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第1,098話 自己啓発意欲と仕事の成果の関係

2022年02月16日 | キャリア

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「自己啓発意欲が高く熱心に取り組んでいる人は、仕事の成果も上がっているのではないか」と私が思うようになったのは、今から20年以上前のことです。人材育成の仕事をするようになって早30年になりますが、様々な企業で研修を担当させていただいたり、研修のご担当者と打ち合わせをしたりする中で、上記のように考えるようになりました。

自己啓発と仕事の成果との間には本当に因果関係があるのか、一度しっかり調査をしてみたいと考えたのですが、そのように意気込んではみたものの、実際に調査に取り組もうとしたところ、仕事の成果とは何を基準に考えればよいのかなど様々な壁が立ちはだかり、調査・研究を断念した経緯があります。

それから10数年が経過しましたが、近年では企業の教育訓練投資の重要性がますます話題になってきています。先日(2月15日)の日経新聞の記事(「従業員への教育訓練投資」)によると、内閣府が「過去1年間に語学や業務改善につながる学習、資格取得をした人の年収を調べたところ、学習をしなかった人に比べ30~40万円ほど高く、具体的には正規雇用で44万円、非正規雇用で29万円の差があった」とのことです。以前から私が感じていたことがこれで裏付けられたものと思っています。

では、実際に自己啓発に取り組んでいる人はどれくらいいるのか調べてみたところ、厚労省が毎年行っている「能力開発基本調査」によると、令和2年(2020年)度に自己啓発に取り組んだのは「労働者全体」では32.1%であり、「正社員」で41.4%、「正社員以外」で16.1%とのことです。自己啓発を行った平均延べ自己啓発実施時間は「労働者全体」では40.7時間であり、「正社員」の41.8時間に対して、「正社員以外」は35.8時間と少なくなっています。正社員の年間の受講時間は41.8時間というのは、1日当たり僅か6.9分、週にして1.5時間弱(48.3分)ということになります。

因みに、10年ほど前の平成21(2009)年度の同調査では、自己啓発を行った人は正社員では42.1%、正社員以外では20.0%であり、ともに前年度を下回ったとあります。この数字から、10年前と比べ自己啓発時間が減少していることがわかるわけですが、10年前ですら少ないと考えていたのに、さらに減っていることに驚きました。

同調査によると、「自己啓発における問題点」の内訳で最も多かったのは、正社員では「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(54.7%)だったそうですが、この理由自体も10年前から変わっていません。この事実には私もちょっと驚きを隠せなかったのですが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。

コロナ禍により、仕事も生活環境も大きく変わりましたので、今後のこの調査の結果は変わっていく可能性もありますが、今後組織と個人の関わり方が大きく変化し、自己選択と自己責任の重要性がますます高まっていくと考えられる中で、自身の能力をどう上げていくのか、そのために私たちはどのように自己啓発を行うのかはとても大きな課題になっていくはずです。

「忙しい」を理由にすることなく、一人一人がどのように取り組んでいくのか、今後これまで以上に問われることになりそうです。そうでなければ、社員個人だけでなく組織そのものも世界の中でだんだんと取り残されていってしまい、やがては取り返しのつかないことになりかねないのではないかという気がしています。

いかに自己啓発を行える環境を作り実行するか、このことが社員自身と組織の今後の成長のカギになるのではないかと考えています。

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