朝起きると、民宿のおじさんは早々に長い地下足袋を履いて山へ。
おじさんからは自家製のわさび漬けや、疲れたら食べてね、と、おばさんからは梨をいただく。感謝。
7;30宿を出発。(ここから写真が大きくなったり小さくなったりいろいろしますので煩わしいかと思いますがご勘弁!クリックすると大きくなるのもあります)
ガードレールの上が国道、旧道はこの下を歩く。昨夜の地酒「七笑」は美味しかった。何杯でも呑めそうであった。
祭りの準備のおじさんが縄をないながら挨拶をくれる。
国道にいったん出てすぐに右に入るとすぐ本山の宿。洗馬からは約3㎞の短い宿間距離。間の宿だったのだろうか?
小さいながらとても穏やかで人情味がある街。おもしろいもので地方にゆくと歩いているだけで町のカラーがわかる。
ちなみに中央線中津川線にはこの宿場の駅はない。
このあたりから秋祭りの準備があちこちに見られる。
本山は蕎麦打ちの発祥の地でもあるらしい。ここでお蕎麦を食べたかったがここを通過したのはまだ8時半頃であった。
宿場の西詰の本山神社の祭礼ということで山の上の神社にはたくさんの男の人が準備のために集まっていた。
ここでも誰もが挨拶をしてくれて、街道歩きの話が弾む。
まもなく日出塩の集落。こちらは鉄道の駅がある。
このあたりの集落、宿場は山に囲まれた道の合間にひょいっと小さく暖かい人々の生活が感じられる。
こういう自然の土地と人々の性格の感じの良さは山の気なのだろうか?
ここも祭りの準備に余念がない。だんだん天気が良くなり暑くなってきた。
宿場間は国道に沿う道が多いのだが、ときおりすぐそばを走る抜ける電車がいちいち楽しい。
さて、いよいよ出ました。国道脇(元は旧街道)に
「是より南、木曽路」の道標。
う~~~ん、よくここまで来たものだ、嬉しい!しかし、空はいよいよ青く暑い!
左に断崖絶壁、右のはるか下には(関東人から言えば非常に不可思議な逆流)滔々を流れる奈良井川の渓谷。
行く手の桜沢の近くにはダム。
若神子の一里塚を右に見て小さい道に入ると小さい集落。
三段式水場。このあたりからこういう水場がどんどん現れ、おばさんが三段目で洗濯をしていたりする。
わたしもペットボトルに一段目の水をいただく。美味しい☆
また国道に出て贄川の宿に入ったのは11時頃。
線路をまたぐ橋には木曽節の歌詞が書いてあり、欄干に吊るされた金属の筒を鳴らすと木曽節のメロディに
なるらしいのだが、あいにくところどころ壊れていて自分で歌うしかなかった♪
橋を渡ったところには贄川の関所。
中を見学。今さらながら中仙道の参勤交代の道中に想いを馳せる。
☆最近になって浅田次郎さんの「一路」を読んだが、なかなかおもしろかった☆
皇女和宮さんに着いて江戸入りした岩倉具視が贄川宿の娘さんに書いたラブレターなどが展示。
本陣跡近くの旧家の庭先に咲いていたシュウメイギク。
小さな神社の鳥居のそばに水場がある。
贄川から奈良井までの間は知る人ぞ知る漆器の町、木曽平沢がある。
ここでもすでに漆器の製作は行われていてお店がいくつか。
「ひのきや」さんという店に入って街道歩きの記念に厚手の栗の形の木皿を買う。
話好きのおばさんに大サービスしてもらう。
そろそろ13時近く。「ひのきや」さんのおばさんが教えてくれた蕎麦屋「ながせ」で昼食。
山菜天ぷらそば。
タンポポ、山ニンジン、スイバの天ぷら。やっぱりお蕎麦は美味しい!!
お腹がいっぱいになって、ひたすら奈良井宿に向かって出発。
途中国道の道の駅に出て地元の物産工芸品を見る。ここはなかなか規模が大きくて見ごたえあり。
ちょうど家の風呂桶が古くなっていたのを思い出し、ここで風呂桶を買う@!
