ゆっくりかえろう

散歩と料理

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2011-08-29 | フィクション

 「もうひとつ聞いていいですか?」
 「なんだイ?」

 「あなたたち餓鬼は とてもお腹が空くんでしょ?」
 「なんでも食べるんでしょ?」 
  「僕は食べないんですか?」

  言ってから後悔した 禁止ワードを踏んでしまったかもしれない

  ネイビーさんは俺の失礼な問いにも丁寧に答えてくれた

 「私は餓鬼の中でも上位にある 多財餓鬼というものでス」
 「餓鬼といっても 無財餓鬼とか 少財餓鬼とかの下位の卑しい奴らは
 何でも食べるし なんでも襲ウ」「人間も食べるかもしれナイ」

 「しかし多財餓鬼は ある程度人間の意識がアル 食べ物もアル環境だし
 あいつらほどコマラナイが 食べても食べても満足しなイ 欲望が無限なンダ」
 「何でもかんでも欲しくなるし 満足できないンダ」

 「だがさすがに電脳世界にいると なんでもあル 欲しいものはふんだんに手に入るシ
 この世界にいる限り 無限の欲望も受け入れてくれるンダ」


 じゃあ このまま電脳世界にいれば 苦しみもないし 餓える事もなく
 幸せにくらせるじゃないですか?・・・・・

 ・・・と口まで出掛かっていたが 言うのは止めた

 ネイビーさんの望みは生まれ変わって「ニンゲン」になることなのだから

 人間ってそんなにいいの? 死んでしまうし 病んでしまうし ちっちゃくて
 弱虫で 我がままで 傲慢で 慢心で 卑怯で 悲しいし どこがいいのだろう

 口に出さないのに 俺の考えていることは全部わかるらしく ネイビーさんは
 答えてくれた

 「人間には判らないヨ 餓鬼になってみないト分からなイ 欲望は魅力的デ怖いんダ」
 「私はココロ安らかになりたインだ」
 「やり直したいんダ」 

 愚痴ばっかり言って 不満だらけの普段の自分が恥ずかしくなった
 もっと人間であることに感謝しなければならないのかナ


 ネイビーさんの喋り方に似てきた自分が ちょっとおかしかった