BMW Z4 ~ 竜氏のZ4 ~(No.2)
「BMW Z4 =No.1=」より
ボクとの食事の数日後に竜氏は早速、行動に移した。
最初にASMの金山総店長やスタッフの方々と相談の元、すでに購入していたRECAROシートのSP-GN EDELを移植した。手始めにシートから着手したのは、「走る楽しさ」を求めるには無くてならないパーツであり、車にとって「最も初めに交換した方が良いパーツ」だということはASMにて学習済みであったからだ。
RECAROシートは純正シートとは比べ物にならないほどの情報伝達能力を持つ。シートを換えるだけで車の印象がガラリと変わる。SP-GN EDELはRECAROシートの中でも最高峰クラスに属するバケットタイプのシートだ。レッドパンチングブラックレザーとレッドダブルステッチが際立つこのシートであれば交換をしても、Z4が生まれながらにして持っている高級感をさらに放たせる。ASMで外した純正シートの郵送先を聞かれると、すかさず「処分して下さい!」と竜氏の‘男気スイッチ!’がON。
そして季節が変わり10月下旬。排気音の響きが1年のうちで最も美しく響き渡る季節の到来の前に、竜氏はSACLAMのマフラーをASMにて装着を行った。SACLAMの宇野社長のご好意で試着用も用意して頂き、ASMからも「本装着前に試着用でSACLAM管のフィーリングをぜひ確かめて下さい」と言われると、すかさず「結構です。ASMとSACLAMを信じていますのでやって下さい!」と‘男気スイッチ!’ON。外した純正マフラーの郵送先を聞かれると、即答で「処分して下さい!」と本日二度目の‘男気スイッチ!’ON。 彼の生き様が垣間見ることが出来た瞬間であった。
SACLAMのマフラーこそが竜氏のZ4に対する感覚を変えた逸品であると言っても過言ではない。表現方法に戸惑うほどの独特の形とステンレスの輝きは、まるで造形美術のようだ。見る物に溜息をつかせるほど美しく、しなやかでそして力強い。排気音は甲高く、チューニングカーというよりはレーシングカーに近い感じの吹け上がりである。その奏でる音色は、不協和音が微塵も無く美しい。マフラー自体の性能も実に素晴らしいのだ。Z4の加速がよりしなやかに、そして滑らかに変わり、初めてZ4が好きになったとのこと。アクセルを踏む喜びが生まれたと言う。
その生まれ変わった加速感は助手席に乗っていても良く分かる。このマフラーを選んだ竜氏のセンスにも脱帽である。購入時から本気でZ4の売却を考えていた彼をマフラー1つでココまで変えてしまうとは、‘技術集団’ SACLAM ・・・恐るべし。
このマフラーは量産メーカーでは作ることが難しいであろう職人技の結晶である。
そして、こういうモノこそが「芸術品」と呼べるのだ。
その後ランフラットを外し、BBSホイールとミシュランタイヤをASMにて装着。言わずと知れたBBSは、ホイールの世界一のシェアを占めておりF1にも使用されているメーカー。近年のBBSはアイデンティティのメッシュタイプデザインばかりではなく、スポーツ車向けのホイールの完成度も素晴らしい。F1が使用しているホイールに似たデザインはスポーツ車を華やかに彩らせては、気品の漂う雰囲気とさせる。そして「BBSホイールとミシュランタイヤの組み合わせ」はRA106を彷彿させる。この選択がホンダ党の‘こだわり’だ。
外したランフラットと純正ホイールの郵送先を聞かれると、即答で「処分して下さい!」と今回も‘男気スイッチ!’ONの竜氏。ここ数ヶ月間、連打しまくりである。パンクをも恐れぬ男気がなくては、このZ4では走る楽しさを追求できないのである。
帰り道にZ4を追いながら携帯電話で話す。
明らかに竜氏の声はZ4を操ることを楽しんでいる様子だった。純正マフラーやランフラットの呪縛から解き放たれたZ4を後ろから見ていると、以前よりも数段にフットワークが軽くなったように見えた。横浜の夜景に溶け込んだテールライトも、心なしか喜んでいるような気がした。
ASMの創造力溢れるアドバイスとSACLAMの感性が響き渡る技術力、竜氏の車に対する情熱とセンスがケミストリーを起こす時、Z4はさらなる進化を遂げることだろう。
(Epilogue)
お気に入りのパーツがある、素敵な商品が揃っている、豊富なメニュー、自分好みのお店、料理が美味しい、店内の雰囲気が良い、店員の接客態度が素晴らい・・・などお店を選ぶ理由は沢山あるし、人それぞれ違う。
今回、竜氏のZ4の相談窓口はASMであった。竜氏がASMを選んだ理由は本人に直接聞いてみないと分からない(何となく分かる気もするけどネ・・・笑)。
隣でいつも見ていたボクの率直な感想は「素早い対応の店だなぁ」と思った。
1つの相談事に対して、いつも3つほどの選択肢を用意してくれる。選択肢を揃えるスピードも速いが、内容は常にワクワクさせてくれるモノである。そこに「夢、共有。」というASMのコンセプトが感じられた。そして進むべき方向が決まると、その行動に取り掛かるスピードが素早いし的確である。「少数精鋭」という言葉が当てはまるお店だなぁといつも思う。きめ細かな応対には、心からの喜びと感謝の念が生まれる。
ショップ(販売店)と接している時、ボク達は消費者の立場にいる。製品を購入して取り付けてもらうと、嬉しさのあまりに愛車にばかり気を寄せがちである。そして目の前に居る店員がまるで神様のように見えてしまうこともある。
中国には、こんなことわざがある。
「水を飲むとき、井戸を掘った人を忘れるな」
喉が渇いたときに水があれば、誰でも喜んで飲む。これ以上、旨いモノは無いと思うくらいだ。だが日本人は、そんなときに「おいしかった」と言い、水を与えてくれた人に礼は述べても、井戸を掘った人のことまでは考えないのではなかろうか。
中国は長い歴史の国で、先人にこうむった恩恵をいつまでも大切にし「井戸を掘った人を忘れるな」という。
その製品を販売して頂いた販売店に感謝をすることはもちろんのこと、その販売店の向こう側にいる製作者に対しても感謝の念を抱き、車生活を楽しむことが大切ではなかろうか。
販売者や製作者だけではない、企画、製作、流通、販売と自分達の手元に届くまでに携わった全ての方々に感謝しながら、その製品のインプレッションを楽しむことが大切なのだと思う。消費者がそう思うことによって、供給者側も更なる発展をして行くのだと思う。その繰り返しにより、車社会全体が良い方向へ進んで行けたらと願っている。
Z4が進化する過程の中で、竜氏と話し合っていたことはパーツ類の話よりもこういった内容の話をした時間のほうが多かったかも知れない。車のパーツを通じて「大切な事」に気付かせてくれた・・・竜氏とボクがASMへ通う理由の一つがそこにある。
竜氏のZ4