万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

万華鏡伝来200年記念巡回展

2019-10-30 22:26:58 | 万華鏡ブログ

このブログでは、作家の創る現代万華鏡のアートを多くの人に知ってもらいたい、万華鏡は大人の感性にも訴える魅力があることを、ずっと伝え続けてきましたが、この度そんな思いを分かち合う万華鏡作家を中心とした組織が立ち上げられ、表題の展示会を仙台、名古屋、東京で順番に開催しています。今日、東京の会場を訪れました。 一軒のお宅を訪ねる雰囲気で、居心地の良い展示空間でした。

この展覧会のためにデザインされた個性豊かな大作が並んでいます。

山見浩司さんが代表になっているこの組織は、Art Kaleidoscope Japan です。 これらは山見さんのBKSのコンベンション出品作の数々。中に隠された美しい映像は山見ワールド。

橋本伸子さん、野田麻里さん、香川千幸さんの作品。 それぞれプロフィールや作品の説明があり、作家さんの想いが伝わります。作品説明の右下にあるQRコードをスマートフォンで読み込むと、作家さんのプロフィールが示されます。(これは新しい!)

松田晃江さんの「花かんざし」。様々な素材に挑戦する作家さんで、今回はつまみ細工で真鍮の筒を飾りました。中も可愛らしい2ミラー映像が2種類。

生駒かずよさんは”きのこ愛”を万華鏡に表しました。どちらも覗くと繊細なガラスオブジェクトによる模様が見えます。

長谷川順子さんの「令和へ万葉集より」は平安の雅を表現し、新しい時代を祝う作品です。和の布を生かし、内部にはダイクロイックガラスでキラキラした大きな映像と、梅の花の映像の2種類が展開します。

中里保子さんの「fleur de cristal」は、大きなガラスの花を外と中に見せる美しい作品。 本体のガラスは裏から金彩と銀で着色し、積層ガラスとの組み合わせは中里さんならではのガラス表現です。 

沼尻のんさんのエレガントな「天使の羽」。 オリジナルなオブジェクトは天使の羽だそうで、白くて優雅な映像展開が素敵です。

小嶌淳さん・喜多里加さんの「Lovers   Strawberry Thief」。喜多さんの陶器デザインはいつも中の映像を期待させます。そして期待を裏切らない小嶌さんによる内部映像。 覗きやすさにも配慮した魅力的な作品です。

 

中村明功さん、あや子さんご夫妻の「The Holy Mountain」 端正なステンドガラスの造形の中には、いつもオリジナルな映像が展開し、鮮やかで奥深い世界へ誘われます。5.5ミラーシステムとはどんなものでしょう?

清野一郎さんの「花器万華鏡」 白地に黒、金彩の和モダンな磁器の花器。花と万華鏡を一緒に飾るのも素敵ですね。

冨澤哲夫さんの「ディープブルー」は海の中を表現。立体的なリングが見える不思議な3D映像を生み出す作家さんです。

北村幸信さんは、チャレンジと工夫、アイディアの面白さが持ち味の作家さんです。 置き型の作品の限界にチャレンジした「ミラーが回る」。
LEDやセンサー、マグネットを組み込んで、内部照明やオブジェクトの着脱にも工夫の仕掛けがあります。

かたおかきくよさんの「時空 -トキソラー」は、すっきりとスマートな筒の中に深く、繊細な赤の世界が美しく展開します。万華鏡が伝わった江戸時代の時の鐘をイメージした作品です。

心がほっこりする細井厚子さんの「kaleido fairy」 中には鏡の妖精がいるようです。ゆっくりとオブジェクトの流れる景色を楽しみます。

舘川瑞枝さんの「月光のゴブレット」 月の光に満たされた青の世界が目を惹きます。

実松弘明さん、浩代さんの「赤椿」です。 中にも大輪の椿の花が咲き誇る工夫が素晴らしいと思いました。

勾梅智晴さんの「Sun Flower」  黄色のひまわりが美しく描かれています。 透明感と揺らぎの中に万華鏡を組み込みました。

小野寺慶子さん・良明さんの「水の精/Ondine」は、ステンドガラスとハーバリウムを組み合わせた作品。イメージを膨らませながら制作なさったのでしょうね。作家さんの自然に対する想いが伝わってくる優雅な作品だと思いました。

