それはまた別のお話

観劇とか映画とかの感想文を少しずつ

「横道世之介」

2013-03-04 | 映画
吉田修一原作の同名の小説が、『悪人』に続いて映画化。80年代の東京を舞台に、田舎者丸出しでバブルを楽しむ大学生、横道世之介の恥ずかしくも愛しい青春を描く。長崎県の田舎町で育った世之介にとって、東京はまるで別世界。世間知らずで空気が読めない世之介を、周囲はバカにしながらも、彼の純真な優しさに、次第に心を開いていく。好景気に浮かれながら、どこかで背伸びをしていた80年代。世之介に自分を重ねてしみじみする40代も多いのでは?出演は、高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛ほか、日本映画の将来を担う若手実力派に、國村隼、きたろう、余貴美子らベテランが脇を固める。監督は、『南極料理人』の沖田修一。


冒頭シーンから、時間の流れが一筋縄ではない。
新宿駅の雑踏をずっと映していて、、、このカットが妙に長い。
でも画面の隅に出てきた斉藤由貴のポスターを見つけて、
「ああ、あの時代の話なのね」とゆっくり回想する時間が持てる。
私はこの時代設定がドンピシャだったので、そうそうそうだった!という所がいくつも。
カセットテープのウォークマン、
カロリーメイト、カルピスソーダ、
下北沢駅の演劇ポスター、カメラのEOS。

終始ストーリーはゆっくり、というかこれといった事件も変化もなくて、
「横道世之介」という一度聞けば決して忘れない名前の持ち主(高良健吾)も
これといった特技も特徴もなく、フツーに大学生活を送っている。
だから周囲の人物がかえって浮き上がったりして。

でもこの映画が見事なのは、時間の成り行きというか構成が、
これまた一筋縄ではないところ。
途中途中で「現在」の様子がインサートされて
(どの時代なのかはケータイの型でわかるようになっている)
かなり早いうちに、彼がその後どうなったのかが説明される。
これはすごいインパクトなんだけれど、ラストには晴れ晴れとした気持ちになる。
キャッチコピーにある「涙なんか流さずに笑いながら観てください」ってそのまんま。

結局、この映画は周りの役者に支えられている気がします。
「わたくし」という言葉が世界一似合う吉高由里子。
ラストの締めが見事な余貴美子。
それからそれから、
台詞がなく数シーンしか出てこないのに、存在感たっぷりの広岡由里子!

で、映画を観終わって気がついたけれど
監督は『南極料理人』『キツツキと雨』の人なのね。
2本とも大好きな映画です。
上映時間160分は長すぎる!という意見が目立つけれど、
こういう独特の間が自分にフィットするかどうかが分かれ目だと思います。
そういう私もこの映画を観て、「映画とは2時間前後で納めるべきだ」という固定観念を
これからは取っ払おうと決めました…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする