太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

ノーベル物理学賞梶田さん

2015-10-07 08:37:45 | 仕事に関すること

ニュートリノの質量発見で物理学賞となった。大村さんと同じく決してエリートコースを歩んだのではなさそう。高校生クイズ王に出てくるような超秀才の学生時代では無かったようだが、決定的に違うのは瞬発力でなく持久力で彼らを圧倒的に凌ぐ力を持っているように思う。決して諦めない飽くなき探求心の賜物である。そしてそこに不可欠にあるのは周りの協力と支援、理解である。大規模な実験装置と莫大な予算、優秀なチームとそれを纏めるリーダーの存在(梶田さんはそうだろうと思うが)を必要としながらも、それが「何の役に立つ?」と問われるのが最もきつい仕事である。このような基礎科学分野は余程資金的余裕があるか篤志家の企業でないと出来ない技である。そこにこそ国の支援が必要と思う。昔太陽電池基板(結晶)でリボン結晶という技術開発をした時代がある。シリコンを溶融させた坩堝から直接板状(リボン)の基板を引き上げる技術でそれまでのチョクラルスキー法という円柱状の単結晶引き上げに比べ生産(速度)性が良くカーフロス(切屑)が少ないという画期的技術であった。日々生産性(速度)も上り、大(幅)化も進み、素子にした時の変換効率も上がって行った。しかし、ある時点から生産速度と変換高率にトレードオフの関係があることが分かってきた。考えてみれば明らかで(引き上げ)速度を上げると結晶性(細かな、転位だらけの結晶)が悪くなり効率が落ちる。この技術はある日突然経営者がSTOPの決断をし、現在世界の主流となっている鋳造法による多結晶開発に切り替えた。(大転換だったと思う)私自身はリボン結晶開発以降のプロセス担当であったが担当技術者は良く諦めたものだと思う。丁度リボンを諦めた頃国が研究支援(サンシャイン計画の委託研究だったと思うが)で東芝などにリボン結晶開発をさせることとなった。我々は経験から生産性と効率で頭打ちになるのではと危惧していたが結果はほぼ当たっていた。客観的に冷たく言ったが、もし私がリボンの開発担当なら間違いなく東芝に移って技術に拘っていただろうが。特に最近では国の支援は「役に立つもの」「普及するもの」「市場で成果が得られるもの」つまり実用化できる可能性がある技術開発に拘り過ぎているように思う。予算(税金)を投じるからには成果が出ないと国民の理解が得られないという理由で結構予算措置の条件は厳しいと聞く。その後の話だが会社が不祥事を起こし国の支援から締め出されたとき、当時のカリスマ経営者は私達に向かい「行政処分は仕方がない、しかし開発を止めろと言うわけではない。皆さんが本当に必要と思うなら会社がやり繰りして予算をつけましょう。」と言った。ここには開発の在り方の本質があるように思う。実用化の可能性が大きく製品化も視野にある技術なら企業は放っておいてもやる。やらないのはどうなるか皆目分からない基礎科学分野である。国の支援が必要なのはこの分野と、技術が普及するようなソフト(社会制度、規準づくり、補助政策など)開発であろう。基礎科学分野に焦りは禁物で納税者も温かい目で理解する必要がある。役に立つ(利益を生み出す)開発はスケベ根性の塊の企業に任せて。



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