イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

ぼくの好きな言葉

2009年04月10日 20時04分22秒 | ちょっとオモロイ

好きなのだ。

猥褻物陳列罪――という言葉が。

「もしこの場でお前の◎◎がポロリと外に出てしまったら、猥褻物陳列罪で捕まるぞ」子供のころ、まわりが面白おかしくこんなことをいうのをよく聞いたものだ。この語を初めて耳にしたとき、かなりの衝撃を受けた。なんてものものしい言葉だろう。それは、自分の知っている世界、言葉とは明らかに違う性格を持っていた。猥褻、陳列、そして罪。またたく間に、この言葉が持つ不思議な魅力に取りつかれてしまった。

まず、人間の体の一部である◎◎や××を指して「猥褻物」とモノ化して言ってしまうところがすごい。この冷徹なまでの客体化。プライベートな空間にあるときにはまぎれもなくぼくの身体の一部であるこの◎◎も、いま表に出て、外界にむけてそれをオープンした瞬間に、たちまち物質化し、ひとつの独立した個体へと姿を変える。道を歩いていて、見ず知らずの他人が◎◎をモロ出しながら、風に吹かれてやってきたのだったら、それを猥褻物と思ってもしかたあるまい。しかし、自らのソレに対してもこのマテリアライぜーションは発生するのだ。誰のものであろうと、それが白日の下に晒されたとたんに、社会的、客観的な揺るがぬ視点によって、猥褻物であるという定義が下される。そこに生半可な私情はない。他人の息子であろうと、自分の息子であろうと、特別視はしない。カツノリであろうと、カズシゲであろうと、パブリックなチームという世界に所属した瞬間から、それはもう、ひとりのプレーヤーとして公平に扱わなくてはならない。家では息子と呼んでもいい。お父さんと呼んでもいい。だが、一歩外に出たら、グラウンドの上に立ったら、監督と一選手の関係にならなくてはいけない。そんな潔さ、スポーツマンシップをこの「猥褻物」という言葉に感じてしまうのだ。

そして「陳列罪」。この素敵な語選択のセンスに脱帽してしまう。◎◎を社会に解き放つことを指して、「陳列」である。◎◎の「提示」でも「プレゼンテーション」でも「見える化」でも、「開陳」でもなく、「陳列」。陳列は、広辞苑では「見せるために物品をならべておくこと。」と定義されている。はたして、陳列はその主体として「物品」を必要としていたのだった。つまり、ここで◎◎は、猥褻物という単なる「物」から、さらに高度な「物品」へと進化することを求められているのだ。陳列って、まるでおしゃれなグッズをショーウィンドーに飾るみたいじゃないか。閉じられた世界にあるものを公にするのだから、「陳」までは理解できる。しかしこの「列」はなんだろう。このスケール感、この広がりは一体何を意味しているのだろう。たったひとりが、否、たったひとつの◎◎が外部に露出しただけでも、それが「列」になってしまうのはなぜ? そしてさらにこの言葉に深みを与えている要因は、あらためて言うまでもなく、陳列罪の「陳」が◎◎の韻を踏んでいる点なのである。

猥褻物陳列罪――なんてすごい言葉なんだろう。みもふたもないほど直接的であるように見えて、その実、周到なまでに本質をオブラートに包んでいる。固く重々しいシリアスさを思いきり醸し出しつつ、見た瞬間に思わず噴き出してしまいそうなユーモアにもあふれている。この絶妙のバランス。日本語とはたった六つの漢字で、かくも豊かな表現ができる言語なのだ。ぼくたちの日常には、この語に比するだけのエネルギーをもった言葉が、もっとたくさん必要だ。溢れんばかりの豊饒さを持って、枠から、社会から、窓からはみ出てしまうくらいの勢いをもった言葉が。

詳しくは知らないのだけど、実際のところはポルノなど正に物品そのものとしての猥褻物を販売したりするときに使われるほうが、この言葉の主旨に合っていると思う。だから、いわゆる露出狂のオッサンとか不可抗力で◎◎を陳列してしまったサラリーマンとか、そういう場合に用いるのは用途としてはおまけみたいなものなのかもしれない。むしろ、単にわいせつ罪というのだろうか? 

ともかく、前述した理由によって、僕は猥褻物を陳列するのがたまらなく好きなのだ。じゃなくて、猥褻物陳列罪という言葉が、たまらなく好きなのだ。

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2 コメント

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GAO I LOVE YOU (T.A)
2009-04-10 22:13:04
変態ですね、、、非日常備えてる、、、PS 先日ジョギングしたよ、やっやけにっ!!筋肉 痛痛痛 新たな課題かもっ!!!
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Unknown (iwashi)
2009-04-11 09:11:15
変態です(^^)
変態といえば真夏に灼熱の日差しを浴びながら走る変態ランナーの季節が近づいていてうれしい。ジョギング、無理せずゆ~っくり走って、気持ちよく楽しんでくださいね!
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