ゆっくりかえろう

散歩と料理

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視線 1/9

2011-08-24 | フィクション

 誰かに揺り動かされて目が覚めた
 目を開けると 薄暗い いや目の前がうす青い
 「目が覚めたカ?」

 「うわぁーっ!」
 気がつくと顔の前いっぱいに あの不気味な青い顔があった
 俺は腰が抜けたまま すごい勢いで後ずさりし始めたが
 そのうち何か 硬いこぶのような石に当たり 止まってしまった

 「うわ うわ うわ うわっー」

 「落ち着ケ」 
 化け物が 音もなくしかもものすごい速さで 俺のそばまで来た
 歩いている風でもなく ただすっと移動して 俺のずれたズボンの裾を
 しっかり踏んづけて動けないように固定した

 俺はよほど慌てたんだろうか 身動きできずうろたえたが
 右手を上げて横に一文字にだし 左手は交差して防御の体制をとった

 いわば自然の防御の形だが 相手の姿が怖くてまともに見られず
 腕を盾にして 腕越しに相手を見た

 「怖がらないデ」 「痛いことも 何もしないヨ」
 「危害を加えないヨ」

 「うわうわ うわうわー」 「化け物がしゃっべったー!」

 化け物はさっきからずっとしゃべっている
 俺は興奮しすぎて何を言っているのか 自分でもわからない

 「落ち着ケ」
 変な語尾の訛があるこいつの言葉は
 なぜか妙に懐かしいと後で思ったが
 このときはそんな余裕はない

 「落ち着かせてやろウ」
 化け物がすばやく動いて俺のそばまで来て
 首に指をかけしっかりと押さえ込んだ
 いや 正確に言うと 俺は地面に押さえ込まれた

 「私の話を聞くカ?」 「落ち着いて 静かに聴くカ?」
 落ち着けるはずはないが 嫌もオウもない
 ただ首を縦に振るしかなかった

 「たっ たっ たっ 食べないでー 助けてー!」

 我ながら 情けない。。。

 目の前に生臭い息をした しゃべる怪物がいた
 でもなぜかそいつの言葉使いは だんだん丁寧になっていった
 あたりは真っ青
 でも太陽も電灯もなにもないのに
 全体が明るく どこも同じ明るさだった  

 「ここはどこだっ どこなんだ?」
 いってからすぐに 俺はいい直した

 「ここはいったいどこなんですか?」

 「電脳世界 具体的にいうなら パソコンの中だョ」
 青い怪物の肩越しに見えたのは
 目の前の大きな画面 そして画面の中には
 パソコン側から見た俺の部屋が見えた