ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツでの農場体験(9) <意外! 築230年の家屋にはバイキング文化の名残りも・・・>

2014-02-28 22:24:45 | 日記
9月17日(火)、午前中はマッシュルーム栽培用の地下室の掃除でした。不要になったマッシュルーム用の菌床を全て屋外に出し終えたので、次はそれが載っていた棚の掃除なのです。棚はメッキ加工されたスチール棚ですが一年経って汚れもついています。それらの汚れを環境に優しい洗剤を使ってスポンジでこすり落とします。次にその汚れた水を布で拭き取るのです。そして汚れた布はバケツの温水で洗います。それを繰り返すのでした。棚は各地下室に4~9棚入っており、地下室そのものは5室あるのでした。
(写真: マッシュルーム栽培の棚の一部)

この地下室そのものは、この家が建築された1782年から存在していることもあって下水設備がないのです。元々の用途は不明なのですが、食糧であったり、保存食品類の備蓄、それらに用いる陶器やガラス瓶、また関連する道具類の倉庫であった可能性が高いのです。従って、汚水等の流れ出る経路はないのです。そのため汚水の処理は掃除機のような形をしたバッキューム式の吸水装置を使って吸い取るのです。そして溜まった汚水を少し大きめのタンクに手作業で移し替え、さらにそのタンクが満水になると、太目のホースを利用し排水ポンプを運転して1階にある「トイレ」に汚水を流し込むのでした。この一連の排水作業は、ほぼ毎日のように私がやっていたのです。

さてある日のこと、ホストのOさんが別の地下室を見せてくれました。マッシュルーム栽培に使用している地下室は5室つながったレイアウトなのですが、それとは全く違う出入り口を有する地下室群があるのです。中は多少雑然とはしていましたが、例えば保存食のジャムやピクルス等を入れる大小のガラス瓶の器類も相当数保管されています。5個・10個のオーダーではありません。電気も冷蔵庫もなかった時代からの家屋でもあるので、食糧関係の備蓄には工夫したことでしょう。そしてその保存場所は地下室であったとも十分考えられます。

この地下室も数室つながっていて、古い糸紡ぎ用の機械(木工製品)も保管されていました。よくよく考えると、この築230年ほど経っている母屋の地下には、敷地面積の大半に渡って地下室が構築されているようなのです。しかも出入り口は複数に分けられていて、場所によっては隠し戸ではないかと思えるような所に出入り口があるのでした。Oさんに教えられるまで、そこが地下室への出入り口とは気が付かなかったくらいです。

話は少し飛びますが、Oさんが生まれ育ったのはこの地ではなく数十km離れたブッパータール(あることで有名なのですが)と言う場所だったそうです。そして実父が若い頃にこのラーデンの農場で暮していたとのことです。しかし、Oさんは先祖が400年近く暮してきたこの土地や、築230年経つ家屋に愛着のようなものや崇敬の念を抱き、ある時、ブッパータールからこの地に移り住んだと言うことでした。

彼の話を聞いていると、様々な場面で彼の先祖達への深い思慕の念を感じさせられるのでした。そして家屋の柱1本1本や、地下室そのものにも愛着を感じているのです。ちなみに彼は若い頃の3年間は大工の専門学校にも通っています。従って、大工に関する知識・技能も身に付けているのです。stableと呼んでいる作業小屋には木工用の電動丸鋸や様々な工具類も揃っていて、彼自身の手で家屋等の修理もしているのです。その腕前を見せてもっらたこともありますが、正にプロでした。
(写真: 工具類)

さらに、この地方に伝わる建築様式の一つで屋根の上にモニュメント(写真)のようなものが取り付けてあります。彼の説明によるとこれらのモニュメントは北方のバイキングから伝えられたものだと言います。一つは龍(または馬)、そしてもう一つは星を象ったものです。バイキング船の帆先等に飾られるデザインに共通したものがあると説明してくれました。魔除けであったり幸福を願うものであったりするようです。そしてこの家のそのモニュメントはOさん自身が堅いオーク材を削り出して作り、取り付けたものだったのです。
(写真: 馬を象ったものか)
(写真: 星のようなモニュメント)

ドイツ北方の民族性については、正確に特定したり限定することは難しそうですが、一部には(または相当な多さで)バイキングの血が流れている人々もいるらしいのです。この話を聞いている時、私は前年(2012年)にデンマークで3ヶ月間滞在し、その滞在先の農家はバイキングの子孫ではないかと思えるぐらいの大柄なご夫婦であったこと、さらに瞳がブルーであったことも思い出しました。そして今話を聞いているOさんも身長180cm以上はありそうですし、ご本人も言うくらいですからバイキングの末裔なのかも知れません。北ドイツは北欧とも極めて近いと改めて感じるのです。

話を戻します。今はマッシュルーム栽培に使用している地下室で、1年サイクルで言うところの最終段階でもある掃除をしているわけです。この後、数日を掛けて地下室の壁面や天井面を、天然素材であるカルシウム(漆喰のような)を水で溶かして塗る作業が続くのでした。数日後に乾いた壁面等は「真っ白」になっているのでした。Oさん曰く「先祖代々、毎年このような作業を続けてきた筈、だからこそ今尚この地下室も使える状態が保たれているのだと思う」と。彼の言葉の端々に先祖への感謝の思いがあるように感じるのです。
(写真: 築230年の家屋) 

そして、その日17日の午後は奥さん(Eさん)の実母の引越作業を前日に続いて行いました。この日の引越作業が終わったのは19時頃で、凡そ2時間の超過勤務(?)となったのでした。疲れた~!

ちなみに翌日18日(水)は、前2日間の超過勤務(?)を配慮して午後は休日扱いに切り替わったのでした。こうした律儀な面もドイツ人特有なものでしょうか。こちらから要求をしたわけではありませんでしたが、キッチリとした性格を感じたものです。

この後は引越に関わるお手伝いは多くはありませんでしたが、運び込まれた家具調度品や組み立て型の棚等を再度組み立てなおす部分でお手伝いに入ったぐらいはありました。そして作業の中心は農作業の方に戻ったのです。 ~続く~