Dreams”の展示室は光と水の演出を駆使して、顔のない像が並び、周囲にいろいろな顔のマスクの展示がありました。

最後の”Afterlife”から。

だいぶ端折りましたが、最後の展示室まで回った後、教会の鐘楼に上り、会場を見渡すことができました。

そして対岸のサンマルコ寺院、ドゥカーレ宮殿などのベネチアの街の景色を楽しみました。

日常的な機能性から、目を見張る装飾的なクラフトまで幅広いHomo Faberの展示会は、今年で3回目(2年ごと)だそうです。その根底にあるのは、人生を豊かにする創造力とそれらを生み出す作家たちを支え、育てることでより良い世界にしていこうとする精神です。図録を読み、後から思い返してみると、人間の生み出す豊かな作品が、豊かな経験を与えてくれるなあと実感します。素敵な機会を与えてくれた中里さんにも感謝です。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オブジェクトの足し算 ー 高林千稔さん、細野朝士さんのコラボレーション作品ー

2023-10-31 17:21:14 | 万華鏡ブログ

高林千稔さんによるパーラータイプの万華鏡 On the Earth です。
黒檀の木目が美しく、なめらかな木肌が静かな光沢を見せています。底部だけ使っている明るい色のかりん材と真鍮のリングがアクセントになった、すっきりとしたたたずまいは、内部にどんな映像を見せてくれるのか、期待させます。
先端部はいつもの作品と違っていて、外からは内部のオブジェクトが見えません。 滑らかに回転する先端部は、細野朝士さんとのコラボレーションで、偏光素材とガラスオブジェクトとの協演による独特で鮮やかな色模様を楽しめます。

 

高林さんのガラスオブジェクトを取り入れた細野さんのステンレススチール製の偏光万華鏡も内部の映像がとても面白く魅力的だと思いましたが、今回は逆の取り組みで、また違った魅力がありますね。

映像の変化が大きくて、とても派手な色が見えることもありますが、私はこのグラデーションのある微妙な色模様がユニークでいいなと思います。

光と遊ぶような偏光万華鏡には、明るい光がふさわしく、光が足りないときに使えるよう、この作品にはスマートなスタンドライトがついています。
作家さん同士がお互いをリスペクトしつつ協力して制作する作品は、万華鏡好きな人ならどれも面白くてワクワクすることでしょう。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中里保子さん 20周年記念作品集

2023-09-13 22:58:12 | 万華鏡ブログ

中里保子さんが万華鏡作家として20年の節目を記念して作品集を発行しました。 この作品集が素晴らしいのは中里さんが万華鏡に向き合う時と同様に、作品集の制作にも全身全霊で取り組まれていたからです。その熱意が写真家の方、編集の方、印刷の方をも巻き込んで、結実しました。私も英文作成の部分で関わらせていただきましたが、中里さんの文章を読みこむことで、彼女の考えや作品への想いが伝わってきて、理解を深めることができたことは大きな喜びでした。私にとっても25年ほどになる万華鏡と向き合った人生の中でずいぶん長い間中里さんという作家さんを見てきたなあと、この作品集に関わって改めて感じ入る次第です。そして作るのはからっきしダメな私ですが、万華鏡制作に関してたくさん質問させていただき、本当にいろいろなことを教えてもらいました。感謝しています。

初めて中里さんに会ったのは、2005年アメリカでの万華鏡公募展。陶芸家、辻優子さんとのコラボレーションによる時計の万華鏡は、そのユニークな外観と繊細な内部映像が強く印象に残りました。日本にもこんな作家さんがいるんだとちょっと驚いた出会いでした。次に印象的だったのはアメリカでのBrewster Kaleidoscope Societyの コンベンションで「秋草」が受賞したとき。 あの作品は本当に美しくて、和のテイストの表現が秀逸で、内部映像も魅力的だったので、日本の仲間として受賞は誇らしく思いました。

