「ラディアント・ベイビー~キース・へリングの生涯~」 6/21(火)マチネ シアタークリエ 14列センター
【脚本・歌詞】スチュアート・ロス
【音楽・歌詞】デボラ・バーシャ
【歌詞】アイラ・ガスマン
【演出】岸谷五朗
【出演】柿澤勇人 / 平間壮一 / 知念里奈 / 松下洸平 / Spi / Miz / 大村俊介(SHUN) / 汐美真帆 / エリアンナ ほか
今までロミジュリもスリルミーもデスノートもキャスト選ばず観ているんですが、なぜかかっきー(柿澤くん)には当たらず。
今回はぽっかり予定が空き、思い立ってナビザを覗いたらわりと良席が残っていたので、「初かっきー」を観ることにしました。
ところが、今日は思ってもみないアクシデントがありました。
キース・へリング…名前とその作品のイメージは知っていても、その生涯については全く知りません。
そういう観客に配慮してか、クリエのロビーには年表が掲示してあり、客席には事前に「ラディアントベービーを100倍楽しむキーワード集」が置かれている。(これは助かりました)
一幕は、キースが生い立ちを回想する形ではじまります。舞台奥のスクリーンや可動式のパネルに映し出される映像は、なんとなく「Song Writers」っぽい。そういえば演出は岸谷さんだったなぁ…とやっと思い出しました。話が時系列に進むわけではなく、結構なスピードで展開していくので、ああーついていけないかも…と少し心配になってきます。音楽が大層なボリュームで、Spiさんやエリアンナさんの迫力ヴォーカルがズンズン響きますが、歌詞や台詞が少し聞き取りにくいのも一因かも。
そのうち、なんとなくかっきーの動きに違和感が。と言っても私は初見なので、もともとの演出なのかどうかはこの時点ではわからず。
しかし幕間を迎え、化粧室列のお喋りの中に「なんか事故ってる」というのを聞き、幕間休憩が予告もなく10分以上押してしまい…やっぱりなんかあったんだ、と確信に変わりました。
きっと客席全体がそう考えたのをかっきーも予想したのだと思います。
二幕に入ると、「なんとなく」ではなく「明らかに」右脚を引き摺っていました。段差を上るときもぴょんぴょん飛んで移動、ここから観はじめた人は「足が悪い」という設定を信じるだろうというレベル。
ただここからが凄かった。わちゃわちゃしていた一幕からのリズムを変えたのは、子役ちゃんのお歌でした。あそこで男の子がまっすぐな歌声を響かせたらずるいよね…
自分の死期を悟ってからキースが何を考えて何を遺したのかを、ありえない熱量で迸らせるかっきー。オペラグラスを通さなくても、汗と鼻水で丸眼鏡の奥がぐしゃぐしゃになっているのが見える。それを真正面から受け取る観客、板の上でフォローする共演者、もうそこにいるのはかっきーが演じるキースなのかかっきー自身なのかわかりません。もう「スゴイもん観た」としか言えない。
演劇って「フィクション」を観るものですが、今日ここで観たものはそのフィクションを超えておりました。
ソワレでは演出の岸谷さんから演出の変更があるとの説明があったとか。「SHOW MUST GO ON」の言葉の意味を感じます。
私のような「ぼーっとした一見さん」の観客にとっては良かったのか悪かったのかわからないけれど、実に得難い体験をさせていただきました。
蛇足ですが。
私はあっきーファンなので、アクシデントが起こる前からなんとなく「ここあっきーが演ったらどんな感じかな」と考えながら観ていました。役柄的にも違和感ないし、来年はかっきーとダブルの舞台もあるのでついつい考えてしまいます。
だから今回のことはもうヒトゴトとは思えず、もちろんナマの舞台にはあり得ることではあるけれど、心配がつきません。
この作品も前々から「こんな大変なのマチソワでやったらかっきー死ぬよね」という呟きが流れてました。シロートでさえそう思うんだから運営側も百も承知なわけで、きっとあらゆるセイフティを張りに張って本番を迎えているはず。
でも事故は起きるときには起きる。
「主役なのにシングルキャストで40公演なんてあっきー喉つぶれるよね」…以下同文。
私たちにできることは本当に何もないのが悔しいけれど、せめて無事に上演できるように祈るしかありません。
どうか全ての舞台人に幸せが降りてきますように。