松本よしこさん・たけおさんの「翔」は充電ドック付きで、内蔵LEDながら、電源コードをつながなくても良いスマートな作品。中の映像も幻想的な美しさです。

全体的に見て、日本の作家さんが技術を高め、工夫をしてより良い作品を目指していることが感じられて素晴らしいと思いました。そして作家さん同士で作り上げた暖かい雰囲気の万華鏡展なので、見に来ていらっしゃる万華鏡ファンの方もお話をしながら楽しんでいる様子が感じられ、こちらも暖かい気持ちになりました。

まだほかにもご紹介できていない作品もありますこと、ご容赦ください。また、畳のお部屋に並んだ販売用の作品も大変見ごたえがありました。

2019年10月29日~11月4日

代官山スペースR

東京都渋谷区恵比寿西1‐35‐3(最寄りの駅は、東横線代官山駅)

お問い合わせ https://www.art-kaleidoscope.jp/

 

 

 

 

 

 

 

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功労者たちの引き際  ナップ夫妻の場合

2019-08-23 15:18:24 | 万華鏡ブログ

ブリュースターカレイドスコープソサエティで多くの人に愛されてきたランディ&シェリー・ナップ夫妻が今年で万華鏡制作から引退することを発表したのは、6月のカレイドスコープ・エキスポの少し前のことでした。

1988年からナップ工房がスタートし、本当にたくさんの万華鏡を制作してきて、二人の技術とセンスが組み合わさった作品は品質も優れていて、私もたくさんの愛好家の方にご紹介してきました。 突然の引退表明にびっくりしたのは私だけではないはずです。 まだまだ元気で若々しいご夫妻ですので、なぜこのタイミングで???と思った人も多かったのですが、まだ元気なうちにチャレンジしたいことがあるから・・・というのが彼らの気持ちでした。

それは何と、スクールバスを改装して動く自宅とし、アメリカ中を廻るというびっくりするような、思い切った計画なのです。 オレゴン州の自宅も工房も工具も機械もすべて手放して、思い描く未来なのだそうです。現在バスを改装中(School Bus Conversion)ということで、YouTubeでその様子を逐一発信していますが、相変わらずのエネルギーとバイタリティーに驚かされます。Knapp Time で検索できると思います。

上の写真は Evolver パーラータイプ。 落ち着きのあるデザインで木目の美しい作品です。Evolveには発展させる、展開する、進化させるという意味がありますが、Evolverという言葉はたぶん彼らの造語です。タイトルにしばしば造語を使うので、ご紹介する際に苦労したこともよくあったなあと思い出します。
シェリーさんのオブジェクトもますます「進化」して思いがけない美しい映像デザインを展開させます。

今までの記録をたどりながら、彼らの今後の”至福の旅路”を願って、ご紹介するのが 「Blissful Journey」です。
木の塊をくりぬいて、筒にしているナンバー付きのシリーズのひとつです。
先端部のアクリル製セルの加工も凝っています。アクリルセルのデザイン、制作方法の確立など、ランディさんが研究を重ねてきたものです。

彼らのミラーシステムは2ミラーで5ポイント、6ポイントが圧倒的に多いです。そして逆テイパードという先端に向かって広くなるミラーシステムを採用することで、覗いた先の中心部がずれない大きな映像を見せています。 そして基本的に黒い背景、横から光を取り入れるオイルセルの作品を創ってきました。ジュエルイメージはピンクやブルー、パープルなどを使い、ブライトイメージはグリーン、イエロー、レッド、オレンジなどを多用して、雰囲気の違う2つの映像タイプを用意していました。