Brewster Kaleidoscope Society のコンベンションでは毎回新作の発表があり、中里さんは毎年未発表の大型作品を抱えてアメリカに行きました。出発の直前まで眠らずに手を加えたこともしょっちゅうで、成田で顔を見るまで心配したものです。私もアメリカに着いてから作品を見せてもらうのが楽しみでした。それらのいくつかは People’s choice awardを受賞しましたが、目の肥えた万華鏡コレクターやギャラリーの方、作家の方の投票で決まる賞なので、とても価値のある、記録するべき賞だと思います。その意味でもそれらの作品を再び見ることのできる作品集で良かったなと思います。

素晴らしい作品の数々をすべてここではご紹介できませんが、私が好きだった作品を2点ほどご紹介します。この「秋嶺」は個展で拝見したものですが、アンティークガラスの美しい表現が素敵でした。まだガラスのこともあまり知らず、制作のご苦労など考えが及びもしなかった私はただそのデザインとユニークな表現方法に素敵だなあと感激したのでした。今回この部分の文章を中里さんが編集の方の協力を得て推敲したものを読み、説明を聞いて、初めてその制作のご苦労を知りました。

これは神楽坂のグループ展で拝見し、素敵だなと思った「ローズ・ガーデン」です。
シリンダーを水平に回すオブジェクトの作品で、「哲学の小径」や「はなみずきの頃」も大好きなのですが、これはガラスの美しさと手の込んだ金属の部分の造りがすごくて、薔薇の香りを感じるような万華鏡だと思いました。また本で出会えて嬉しいです。

日本の伝統工芸、伊勢型紙を取り入れた作品群は、その渋い魅力を現代的に万華鏡に取り入れました。そのセンスが素敵でした。

万華鏡は外観だけでなく、内部映像があってこその作品なので、どのようなミラーシステムで、何を映し出すかが作家さんの個性の見せどころです。小さな覗き口から覗くのもあるし、大きな覗き口から両目で覗く作品もあります。中里さんの見せたかったものを改めてこの本で追体験しながら鑑賞しました。どの作品にも中里さんの作家としての想いが込められていることや今までの経験をご自身の言葉で語られています。お人柄まで伝わってくる素敵な本です。

そして必見の素敵なおまけがあります。受賞作品のページにあるQRコードを読み取ると、なんと内部映像を含めた動画を見ることができます。これがまた綺麗で嬉しくなります。たくさんの方に見てほしいです。

(この本は本屋さんでは買えませんが、万華鏡展、万華鏡ギャラリー、万華鏡ミュージアムなどでご覧になれます。 ご購入のご希望は中里さんのウェブサイトのBOOKのページから、あるいは上記の場所でもお求めになれると思います。私のオンラインショップでも販売いたします。税込み6600円です)

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

MIKIOさんの万華鏡

2023-04-27 10:14:55 | 万華鏡ブログ

昨日に続いて「心ときめく万華鏡展」で出会った作品をご紹介します。展示スペースはMIKIOさんの色鮮やかなボディーの作品がたくさん並び、ポップな作品というのでしょうか、あたりが明るく輝くような感じでした。現代的な万華鏡で新しい雰囲気です。数年前から時々拝見する機会はあったのですが、このブログでは初登場です。

アクリル製のボディーは軽くて覗きやすい、透明感やきらめきを表現しやすい良さがあります。

鮮やかな色合いの作品が並ぶ中、選ぶのは大変でしたが、シルバー、ブルー、グリーン、パープルの組み合わせが気に入ったこの1本にしました。万華鏡はいくつかのパーツを組み合わせて創りますが、一体感のあるきれいな外観にするために丁寧な仕上げがされているなと感じました。