夫はここからずっとそれを持って歩く。
楢川の瀬音を聴きながら歩いてゆくと名前も知らなかった集落に出会う。
木曽平沢である。
山間の下り道が終わる頃行く手に見える家並み。ほとんどすべての家の屋号のそばには「漆器」と書かれてある。
ガイドブックにない、そこだけ世間の賑わいから隔絶されたような町並み。
そういうものがこの街道沿いに幾つあるのだろう。
かつて東海道歩きで、有松の町並みに遭遇したような嬉しい驚き。
昼下がりの漆の街はひっそりしていた。
素晴らしい工芸品の置いてある店では品のよいお婆さんが奥から出てらして、珈琲でも飲んでいらっしゃいませんか?
と聞いてくれる。何にも品物を買ったわけでもないのに。
さらに歩いて行くと、後ろから大声で「今お茶を淹れるから寄っていってくださーい!」と元気なおばさんの声。
通り過ぎた無料休憩所のおばさんらしい。
一瞬どうしようかと迷ったが、せっかくの旅の出会い、折り返して中に入る。
漆器作り工房を兼ねる休憩所なのか、中の様子もほのかな木の匂いとぬくもりでいっぱいである。
中には地元の漆器職人さんと地域振興の女性が居合わせ、自家製のお漬物やらブドウを出してくれる。
地元の話、漆の話、いろいろ伺う。
偶然に通りかかった街道歩きの旅人にこんなにも手厚くてもてなしてくれる人々がいるのだ。
宿場と宿場に挟まれたちいさなダイアモンドみたいなところだと不思議な感覚に包まれて平沢を後にする。
15時頃になって陽はいっそう暑くなる。
川を左に見て踏切を渡る。
線路と平行にまだ漆器店の並ぶ道を歩いてゆくと、行く手に並ぶ屋根が見えてくる。
奈良井宿である。
木曽路に入りこの一本道をずっと歩いてきて、いや、お江戸の板橋宿を出て数十里、いよいよ中仙道六十九宿の真ん中の宿場である。
駅が近づくにつれ感激でちょっとうるうる。
15時20分頃、奈良井着。
実は五年ほど前に、奈良井、木曽福島、妻籠、馬籠、へは車で来ている。
車では実に簡単だった。楽だった。SAやPAで降りるほかは点と点を目標に車が走っただけだった。
だが、この街道歩きは違う。
丁寧にゆっくり又あるときは足早に、土地の人々と触れ合い、花々に慰められ、ブドウの香りの嗅ぎ、水の音を聴き、道祖神に案内を乞い、点と点を結ぶ線の中を五感の働きをいっぱいに感じて進む旅だった。
帰りは塩尻まで出て17:07発あずさ56号に乗り新宿へ。
さて、ホントは木曽路を中津川まで一気に通関したいところだが、なかなか時間の調整がつかないのが悲しいところ。
次回は奈良井からどこまで歩けるかスケジュールを睨み合わせて待つのも旅の楽しみとしましょう。
今回の歩行距離:約20㎞
京都まであと約267㎞
ヒノキは高いのでサワラだけど(^^)
贄川から奈良井までは平らで距離も短いのでたいしたことなかったみたい。
そう皆さん、見知らぬわたしたちと話すのがとても楽しそうなのはふだん静かな過疎の土地に住むからかもしれません。まあ、それにしても日本ってまだまだ捨てたものじゃないと旅するたびに感じます♪
もちろん町興しの名目もあるかもしれないけど、意識的にあれだけの自然な声掛けは難しいと思われ・・。、
電車(一時間に一本)もバス(一日数本)も少ないので実生活は大変でしょうね。
>こちらが明るければ、相手も明るくなる。
本当にそう!肝に銘じてこれから歩いて行きますね!
こちらが明るければ、相手も明るくなる。
しかし、それにもまして、こうした地域があるのだね。
住み易そうと、思うが、体調の悪い時もあるから、そうした時は煩わしいのかな。
まぁ、そんな事はどうでもよいが、充実した旅でした。
さて、これからはどんな出会いがあるのでしょう。