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ウォークマンの思い出

2014年05月14日 | コンサルティング

あなたは、「イノベーション(innovation)」の意味を技術革新だと思っていませんか?

「日本人は、技術者だけではなく経営者までもイノベーションを正しく理解していない。この誤認識こそが、日本全体にイノベーションが起きなくなった元凶である」としているのは、「日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ」(文藝春秋)の著者 湯之上隆氏です。

湯之上氏は、この本の中で「イノベーションとは、爆発的に普及した新製品」であり、「爆発的に普及することが重要なのであって、技術が革新的かどうかは一切関係がない。だから技術開発を行った段階では、何もイノベーションは起きていない。」とも言っています。

 私がこの本を読んで思い出した「イノベーション」は、あの「ウォークマン」です。40代以上の方には説明は不要だと思いますが、ウォークマン(WALKMAN)は、ソニーが1979年7月1日に発売した携帯型ステレオカセットプレーヤーのブランド名です。

ウォークマンが大ヒットしていた当時、私は遠距離通学をしていて日夜ウォークマンを聞きながら電車に揺られていました。

以前、このブログでもウォークマンについては一度触れたことがありますが、http://blog.goo.ne.jp/jinzaiikuseisha/d/20131121)私はウォークマンこそ日本が誇るイノベーションだと思います。

イノベーションをロケットやジェット機のように今までに全くないものを発明することだというイメージを持っているとすると、ウォークマンはむしろ逆です。

ウォークマンは、携帯音楽プレイヤーというマーケットをゼロから作りましたが、ウォークマン自体は技術革新ではなく、既に存在していたテープレコーダーから録音機能を差し引いたものなのです。

 では、ウォークマンがもたらした革新とは何か?それは新しい音楽の聞き方を提供して、一つのマーケッットを作り上げたことです。

つまり、ウォークマンの出現までは主に家の中などで聞くものであった音楽を、歩きながら聴けるというライフスタイルの変化をもたらしたわけで、まさに大革新だと思います。 

そして、このウォークマン、若者を中心に大ヒットしたわけですから、これこそ「イノべーション」と言えるのではないでしょうか。

さて、ウォークマンが切りひらいたこのマーケット、今やアイフォンやiPod(アイポッド)につながっていますが、実はこれらも技術革新ではありません。

iPodはウォークマンが切り開いた音楽プレイヤーとインターネットを融合したものです。また、AppleはiTunesという音楽の売り方も提供しましたが、インターネットから音楽をダウンロードするやり方も既にあったのです。今まであったものを結合しただけとも言えますが、これらも大ヒットしていますから、イノベーションと言えるのでしょう。

イノベーションを最初に提唱した経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、ドイツ語で「ノイエ・コンビナチオンneuer kombinationen」と言っています。これは英語では「new combination」、日本語にすると「新しい結合」となりますが、既存のものの組み合わせにより、新しいものを生むことで爆発的な普及を生み出すという意味です。

イノベーションのとらえ方を変えることが、何か新しいものを生み出すヒントのカギになるのではないでしょうか。

さて、冒頭の写真を見て懐かしく思いませんか?ウォークマンのあのCMを思い出した方、きっと私と同?年代でしょう!

(人材育成社)