彼らの”希望”に満ちた未来を願って、今度は「HOPE」という作品です。このシリーズは、彼らにしては珍しく、透明なセルでたくさんの光を取り込みます。オブジェクトセルの回転の向きが普通とは異なっています。

ランディーさんが日本に興味を持っていたこともあり、「Tanoshii」というタイトルの万華鏡があります。いつも明るくて楽しそうなご夫妻ですので、ご紹介したくなりました。 これも様々な木をくり抜いた筒のシリーズです。ナンバー付きで限定版シリーズです。滑らかな木肌、滑らかなオブジェクトセルの回転、回転させる部分の切込み模様はその回転を助けるためのもの。心地よく覗くための工夫がなされています。

そして複雑で、きれいな映像が次から次へと生まれては消え、また生まれていきます。ガラスオブジェクトがオイルの中を流れながら、互いに影響しあいつつ、豊かな色合いや優雅な形を生み出していくのです。ヴィヴィッドな色合いに透明感やキラキラ感を加えて、まさに「楽しい」万華鏡ですね。

かなり前の作品ですが、「Integration」シリーズの作品です。 これが印象に残っているのは、虹色のオーラを持つ映像に心惹かれたからです。「マジック・マンダラ」というシリーズでも再びこのような映像を見せています。プリズム効果のあるフィルムによって、ミラー映像の上に虹色の光が交差するのが特徴です。 虹を見たときの嬉しさと万華鏡の楽しさを組み合わせた作品で、覗くと素敵な色の世界へと導いてくれます。

 木材の美しさを追求したランディーさん、美しい色合いを求めてガラスオブジェクトの制作にエネルギーを注いだシェリーさん、基本的なスタイルを守りつつ、楽しみやすく、覗きやすい万華鏡のための工夫を凝らして、私たちを魅了し続けた万華鏡作家さんは、いよいよレジェンドになっていくのですね。彼らのこれからの旅が「至福の旅」Blissful Journeyとなりますように。

 

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功労者たちの引き際 キャロリン・ベネットさんの場合

2019-08-11 10:25:44 | 万華鏡ブログ

この写真の万華鏡は、一つの時代の区切りを示すものです。 作者はキャロリン・ベネットさん。ここ数年彼女が力を入れているビーズチェインアートで、手元にあった以前の万華鏡を飾った記念すべき作品です。 彼女は、6月に開催されたBKSのカレイドスコープ・エキスポで、C.Bennett Scopes の事業から退いて、人生の次のステップへ進むことを発表しました。
誰もが気楽に楽しめるプロダクションタイプの万華鏡を多数作ってきたベネットさんの功績は、独自の道であり、ビジネスモデルの一つとして、万華鏡界を開拓してきたといっても過言ではないでしょう。

キャロリン・ベネットさんはニューヨーク州北部で生まれ育ち、ニューヨーク大学でアートを学び、、ニューヨーク州立大学で美術史、美術教育の学位を取りました。キャロリンが万華鏡に出会ってその面白さを知ったのは9歳の頃、古い百科事典にあった作り方を見て自分で作ってみた時でした。1973年、高校の美術教師として教えていたときに、再び、万華鏡を作り始め、趣味を超えた興味の対象になっていったのです。1978年教師を辞め、万華鏡作家として歩み始めました。自分の家の工房から始まり事業として拡大していったのです。ちょうど万華鏡作家がアメリカで生まれ始めた時期で、その活動がスミソニアンマガジンに特集され、コージー・べーカーさんがその記事を見て、彼女を訪ねて行ったのが、二人の出会いだったと聞いています。
次の写真はそのスミソニアン・マガジンに載っていた制作中の彼女の写真です。 (以前ベネットさんにいただいた記事から使わせていただきました。)