オブジェクトセルの中も外からよく見えて、どんな映像になるのか楽しみになります。

昨日ご紹介の作品とは対照的にビビッドな映像が特徴です。

中心の7ポイントの映像はくっきり。そしてその周囲はオブジェクトの色をかすんだように柔らかく映し出します。

2ミラーシステムでも視野全体に広がる映像ですが、実際に見るともう少し立体感があり、周囲の色が筒の中を立ち上ってくる感じです。

濃くなってきた緑と紫色の花の組み合わせみたいな映像に、何となく今の季節を感じるなと思いました。


MIKIOさんのの遊び心も感じられる作品の数々・・・もっと覗いてみたいと思いました。

このグループの作品展はまだ開催中ですが、6月6日から11日までは世田谷美術館区民ギャラリーBでも仲間を増やして開催されるそうです。

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吏永子さんの万華鏡

2023-04-26 20:26:05 | 万華鏡ブログ

4月25日から開催中の「心ときめく万華鏡展」~Pua Lani からのおくりもの~に伺いました。松本よしこさん、たけおさんご夫妻の万華鏡教室から育った作家さんたちのグループ展です。日本では作家さんが指導する教室がいくつかあり、万華鏡を創ってみたい!と思う方たちが技術を学び、オリジナリティを生かして頑張っています。 20数年間万華鏡を見てきましたが、ますます広がるその世界に感動するばかりです。 今回は7名の作家さんが出品なさっていましたが、それぞれが表現したいものが伝わってきました。

全部の作品をご紹介できず申し訳ありませんが、今日、明日と2点をご紹介したいと思います。

上の写真は吏永子さんの「Juliet ブルー」という万華鏡です。透明なガラスの下に刺繍を施した立体感のあるリボンを置いて筒のデザインとしています。ブルーグレイとゴールドの組み合わせが目を惹きました。 装飾はんだも施され、小さいながら重厚感もあるクラシカルな雰囲気です。

オイルセルの中にはブルーやピンクのパステルカラーのガラスオブジェクト。そして映像はソフトで優しい4ポイントが流れるように展開します。

透明感のあるガラスと透き通らないけれど光を通すガラスを組み合わせて淡さときらめきを演出します。

2ミラーシステムの第三面に当たる部分は中心映像の周囲をブルーグレイに見せて、外観との統一感もあります。

私の写真ではオイルのきらめきと揺らめきが表現できていませんが、実際はゆったりと動くオブジェクトの生み出す色模様の変化が素敵です。覗いていて優しい気持ちになれる万華鏡です。 

吏永子さんの作品をじかに拝見するのは初めてでしたので、このブログでもご紹介したいと思いました。 インスタグラムなどで拝見すると、多彩なデザインで制作なさっていることがわかります。 またご紹介したい次の作品に出会えることがきっとあると思います。

心ときめく万華鏡展   

2023年4月25日~5月8日まで HANSEL &GRETEL 成城本店にて開催中。
小田急線成城学園駅すぐ 成城コルティ2F  

~Pua Lani からのおくりもの~

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の見てきた万華鏡の世界 #3

2023-03-31 09:57:59 | 万華鏡ブログ

アメリカの万華鏡の歴史の中で大活躍し、この数年、創作活動から離れて行った作家も少なからずいる。惜しまれながらも新たな生き方を模索している人、高齢になり制作活動を控える人。
彼らの築いた時代、創った万華鏡はまだ輝きを失っていない。彼らの時代を見てきた私はその作品の素晴らしかったこと、彼らのオリジナリティを、改めて伝えたいと思う。

1998年ブリュースター・ソサエティの万華鏡コンベンションに初参加して以来、コロナ禍で中止になる前まで、毎回アメリカの各地に赴き、現地の作家さんやコレクター、ギャラリーの方々と交流してきた。 アメリカの美術館、アートセンターで開催される万華鏡展も見に行った。コージー・ベーカーさんのお宅で、ホーム・ギャラリーを見せて頂き話を伺ったこと、ジュディス・ポールさんのお宅でコレクションを見せて頂いたことも大きな思い出だ。


コリア工房、デュレット工房、カラディモス工房など訪問して制作の現場を見せていただき、作品への理解を深めることができた。 万華鏡の店を訪ねて、見たことのない作品を見せてもらい興奮した。

アメリカが現代万華鏡の本拠地だったと思う。少しでも日本とアメリカの万華鏡界に貢献したくて ブリュースター・カレイドスコープソサエティのインターナショナル担当役員もさせていただいた。
そしていつしか日本でも万華鏡のコンベンションを開きたいと仲間内で話すようになった。
2017年、京都で万華鏡世界大会がついに実現した。それなりに大きなインパクトがあったのではないだろうか。 


日本では万華鏡を創る人がますます増えているのは喜ばしいことだと思う一方、日本の中だけで完結することなく、万華鏡を世界に発信し続けることに挑戦してほしいと願っている。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の見てきた万華鏡の世界 #2

