ゆっくりかえろう

散歩と料理

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視線1/2  

2011-08-16 | フィクション

俺はたまりかねて 向かいの失礼な男を 驚かしてやろうと思った。

カバンからカメラつき携帯を取り出し メールチェックをするふりをして 男にカメラを構えた。
 あんまりジロジロ見るなら お前の顔を写してしまうぞ
 と無言の抗議をしたつもりだ
 もちろん本当にやるつもりはなかった

しかし男は怯まない。尚も凝視を止めない。
俺は腹が立って 携帯を押さえている指に力が入った。

カシャンッ!

思わずボタンに指が触れてしまい シャッターが切れた

しまったっ!

とたんに周りの客の眼が気になった
 むやみに他人の顔を撮ってはいけないのは百も承知だ

あわてて 携帯電話を引っ込めた拍子にまたボタンに手が触れた。

そっと携帯の画面をみると 画像が保存になっていた。
俺は急いで 電話をカバンにしまい込んだ。


どしんっ

近くで大きな音がした。

音のする方を見ると  向かいのちら見男が 仰向けにひっくり返って 床に伸びていた。
 
 店員が男に駆け寄り 覗きこんでいる。

見ると、口元から泡をふいた痩せ型の中年サラリーマンが
椅子の足元にノビており 目は虚ろに宙をみすえ、なぜか両手は揃えて真っ直ぐ上に延ばされたまま
何かを掴もうともがいていた。

なぜかそれを見ても 同情する気にはなれず ただ気持ちが悪かった
 俺は巻き込まれないよう早くその場を離れたかった

何か胸騒ぎがして 食事もそこそこに支払いを済ませ 大騒ぎになった店をでた。


視線 1/1  

2011-08-16 | フィクション

この話はフィクションであり人物等実際には存在しません


ああ いやだ
なぜ俺ばかりを見る
さっきから 向かいに座った男が私の食べている姿をじろじろと無遠慮に凝視している。

視線に気がついてそちらを見ると すっと斜め上に視線を外してしまう。
どうやら本人は ちら見をごまかしているつもりらしい。

人から見れば 不自然にしか見えない。

 食事しているのに 料理に集中しないで 一口食べる度いちいち人の口元を見たり
店員が来る度 俯いたりする
 
 いかにも覗いてませんよ たまたま視線があっただけですよ といわんばかりだ
 おかしいだろ 食事をするときは 目の前の食べ物に集中するもんだ
 あんたは目の前の食品より 人が食べる口元や手元ばかり見ていて うわの空に
 空中ばかり見て 手であごを撫で回し 舌なめずりしている
 

 挙動不審だよ
 人の食べている姿が そんなに見たいのか?
 舐めるように見られていると 俺は身震いがするくらい気持ちが悪い

ここは 会社帰りのいつもの牛丼屋

なぜかいつも 俺はこんなヤツに遭う
 毎日違う奴がいて その度嫌な思いをする

他にも沢山客はいる。
何故 俺なんだ?

いやいや 俺が自意識過剰なんだろうか ?
 決め付けてはいけないぞ  むやみに人に敵意を持ってはいけない
何度も思い直してみるが やっぱりこいつは変だ。

 特に今日の奴はしつこい。

とうの昔に食べ終えているのに、何度もお茶のお代わりをし
 席待ちをしている人に替わろうともしない
食べ終わったら さっさと次の人に席を譲れよ

そして相変わらず ジロジロと眺め回し 俺が睨みつけると チラチラと 盗み見してくる。
俺の顔になんか付いているのか?
 気持ちの悪い奴だ  失礼だと思わないのか

 また今日も食べた気がしない