1970年代、彼女にとって万華鏡は新しいアートの形態であり、日々新しい展開を目指して研究、試作を重ね、外部のデザイン・内部の映像の両方に個性あるアート表現をめざしました。永遠に新しいものを生み出し続ける万華鏡映像に日々新たなインスピレーションを得てきました。彼女の作品は現代的な素材を使って、デザイン性を重視して生み出されたものばかり。その斬新なアイディアや現代的な万華鏡は数々の賞を受賞し、世界中の人に楽しまれてきたのです。

彼女は、一貫して万華鏡の面白さ、楽しさを伝えることを目指してきました。 子供向けの万華鏡の本は、私も以前、万華鏡を学ぶ際に大いに参考にさせていただいたほど、内容が濃く、わかりやすく、大切なことを伝えていると感じました。

手ごろな価格で子供たちに提供された、厚紙の筒のタイプも、品質にはこだわりつつ、楽しさと鮮やかな色合いを見せていました。

私が何度もご紹介してきた「リキッドサスペンション」シリーズは、アクリル製のプロダクションタイプながらたくさんの楽しみを提供してくれる優れた万華鏡です。スマートなフォーム、美しくしっかりとした加工、バラエティーに富んだデザイン、そして大きなリキッド入りセルは、そのまま見ても美しいカラフルなオブジェクトが筒のデザインに合わせて考えられています。3ミラーシステムで視野いっぱいに映像が広がります。 まだ日本に作家さんが少なかったころから、このシリーズは日本でも数多く販売されてきたと思います。そして、今でもその魅力は失われていません。

ベネットさんは写真家としても活躍し、BKSのコンベンションでも写真をたくさん撮ってくださいました。 昔からの貴重な作品の写真や昔の活動の記録なども万華鏡界にとって貴重な財産ですね。またコージー・ベーカーさんが亡くなった後は、BKSのリーダーのひとりとして、BKSを牽引してくれた功労者です。

C.Bennett Scopesのビジネスは、Cape Kaleidoscopes が引き継ぐこととなり、これからもプロダクションタイプは、制作されていくことが決まりました。
ベネットさんは引退ではなく、これからも一点ものの万華鏡を作ったり、写真やほかのアートにも関わってくとのこと。
長身なうえに姿勢がよく、いつもアクティブで、カラフルで目立っていたキャロリン、私たちをいつも元気づけてくれたキャロリン。 これからも彼女らしく、人生を楽しんでいくことでしょう。

 

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ドラゴンの隠れ家

2019-07-31 15:16:59 | 万華鏡ブログ

カレイドスコープ・エキスポで新作発表された作品の中でも、一番凝っていると思ったのが、スティーブン・グレイさんの「Dragon's Liar」です。上の写真だけでもいったいどんな万華鏡なんだろうと思わせますね。彼の言葉を借りれば、ドラゴンの心と体に入り込む感覚だそうです。
外観は複雑な機械のような作りです。 木材、金属、ガラス、アクリル、そしてギアやノブなどが組み合わされています。これだけたくさんの部品を組み合わせる設計もすごいけれど、さらにその部品を美しく創り上げるエネルギーも能力もすごいですね。メカの面白さとドラゴンのファンタジーを表現するために、金属部分の装飾デザインにも凝りました。もちろん木工部分の仕上げも素晴らしいです。

こちらからは見えませんが、ボディー向こうには回転するホイールがあり、アクリル板の湾曲したピースを配置しています。

アクリルのカーブにダイクロイックフィルムを張り、光を当てます。そこから生まれる色に染まった反射する光を、また透過する光を、独自に開発したミラーシステムを通して、見るのです。

映像に求めたのは、広がりと奥行きのある宇宙のような空間に展開する色模様。

誰も考えないようなアイディアを形にするスティーブン・グレイさんですが、1990年代には斬新な木工デザインと新しいミラーシステムのアイディアの万華鏡を数多く創作し、それらの貢献に対して、BKSの「創造的作品賞」を受賞していました。
数年前にBKSに復活してから、さらに歩みを進めています。今回はこの作品のために6枚のミラーを使ったシステムを考案しました。