2023-03-30 09:12:18 | 万華鏡ブログ

万華鏡を覗くのは個人的な体験だし、通常の万華鏡は同じ映像を皆で分かち合うことができないけれど、万華鏡を覗くと「ねえ見て!こんな風に見えてる!こんなにきれい!」と言いたくなる。覗いてびっくりし、笑顔になる人を見ることが嬉しかった。 
もっと知ってもらいたい。 おもちゃではなく、作家さんが創る素敵な万華鏡があること、紙筒ではないいろいろな素材の作品があること。覗けば予想を超えた色模様が展開することを。
そんな思いから、2006年「万華鏡の楽しみ、ガラス色の幸せ」というブログを始めた。
私の出会った作家、作品のことを皆さんに紹介できることが私の喜びだった。今までに1789回の投稿をしてきたが、すべて万華鏡についての写真付きの記事である。

最近では、作家さん自身がインターネット上に発信することが多くなり、また情報もあふれている。動画での投稿で万華鏡を紹介する人も多い。万華鏡にも時代の流れを感じるところだ。  (続く)

 

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の見てきた万華鏡の世界 #1

2023-03-28 20:56:55 | 万華鏡ブログ

この度ご縁があって、私の持っている万華鏡を京都万華鏡ミュージアムで展示する機会を頂きました。私は所謂コレクターではないのですが、現代の万華鏡に出会ってから二十数年たち、その過程でたくさんの作品と出会い、作家さんと出会うことで面白い経験を積ませていただいた気がします。そんなストーリーを絡めた展示にしたく、私の思いを綴った文章も会場に展示させていただきました。

以下はその内容です。数回に分けてこのブログにも載せることにしました。

 

私の万華鏡史は26年ほど前、アメリカの万華鏡から始まる。
翻訳のアルバイト先として友人に紹介された万華鏡専門店で出会ったのが、現代の万華鏡だった。 それは衝撃的な出会いだった。覗くと見たことのない美しい景色が存在していた。
任された仕事は、「カレイドスコープ・ルネッサンス」と題するコージー・ベーカーさんによる本やブリュースター・ソサエティの季刊誌を翻訳することだった。読み進むにつれてその世界の面白さ、奥深さに惹かれていった。

あの頃、万華鏡は輸入品だった。 アメリカで様々なアーティストが万華鏡アートに関わり、次々と作品を創っていたあの時代。コージー・ベーカーさんは作家たち、作品を扱うギャラリー、そしてコレクターをつなぎ、ブリュースター・ソサエティを設立し、万華鏡アートの大きなうねりを巻き起こした。1816年の発明により当時のヨーロッパで大きなブームを起こしたものの、その後すたれていた万華鏡がアートとして生まれ変わったこのうねりをカレイドスコープ・ルネッサンスと名付け、万華鏡の第一人者として皆をリードしていた。そのアメリカから輸入された万華鏡に日本人は驚いた。
子供の頃から知っているはずの万華鏡とは全く違うものだったから。
それは花火、それは宇宙、それは完結した中心を持つ円形の模様。素材も多岐に及び、デザインも、大きさも様々だった。いろいろな挑戦があった。 この時代の作品は、コージー・ベーカーさんの本に載っているが、その多様な魅力は現代の万華鏡界の礎となった。彼らの創造性を超えるのは難しいかもしれない。それほど斬新だった。

2000年代になって少しずつ日本でも万華鏡を創る人や、万華鏡愛好家のグループも生まれていた。 でも今ほどインターネットも普及しておらず、万華鏡の情報は相変わらず少なかった。           (続く)

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不思議な万華鏡展

2022-11-29 10:39:20 | 万華鏡ブログ

11月27日横浜市戸塚区にある高林千稔さんの工房に伺いました。 高林さんのオリジナルイベント「WEEKEND ACORNS 2」が佐藤元洋さんとかたおかきくよさんを迎えて開かれていました。私は高林さんが某万華鏡専門店でアルバイトをしていて、木工の万華鏡を創りたい!と言っていた時から存じ上げているので、今、作家さんとして活動中の彼を見るのはとても嬉しく思います。

