中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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「ほめる・叱る」を誤解してはならない

2017年02月01日 | コンサルティング

昨夜のNHKクローズアップ現代プラスのテーマは、「怖い鬼は厳禁!?“ほめられ世代”どう叱る?」でした。

そこでは、入社2年目の社員で叱られるとやる気を失う者が6割もいること。また、厳しくするとすぐ辞めてしまうために、ほめる取り組みに力を入れるようになった企業の例が紹介されていました。

私自身、人材を育成する上でほめる必要性や重要性は十分認識していますので、担当する研修やセミナーでも当然そのように伝えています。

しかし、番組の中で紹介されていた事例では、若手を育成することよりも機嫌をとるようなほめ方をしたり、管理者自身が若手から嫌われないために若手をほめていたりしていて、まるで「ほめること自体」が目的になってしまっているように感じました。

はたしてこうしたやり方で人は育つのでしょうか?

番組のタイトルのように、管理者が鬼のように怖くなる必要はまったくないと思いますが、悪いことは悪いと指摘すべきですし、改善すべきところは改善させなくてはいけないことは言うまでもありません。

まず、はっきりさせておかなければならないことは、ほめる時、また、叱る場合に、「何を目的にして、どういう基準で行っているのか」ということです。

長期的な視点で考えれば、ほめる、叱るいずれも、人材を育成することを目的に行う行為です。

一方、短期的な視点では、ほめる場合は行動の強化を、叱る場合は行動の変更を求めているわけです。

こうしたことを踏まえた上で、管理者は部下をほめる時にはきちんとほめ、叱るべき時ははっきり叱らなければ、自らの役割を放棄していることになります。ほめる、叱るは決して好き嫌いで行うものではないのです。

そして、ほめる時には表面的な部分のみをほめるのではなく、どこがどう良かったのか、たとえば、作成した資料の文章が良かったのか、発表の仕方が良かったのかなど具体的な行動をほめることが必要です。反対に、叱る場合にも何が問題でどのように改善して欲しいのか、部下に対してどのように期待をしているのかを明確にすれば良いわけです。

叱る場合に「怖い鬼」と言われてしまうのは、それをせずに論理的でなくただ単に怖い鬼のように怒ったり、パワーハラスメントと言われるような人格否定をしたり、業務と直接関係のない事柄を追究したりすることが問題になるからです。

若手に迎合するようなほめ方をし、叱るべき時に叱れない管理者は結果として部下の育成を放棄していることになります。一方で、若手もほめられることばかりを考えて行動するようになり、全く育たないことになりかねません。

このように、人を育てるためにきちんとほめたり叱ったりすることと、ただ単に若者に迎合するようなほめ方をしたり、きちんと叱らないこととは、全く別の問題です。

それをはっきり分けて考えないと、人材を育成するうえで、間違った方向に行ってしまいます。番組を見ていてそんな危惧を持ちましたし、同時に番組作成者の意図はどこにあるのか尋ねてみたいと感じました。皆さんはどのように思われますか。

(人材育成社)