今回、デモンストレーションでは、カレイドスコープルネッサンスの初期に発表した、パラソルカレイドスコープのミラー組みの過程を見せてくださいました。私は作家ではないので、鏡のカットにしても、組み合わせも想像もつかないことでしたが、興味深く拝見しました。見ていると簡単そうで、こんな仕組みだったのかと、その時は思いましたが、やっぱり、まだ理解が追いつかないところもあって、不思議な気持ちです。

ミラーシステムの先にカード(オブジェクトの代わり)を置いて覗いてみると、こんな映り方でした。ネガティブ・スペースを使うことで奥行きと立体感と連続性を生み出すそうです。 

黒い、深い部分があるからこそのパラソルイメージなんですね。
昨年結婚なさって、素敵な奥様と幸せそうでした。ジェロームに工房を構え、ますます意気軒高な作家さんです。

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素晴らしいコレクション(続き)

2019-07-17 11:51:13 | 万華鏡ブログ

前回に続き、カレイドスコープ・エキスポで披露されたネリー・ブライ所有のコレクションから少しご紹介します。
コージー・ベーカーさんのコレクションでさえ、彼女の没後まとまって保存されることは難しかったことを思うと、一点ものや限定版のこれらのコレクションをそろえていられることは、素晴らしく、万華鏡ファンにとっては、ありがたいことです。
上の写真で手前に見えているのはパレッティ―夫妻の1990年の”Whimsey"という作品です。彼らが木工の大型作品を創っていた時代です。たくさんのオブジェクトセルが用意されていますね。

こちらは右の2点がナップ夫妻の作品です。 ナップ夫妻は今年のエキスポでは、その技術を披露するデモンストレーションを行いましたが、万華鏡制作はもうしないそうです。 彼らは次の人生のステップに進む決断をしたことが発表されました。なんと自分たちでスクールバスを改良してモバイルハウスにし、アメリカ中を旅してまわるそうです。 万華鏡ファンとしては残念ですが、BKSの会員みんなで応援してこの旅立ちをお祝いしました。
左側の作品はスティーブン・グレイさんのパラソルカレイドスコープのひとつ、1991年に制作された"Aberrations within the eye chamber"です。彼は深い奥行き、立体感を演出する独自のミラーシステムを開発してきました。

次は同じくスティーブン・グレイさんの同時期の名作、”Phantasmis Stratumus"です。

木工のデザインの独創性は言うまでもなく、内部映像にも新たな世界を見せました。 「ほんの少しの真実とたくさんのイリュージョン」と彼は表現していますが、永遠につながる世界を筒の中の空間に生み出すことに情熱を傾けていた時代かなと思います。

ネリーブライのコレクションではありませんが、アーティスト自身が持ち込んで、こんな昔の作品も展示されました。

真鍮の管を使って、数種類の筒やオブジェクト(セルやマーブル)を見せるランプのような作品です。

 

無造作にたくさん並べられた貴重な万華鏡。記憶に留めたい作品は、まだまだたくさんありましたが、撮影の方はおいつきませんでした。

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素晴らしいコレクション 

2019-07-15 22:00:04 | 万華鏡ブログ

今年のカレイドスコープ・エキスポで大変見ごたえのあったのが、ネリー・ブライのメアリー・ウィルスさんによる「歴史的に重要な万華鏡コレクション」の展示でした。 ネリー・ブライというのはアリゾナ州ジェロームにある世界最大といわれる万華鏡専門店です。オーナーのメアリー・ウィルスさんが収集してきたコレクションの一部が会場で披露され、カレイドスコープルネッサンスの歴史を見ることができる素晴らしい機会でした。

これは1989年にヴァンコート社が制作したブッシュ・スコープ(19世紀後半アメリカで大量に生産されたといわれる万華鏡)のレプリカです。百年経って作り上げたレプリカですが、百年以上前のブッシュ・スコープの品質の高さを見せています。

