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第1,228話 部下に自分の言葉で話してもらうことから始める

2024年08月21日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下に何度言っても、言ったとおりにやらないんです」

「部下に伝わらないので、つい『だから・・・!』と感情的に言ってしまうのです」

これらの言葉は、弊社が管理職研修や部下育成研修を担当させていただいた際に、必ずと言ってよいくらいに受講者から相談される内容です。

部下の育成に関する悩みは、古今つきないものだと思います。毎年厚労省が行っている「能力開発基本調査」の最新の令和5年の調査においても、人材育成に問題があるとしている会社は約8割になっています。この数値からも、現場での部下育成が思うように進んでいないことが伺えます。

さて、先日パリオリンピックが終了したところですが、日本選手団の活躍は国外開催の夏季五輪で史上最多となる20個の金メダルを獲得しました。それだけの活躍ができた背景には様々な理由があるのだと思いますが、その一つには外国から招いたコーチの指導があると言われています。

報道された中で私が最も印象に残っているのは、男子バレーボールチームを指導したフランス人のフィリップ・ブラン氏です。各国での指導経験を持つブラン氏は2017年から日本チームでの指導を始め、強豪国とも対等に渡り合えるようになったものの、就任当初は日本人選手との接し方に戸惑いを覚えたといいます。

それについてブラン氏は、「選手それぞれと面談をして、『私は君にこういうプレーを求めている』とリクエストを出したんです。選手たちはみんな『ハイ』と答えていたんですが、まったくプレーが変わらない。最初は通訳が正しくないのかと思いました。私もあきれて、3度目の面談の時には『私の方から説明はたっぷりしたから、今度は私がいったい何を求めているのか、あなたの言葉で説明してください』と言ったら、みんなびっくりしていました。日本の選手たちは心の中では『ノー』と思っていても、指導者の前では『ハイ』と言える。そうした社会になっています。これは私にとって大きな学びでした」といった話をしています。こうした中で、指導してもそれがなかなか生かされず、チームの成績にも結び付かないということが続いたのではないかと思います。

これは、指導が一方的な情報の伝達になってしまっていて双方向のやり取りになっていない状況であり、「はい」と返事はするものの実際は内容がきちんと伝わっておらず理解されていない状況であり、結果として指導にはなっていないということです。

同じように、部下がなかなか育たないと悩んでいる管理職の皆さんは、部下に指示をしたり指導したりする際に、一方的に伝えるだけで終わってしまっているのかもしれません。そして、伝えたことが部下にきちんと伝わったか確かめることをしないままで、部下を指導したつもりになってしまっているように思えます。

自分が伝えたことが相手に理解をされているのかどうかは、まさにブラン氏が行っているように、部下の言葉で語ってもらうことによって、どれくらい伝わったか、理解されたのかを確認できます。ブラン氏は先述のようなコミュニケーションを選手と行うことによって少しずつ信頼関係を築いていき、チームの成績もそれに伴って上がっていったとのことです。

部下が育たない、部下に伝えたはずのことが伝わらないと悩んでいる管理職の方は、この例のように部下に自分の言葉で話してもらうということから始めてみてはいかがでしょうか。

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