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「メラビアンの法則」を誤用する講師にご注意を!

2018年05月20日 | コンサルティング

「メラビアンの法則」については、以前このブログでも書いたことがあります。今時この「法則」を誤用したまま仕事をしている研修講師などいるはずがないと思っていました。ところが先日、ある会社の人事部で研修を担当している方から「今年の新人研修で、講師がメラビアンの法則について解説していました」という言葉を聞き、私は「おや?」と思いました。そして「人は見た目が9割なんですね!大変役に立つ内容でした」と続けたので、思わずのけぞってしまいました。

ご存知の方も多いと思いますが、「メラビアンの法則」について簡単に紹介しておきます。

アメリカの心理学者アルバート・メラビアン博士がある実験を行いました。それは対人コミュニケーションにおけるインパクトの大きさを分析したものです。その結果は以下の通りでした。

・話の内容などの言語情報 7%
・口調や声の大きさ、話の早さなどの聴覚情報 38%
・見た目・態度などの視覚情報 55%

これがその「法則」です。まあ、ここまでは良いとして、この「法則」の間違った使い方が問題です。

不勉強な(というより無知な)研修講師はこの「法則」を使って次のような話をします。

「メラビアン博士によれば、話の内容が対面する相手に影響する割合はわずか7%とのことです。ほとんどの情報は言葉以外で伝わっているのです。特に55%を占める視覚情報は大事です。ですから、身振り手振り、ジェスチャー、声の強弱、抑揚のつけ方を練習しましょう。では練習です。はい、みなさんお互いに向き合いましょう。こんな感じで表情を作って、こうやって手を前に出して、普段よりちょっと低めの落ち着いた声で・・・」

これでは「言葉なんてほとんど伝わらないのだから、見た目や声を良くしましょう」と言っているようなものです。これが間違いであることは、すぐにわかると思います。メラビアン氏の実験は「視覚情報や聴覚情報が言語情報と矛盾したとき、言語情報のインパクトはほとんど失われてしまう」ということを述べているに過ぎません。

たとえば、あなたが上司から頼まれていた書類を仕上げて、上司が仕事をしている机の前に立ち、その書類を手渡したとします。そして、あなたが作った書類にざっと目を通した上司が頭を抱えて(視覚)、悲しげな声で(聴覚)、「君は本当に良い仕事をしてくれたねぇ・・・」(言語)と言ったとします。あなたはどう思いますか?

実はこうした「トンデモ・メラビアンの法則」は当初アメリカで発生し、80年代の末期に日本に渡ってきました。そして真っ先に「感染」したのが無知な研修講師でした。それから30年近くになろうというのにいまだに研修で使っている講師がいようとは・・・。

私はメラビアン氏の「7%-38%-55%」について書かれた書籍および原著論文のコピーを持っています(画像はその一部です)。もし皆さんのまわりで「メラビアンの法則」について誤った解釈をいまだに信じている方を見つけたらお知らせください。原著論文には著作権がありますので公開できませんが、ご興味のある方にはお見せいたします。

「メラビアンの法則」については、今後も機会があればこのブログで触れていくつもりです。したり顔で「法則」を話す悪質な研修講師を撲滅し、正しい知識に基づく良質な研修を世の中に広めてまいります。

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