コージー・ベーカーさんの本にも登場するような作品がたくさん並んでいます。 
上の写真でお気づきになった方もいらっしゃるかと思いますが、この中に中里保子さんの「ブック」という作品もありました。

特にメアリー・ウィルスさんはコーキー・ウィークスさんの作品を大変大切にしていらっしゃって、コレクションもたくさんあります。
ご存知のとおり、コーキーさんは万華鏡ルネッサンスの先頭を駆け抜けてきた創造力あふれる作家さんで、いろいろなアイディアを形にしてきた方です。 BKSでの受賞歴も多く、歴史的にも貴重な作品がたくさんあります。

素材も木、ガラス、真鍮など自由自在に使いこなし、ミラーシステムもたくさん開発なさいました。
左は「スター・エクスプロ―ジョン」という作品です。テイパードミラーシステム、両目で覗ける大きなアイホール、ミラーシステムの先が斜めにオブジェクトセルと合わさる形で、大きな星の爆発のような映像を生み出します。
いろいろな素材でこのタイプの作品がありますが、初めて私がこの種類の万華鏡を見たときに、外観のデザインの素敵さと中に展開する大きな、不思議な(その当時は本当に不思議でした)映像に驚いたことを思い出します。

右側は「フラワー」という作品で、先端部には丸いオブジェクトセルが付いていますが、大きなアイホールから見えるのは、このような映像です。

コーキーさんの作品は、このエキスポが終わってからジェロームのお店に伺ったときにも、コレクションを見せて頂きました。本当にすごい作家さんだなあと思います。 またご紹介したいと思います。
アメリカで復興した現代万華鏡の歴史は1970年代ぐらいからです。コージー・ベーカーさんが世界で始めての万華鏡展を開いたのが1985年、BKSを立ち上げたのが1986年、それから多くの作家が実に様々な作品を創り上げてきたこと、しっかりと歴史は刻まれていることを感じられるコレクションです。

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Desert Lace  砂漠のレース 

2019-07-10 23:13:46 | 万華鏡ブログ

アリゾナで開催されたカレイドスコープ・エキスポで、アリゾナならではの万華鏡が生まれました。 制作したのは、アリゾナ州ジェローム在住のシェリー・アンド・スティーブ・ホプキンス夫妻です。
その特徴は地元のサボテンを生かした万華鏡であること。 もともと木工の万華鏡を制作して25年の経歴をもつスティーブさんによる木の筒を飾るのは、サボテンの繊維です。

同じくアリゾナ州ジェローム在住のユニークなサボテンアーティストであるジョン・アンド・ローリ・ミーダー夫妻は、ウチワサボテンの一種である”プリックリーペア・カクタス”からデリケートで美しい繊維だけを取り出す方法を開発し、「砂漠のレース」としてアート作品を創っているそうです。

その「砂漠のレース」の繊細な模様を生かした万華鏡をホプキンス夫妻が制作しました。

オブジェクトセルをデザインするのはシェリーさん。 この作品ではオブジェクトにもサボテンの繊維が含まれ、独特の繊維の模様を生み出します。そのほか、銅、ランプワークによるターコイズ色のガラスオブジェクト、ビーズ、ダイクロイックフィルムやダイクロイックガラス、天然石、金属などの組み合わせで、映像もユニークで美しく展開します。 

アリゾナの赤い岩の色と銅とターコイズの組み合わせは、この地域を表す色合いです。 (景観を損なわないためにその地域にふさわしいデザインで出店するマクドナルドがありますが、セドナでは世界で唯一「M」の色がターコイズ色になっています。)

先端のオブジェクトセルは滑らかに回転するので、筒を回す必要はありません。大きめのアイホールから見える2ミラーシステム、5ポイントの映像は、オイルセルで、透明感のある青、銅色の輝き、赤い岩を思い起こさせる天然石、そしてサボテンの繊維模様が組み合わされ、ゆっくりと流れ、この地を愛する人たちよって作られた万華鏡であることが伝わってきます。

