今度は日立化成ですか。知り合いは停年退職しており関係はしていないと思うが。業界の仕事もしていたので多くの業種の方々と知り合いになる機会も多かった。大企業の方が多かったが不正が発覚した場合の対応も多様であった。別部署で関係のない人でもこの度は大変な迷惑をお掛けしましてと謝る会社、報道で知ったくらいで社内連絡は無い、入札の指名停止を食らったが入札時期でない期間に設定されたから業務に支障は無いという者、対外活動を現在自粛しているので私は今日ここには居ないという者、刑事に発展したものは無かったが行政処分を受けた会社は10社以上あるだろう。
データ改ざんや談合などの意図的な悪事では無いがリコールという対応がある。不可抗力的なミス、主に設計ミスに対する対応である。同じ事でも知っていて隠せば罪だがリコールは処分があっても多分軽微なものだろう。それよりリコールによりブランドが傷つくことの方が大変である。自主的に実施するもの公取や所管官庁から勧告されるものがある。
今の車に乗り出して6年目である。これまで一度も故障はなく、未だに春秋はリッター25㎞も走る。燃費も良くHV車で心配していた加速も申し分無い。ディーラーもあれは名車ですと言う。ところが今回リコール対象車になった。TVのニュースで知ったがネットで見ると異常判定時の制御プログラムに不具合があり、最悪の場合走行不能になるとある。ディーラーの知り合いの担当営業にネットに載っているのにリコールの案内が来ないのはどういう訳かとクレームの電話を入れた。申し訳ありません、今手紙を書いているところですと言う。ネットの方が情報が早いというのは顧客第一と言えない、良い車だと信頼していたのにと嫌味を一通り言うと、電話の向こうで平謝りした後、ところでカローラが新しくなりまして素晴らしい出来上がりですので一度試乗に来て下さいと言う。思わず、それでこそ営業マン、クレームの時でも次を売ろうとする根性が素晴らしいと褒めてしまった。昔東電に太陽電池を納入した時、重要な顧客であるにも関わらず不具合(メーカーでは不良と呼ばない)を起こしてしまった。担当の営業マンと一緒に謝りに行って、こちらが不具合に至った技術的問題を四苦八苦して説明していた時、ちょっとの間(ま)を縫って営業が、ところで次の発注は何時頃になるでしょうと口を挟む。あれ程営業マンのタフさを感じた事は無い。相手もあっけに取られて、諌めるどころか話しがそちらに移ってしまった。営業マンは日頃から随分可愛がられていたことは後で分かった。その時の生意気な主任は後に東電の執行役員になり、子会社の社長にもなった。偶然30年くらい経って共通の知人が再会の一席を設けてくれた。30年経っても相変わらずやんちゃな性格は変わっていなかったが、太陽電池などと今頃騒いでいるが礎を築いたのは我々だよなあと懐かしがっていた。実に楽しい再会だった。因みにタフな営業マンは奥さんが老舗の洋菓子店の一人娘だったために退職して店の跡を継ぐことになった。誰もが知っている創業何百年の洋菓子店である。横道から脇道にまで入ってしまった。
リコール案内の封書が届いたがネットの文面と同じであった。改修時期は追って案内するとある。また営業マンに電話して何時頃改修するのだと聞いたら年末頃になるという。販売台数が多いので人手が足りないと言う。機械的部品の交換ならディーラーにあるサービス部門で即対応できるのだろうが制御プログラムの書き換えは専門家と専門の器具が必要なのだろうとは思ったが、分かったそんなに遅くなるというのは不具合は初期不良ではないから明日には起こらない、起こっても最悪の場合に到らないと見たというと、その通りですと答えが帰ってきた。車のリコールは客もメーカーも実に手慣れたものである。昔太陽電池で問題を起こした時、経産省からこれはリコール相当ですと散々脅されたことがある。その時は事業の存亡に関わるとして社を上げて大騒ぎになった。具体的には対象が特定できて改修可能であったからリコールには到らなかったのだが。車屋さんはリコール慣れしているというか慌てない。エアバックのように命に関わる重欠陥は経年劣化では起こり難い。車は成熟した技術とも言える。
車メーカも1社だけ太陽電池を作っていた時代があり、会員となっていたので親しい人が居た時期がある。その時リコールのプロとしての対応を教えて貰っておけば良かった。これほど口うるさい者がリコールの対象車になっても、何ら責める気持ちが湧かないのはプロとしか言いようが無い。勿論リコールなどしなくて済む技術が最上級ではあるが。