20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『岸辺のふたり』(くもん出版刊)

2008年06月16日 | Weblog
 先日、親しい編集者おふたりからご本をいただきました。
 絵本『岸辺のふたり』(くもん出版)と、翻訳児童文学『フィッシュ』(すずき出版)です。

『岸辺のふたり』は、Father and Daughterと表された父と娘のお話です。
 父と自転車にのって岸辺を走る少女。けれど自転車を置いたまま小舟をこぎ、沖へとむかっていった父はふたたび戻ってはこなかった。
 岸辺にやってきてはずっと父の帰りを待ち続ける少女。
 少女はいつしか大人になり、結婚し、子どもが生まれる。けれども少女は、どんなときも、この岸辺をわすれたことがなかった。
 時がながれ少女は老婆になり、曲がった腰で自転車を押し、またふたたびこの岸辺にやってくる。
 子どもたちも巣立ち、また、ひとりぼっちにもどった昔の少女は、岸辺に横たわり、とうとう人生最後のときを向かえる。
 ふたたび自分が少女にもどり、父親と再会している夢を見ながら。
 
 美しく雰囲気のある絵が、心象風景のすべてを切ないくらいに語っています。
 なんべん見ても、絵が秀逸です。
 ほとんど、モノクロといっていいくらいの押さえた色彩と、やわらかな線で少女の日々が描かれている絵本です。
 年老いた少女が、ラスト横たわった場所もまた、あの岸辺でした。
 父と別れた日の原風景をずっと胸の奥に抱きしめながら彼女は大人になり、そして死んでいきました。
 こうして文章にすることがもどかしいくらい、絵の力に惹かれる絵本です。
 
 絵本をいただいたとき、あわせてCDもいただきました。
「僕の大好きな絵本です。CDも泣けますよ」
 彼のお言葉どおり、二度目、見ながら泣きました。
 絵本の文章が消え、絵はそのままアニメーションになっていCDです。
 アニメーションの背景には、ピアノが軽やかに切なくなりひびいているだけです。その寡黙さが少女の心象風景を切ないほどにあぶり出しています
 生きること、死ぬことについて、少女と自分を重ねながら漠然とした思いで、遠い未来を考えていました。美しく切なくステキな、絵本とCDです。
 ぜひご覧になってください。

 もう一冊の『フィッシュ』は「この地球を生きる子どもたち」と題された鈴木出版の海外児童文学シリーズの一冊でイギリスの児童文学です。
 このご本につきましては、いずれ読みおえたら、またご紹介したいと思います。
 
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