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小嶌淳さん・喜多里加さんの万華鏡展

2019-07-03 10:12:25 | 万華鏡ブログ

2019年7月2日から11日まで(8日休廊)銀座のギャルリー・ヴィヴァンさんで開催中の、「小嶌淳&喜多里加 万華鏡展」に伺いました。
素晴らしい作品が並んでいますが、トップにご紹介したのは「グリモワール」です。2017年の京都での万華鏡世界大会で初めて発表した作品です。小嶌さんの好きな謎めいた世界が演出されています。

ターンテーブルに載ったオブジェクトを映し出す万華鏡です。

喜多さんの創る陶器の筒はどれも個性的で存在感がありますね。

左は持ち上げて、先端のノブを回しながら、上から覗いて楽しみます。 縦置きの作品にはご覧のようにアイホールの埃を防ぐ蓋が付いています。3ミラーシステムの4ポイントの映像の繰り返しがきれいですね。

右側の作品はやはり持ち上げて覗き、筒全体を回して楽しみます。こちらは2ミラー4ポイントの映像です。第三面にダイクロイックガラスを使い、オブジェクトの色を映してオーラのような輝きを演出します。

こちらはワンドを交換して楽しむ作品です。少なめにオイルをいれたものやドライワンド、それぞれにユニークな映像が展開します。

ボディーを持ち上げて中のターンテーブルを交換できる瓶型の作品です。スイッチを入れるとターンテーブルが回り、照明が尽きます。

こちらはお洒落なスタンドのついた作品。 アイホールが2か所あり、二つのミラーシステムを組み込んでいます。

先端のノブを回して映像の変化を楽しみます。こんなに違う映像が楽しめてしまいます。

ご紹介したのはほんの一部、しかも一瞬の映像です。目の前を展開するその変化こそが素晴らしく、オイルの中をオブジェクトが流れるスピードも映像の自然な変化を生み出して、その世界に引き込まれる感じがします。 どの作品も見ごたえがあり、随所に作家さんのこだわりがありました。

手持ち型のアルケミストシリーズは、筒のデザイン、中のミラーシステムなど多種多彩な品ぞろえでした。 これはお気に入りのひとつ。

 それぞれの万華鏡がどれも覗いてもらうのを待っています。ぜひ足を運んでみていただきたいです。

 

 

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優雅なガラスの花

2019-06-27 16:31:09 | 万華鏡ブログ

今回のBKSカレイドスコープ・エキスポで出会った素敵な作品をご紹介します。
まずは中里保子さんの「Crystal Flower」です。透明なガラスの花を飾った優雅な雰囲気の万華鏡です。
ボディーのガラスは乳白色にペイントを施し、透明な花を美しく見せています。
台座は積層ガラスとハーフミラーを使っていて、いろいろなガラスの魅力をそれぞれに引き出してみせるところが、中里さんのアートであり、技ですね。

台座に内蔵されたLEDを点灯すると、このような雰囲気になります。

会場があまり明るくないので、万華鏡を見るにはライトを当てるか、内蔵のライトを組み込むか、コンベンションの場合、これらも作品を展示するにあたって考えなければならないポイントです。 ガラスを通して発する光も美しさを添えています。

左側の大きなボディーを上から覗くと、メインの映像が展開されます。内部にも透明な大きな花が映し出されているのがわかるでしょうか?実際には立体感をもっと強く感じます。

 

ボディーの下の方に入っているオブジェクトセルから生み出される様々な色模様が独特のミラーシステムと相まって、不思議な映像を生み出します。静かな外観とは対照的なダイナミックでしかも繊細な映像世界が展開します。覗き口が大きめで、中の世界が広いので、どこにカメラを向けるかでも見え方が違っています。

右側の細い方の筒のボディーからは細かい3ミラーシステムの映像が見えます。雰囲気の違う色模様ですね。

作家さんは、このような大きな作品を手荷物になるように箱や袋を調達し、破損しないよう気を付けて海外へもっていきます。中里さんも毎年、違ったテーマで新作に挑戦し、ぎりぎりまで制作に時間を費やしているのを知っているので、私も出来上がった作品をアメリカで拝見するのを本当に楽しみにしています。
(何枚かの写真はご本人に提供していただきました)

 

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ブリュースター・カレイドスコープ・エキスポ

2019-06-17 23:47:55 | 万華鏡ブログ

「カレイドスコープ・エキスポ」と名前を少し変えて ブリュースター・カレイドスコープ・ソサエティの今年のコンベンションは6月6日から9日まで、アリゾナ州スコッツデールで開催されました。

「コンベンション」から「エキスポ」と呼び名を変えたのは、少しでも多くの人に興味を持ってもらえるようにとの意図があったようです。一般公開についてもいろいろなメディアを通じて案内をし、いつもよりは確かに一般の方も見に来てくださっているように思いました。ここからスタートだねというのが、関係者の声。広く万華鏡の魅力を伝えたい思いが随所に見られた今回のエキスポでした。

いろいろな話題がありますが、今日は今回ピープルズチョイス・アワードを受けた4名のご紹介をします。

まず、初受賞の石田千香子さんとデヴィッド・カリッシュさんのコラボレーション作品 「4Ⅹ4(フォーバイフォー)」です。スタイリッシュな作品がお得意の二人らしいデザインです。角の所が2か所、別方向からの覗き口になっており、それぞれ異なったミラーシステムが組み込まれています。アクリル製の台座から四角いボディを持ち上げ、上下を入れ替えることができます。受け止める台座もスタイリッシュなデザインで、その両端に2枚ずつのホイールが付いており、それらのホイールを回しながら4種類の映像の変化を楽しみます。

このデザインやアイディアは1年前のコンベンションの時に浮かんできたと聞きました。そして今年のエキスポ直前まで二人で意見を交換しながら、この作品を創り上げたそうです。4つの筒を組み合わせたところがとってもユニークですね。

この4枚のホイールは、チェスニック工房のジョン・グリーンさんの協力によるものです。作家さん同士、コラボしたり、技術を提供したりしながらも、独自の表現を形にするところが、BKSらしいなと思った次第です。

ピープルズチョイスアワードの二人目はデヴィッド・スーギッチさんでした。京都に次いで2度目の受賞でした。 この大きな作品をご覧ください。 手前にあるのは受賞のトロフィーのガラス作品です。 一人ではやっと持って覗けるほどの重さですが、二人がかりでライトを当てて動かすと素晴らしい色模様が展開します。

左側の細長い覗き口から見ると中には広い世界が広がり、気球が浮かんでいるような映像が中心に見えます。

 

そしてもう一人、山見浩司さんの作品が選ばれました。

アリゾナにぴったりのサボテンとレッドロックの山を細かいガラス片を組み合わせて表現しました。ライトアップするとすごい迫力です。

いつもながら、繊細で美しい映像を2種類見せる作品です。

そしてオークションスコープのピープルズチョイスアワードは、北村さんの「サボテン」の万華鏡が受賞しました。
オークションスコープというのは、エキスポ(コンベンション)の開催地からテーマを選び、オリジナルで創る万華鏡で、最終的にオークションにかけられ、熱心なコレクターのもとに引き取られます。

(実際アリゾナでは、たくさんのサボテンが地面からにょきにょき生えているのを目にして、その大きさにびっくりした私たちでした)

北村さんの作品は、既製品の置物を、万華鏡に改造したもの。オブジェクトセルは、ベアリングで回転します。台座に置くと本体が充電され、持ち上げたときにはセルの中をLEDが照らします。

美しいサボテンの花ですね。
覗きやすく、いろいろなアイディアを詰め込んだこのサボテン万華鏡。 アワードは投票によるものですが、実際のオークションでも高人気の万華鏡でした。

 

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