彼の万華鏡に対するコンセプトはとても独自のもので、光へのこだわりがあります。灯火や白熱電球を光源にして楽しむ展示会は、やや薄暗く、普通だったら光が足りないと思われそうな環境ですが、それらの光源によってあきらかに万華鏡の見え方を変えるものです。光の種類、向き、強さ、揺らぎなどに反応する彼の創るオブジェクトやオブジェクトセルの素材の効果とあいまって、陰影や色合いが大きく変わることがわかります。 
彼の世界にひたって万華鏡を覗くのに心地よい空間づくりから、見に来た万華鏡好きな方たちの会話や作家さんとの会話も素敵な体験で、万華鏡の楽しみの提案という意味でも満喫させていただいた万華鏡展でした。

今回は佐藤さんやかたおかさんとのコラボ作品も数多く展示され、それらについての話を聞いたり、思いを語っている作家さんを見るのも本当に楽しかったです。それぞれをリスペクトしながら、コラボレーションの可能性を試しているのが面白かったです。そしてこれらの作品の多くは、熱心な万華鏡ファンの方のもとにお嫁入することがすぐに決まったそうです。

久々の高林さんの作品を何か記念にと思い、悩んだ末に選んだのがこの1点。ボディーの丸みを帯びたラインと、直線的に配置された表情の異なる木材の組み合わせが目を惹きました。

自然な流れで繋がるオブジェクトセルは、異素材のアクリルを丸みを帯び滑らかに、美しく仕上げています。

トップは白、サイドは透明で、透過する光を調節しながら見ると、色合いや陰影が変わって面白いのです。高林さんならではのガラスオブジェクトもきれいですね。

見えたのは陰影の美しいこんな映像です。

明るい光の下、写真を撮る・・・光と遊ぶ感覚を思い出させてくれました。なんか生き物のいるみたいな映像も。

この個展にいらしていた万華鏡ファンの方と、実は隣町に住んでいることがわかって、帰り道、ずっと万華鏡の話をしながら最寄りの駅までご一緒したことも素敵な思い出です。 きっとまたどこかの万華鏡展でお目にかかることでしょう。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手描きデザインが素敵な万華鏡

2022-10-01 21:39:16 | 万華鏡ブログ

先日まで開かれていたBunkamuraでの万華鏡展は、参加作家さんの数も多く、見ごたえのあるものでした。 まだ日本人の作家さんがあまりいなくて、ほとんどがアメリカからの輸入万華鏡だった頃、友人の誘いで万華鏡専門店の仕事をお手伝いしたのがきっかけとなり、それ以来ずっと万華鏡に関わってきた私としては感慨深いものがありました。

その会場で中里保子さんの作品群を拝見しましたが、今までとは違うデザインがとても印象的でした。作家さん自ら手描きの「ボタニカルガーデンシリーズ」は、ガラスに金と黒のペイントで草花を描いたものです。(写真はすべて作家さん自身が撮影したものを使わせていただいています。)

上の写真の作品はスタンドタイプで、3本の万華鏡が付いています。アイアンのスタンドもお洒落ですね。

3種類のセル、そしてミラーシステムもそれぞれに違って、たくさんの楽しみがあります。見える映像はそれぞれ次のような感じです。

ミラーシステムの違い、オブジェクトセルの背景の違い、中のオブジェクトの違いで全く雰囲気の異なる映像になっています。セルを回してそれぞれの変化を楽しみます。

こちらはお洒落な壜の万華鏡です。以前骨董市で求め、いつか万華鏡にしたいと思っていたとのこと。金色のペイントで素敵な作品になりました。実は、中里さんのもとには、いつか作品に生かされるはずの「気になった、お気に入りのもの」がたくさんあるようです。

次は手持ち型の作品です。

草木のデザインをアップした写真。装飾はんだの色も落ち着いた色合いにまとめました。

制作中の写真です。とても手が込んでいます。

初めて拝見した中里さんの万華鏡デザインですが、何年も前から少しずつ温めてきたアイディアだったと伺いました。いろいろな可能性と素材に挑戦し、オリジナルな作品を生み出してきたパワーが今回も伝わってくるような万華鏡だと思いました。そしてミラーシステムは2ミラー4ポイント。中里さんの4ポイントもとても美しいと思います。

 

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする