パオと高床

あこがれの移動と定住

エイミー・ベンダー『わがままなやつら』管啓次郎訳(角川書店)

2008-04-17 11:37:20 | 海外・小説
収録短編「マザーファッカー」の中の一節。
「〈これがおまえの欲望の家〉と彼は自分にむかってつぶやき、両目を閉じると、内側で待っていた愛しさの奔流はあまりに激しくて彼は自分が溺れるかもしれないと思った。」
ちょっと恥ずかしいけど、この一節の後半が、そのまま、この本の読後感かもしれない。何だか、様々な感情が、気分が、内側から溢れてくるようで、「ここにしかない、それは奇跡的な世界」という紹介文がそのまま直に心に入る。淡々と書かれた短い15の小説たち。寓話のようで、しかも特定の意味に還元されない寓話のようで、直接心に触れてくる。怖さや残酷さや痛さや哀しさや優しさが、話の端々に隠れていて、それがボクらの心の襞の奥に隠れている同じ感情にふわっと触れるのだ。その瞬間、「薔薇の黄色い花びらの上に完璧にちょこんと載っている、リボンのついた小さな黄色い帽子」(「終点」)を見つけるのだ。

想像力溢れる小説たち。
医者と死を宣告された十人の男たちとの物語「死を見守る」
小さな男を飼う大きな男のお話「終点」
パーティで三人の男とキスすることを目標にした少女の話「オフ」
マーザーファッカーと新人女優の恋物語「マザーファッカー」
単語を売る店でのいさかいを綴る「果物と単語」
カボチャ頭のカップルに生まれたアイロン頭の男の子のお話「アイロン頭」
問えない神様の指示に従う「ジョブの仕事」
捨てても捨てても戻ってくる七つのじゃがいもの成長物語「飢饉」
塩胡椒シェイカーから夫婦の死を物語る「塩胡椒シェイカー殺人事件」
右手の小指を除いて、指が鍵になっている少年が九つの扉を探す話「主役」
など。短いどれもが、鮮やかで、愛おしい。

他の人のブログから、この作家に出会うことができた。出会えてよかったと思える一冊だった。ひそかに感謝。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

九州交響楽団がんばってる

2008-04-17 02:13:30 | 雑感
九州交響楽団のコンサートに行く。秋山和慶指揮で、リヒャルト・シュトラウス・プログラム。「メジャーへのステップ」と名打った意欲的なコンサートだった。後期ロマン派の編成は、ホント大編成で、コンサートホールで音を鳴らされたら、その迫力に体がのけ反る感じだ。演奏、なかなかよくって、楽しめた演奏会だった。九響、がんばれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする