イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

ゴルゴ38  Part VIIII

2008年09月30日 23時26分00秒 | 連載企画
翻訳者、データマン(ウーマン)の次は、チェッカーに行ってみよう。

言うまでもないことだけど(だけど言う)、翻訳プロジェクトにおけるチェックは非常に重要だ。チェックのない翻訳なんて、クリープを入れないコーヒーと同じ。たまに、十分なチェックがされないまま世に出てしまったのではないかと思われる訳文を目にすることがある(自分のことは棚に上げて)。誤訳、訳抜け、誤字脱字。そういう「ちゃんとチェックすれば防げるミス」のことを、業界では「地雷」という。様々な理由によってチェックを十分に行えなかったがために、地雷を多く含んだまま見切り発車されてしまった訳文たち。幸運な(あるいは不幸な)読者は、きっとその平原を何事もなかったように進んでいくだろう。だけど、いつかきっと誰かが地雷を踏む。違いがわかる読者なら、それがチェック抜きで仕上げられた訳文であることをすぐに見抜くに違いない。「チェックしとらんな」と、ネスカフェゴールドブレンドを片手につぶやくに違いない。だから、チェックは大切なのだ(かなり強引な三段論法?)

チェックの方法にもいろいろある。まずは、実務翻訳の世界ではお馴染みの、突合せチェックについて考えてみよう。突合せチェックとは、文字通り、原文と訳文をバイリンガルに並べて、訳文がきちんと原文の意味どおりに訳されているか、訳文にエラーはないか、その他もろもろをチェックしていくのだ。もちろん、さいとうたかをプロ プロジェクトにおいても、この種のチェッカーは必要だ。最低2名は欲しいところだ。

それはたいてい、ターゲット言語を母国語としているチェッカーによって行われる。つまり、日本語が訳文の場合は、日本語を母国語とするチェッカーが行う。まあこれは、最終成果物となるものが日本語の訳文なのだから、理に適っているとは思う。

英日翻訳の場合、日本語を母国語とするチェッカーの能力は、基本的には訳者と同レベルだと思う。チェッカーの方が訳者より明らかに翻訳が上手く、専門性も高く、経験も豊富だということは、あまり考えにくい。チェッカーとしての力量や経験はあるにしても、翻訳そのものの力を比べた場合、一般的に言って、翻訳者とチェッカーの間に、そう大きな力の差があるわけではない。むしろ、翻訳者がほぼ訳文を仕上げて、チェッカーは単純なミスを拾うという形の方が、効率的に作業を行える場合が多いし、実際、そういうパターンはどの現場でも見られると思う。チェッカーが出来の悪い訳文を直すには、相当な労力がかかる。下手をすれば翻訳と同じくらいの労力がかかる。だから、チェッカーの方が翻訳者より圧倒的に力量が上という組み合わせは、あまり合理的ではないのだ。

もちろん、このチェックは有効に機能する。前述した地雷をつぶせるのはもちろん(チェッカーが地雷を埋めてしまうこともあるけど)、訳文の質だって、チェッカーの視点を入れることで十分によりものに練り上げることが可能だ。優秀な訳者とチェッカーがコンビを組めば、きっと、違いのわかる読者でも、上質を知る読者でも、納得のいく訳文ができるに違いない。

しかし、このチェックには限界がある。それは、訳者とチェッカーの能力に、原文を読み込む力という点で、おそらくはそれほど大きな差がないという点に起因する。つまり、外国語の原文を日本語に訳す場合、日本語を母国語とするチェッカーでは、オリジナルのニュアンスが本当に訳文に込められているか、訳者は正しく原文を理解しているかを、ネイティブレベルでは検出できないのだ(ネイティブ並みの外国語能力を持つチェッカーの場合はそうではないけど)。当たり前と言えば当たり前に過ぎないのだけど、これは結構、翻訳プロジェクトの泣き所になっていると思う。

だから、理想的にはオリジナル言語を母国語とするチェッカーもいた方がいい(実務翻訳の世界で、外国語の訳文が成果物となる場合は、日本人がチェックすることも多い。それはこのパターンに当てはまる)。ネイティブがバイリンガルチェックをする場合は、視点が変わる。誰をチェッカーにするかにもよるが、たいていは翻訳者よりもネイティブの方が原文を読む力はおそらくかなり優れているだろう。つまり「原文の読み込み」という意味においては、おそらくは圧倒的な訳者<チェッカーという構図が成り立つ。だからこそ、このチェックをやる価値がある。

というわけで、オリジナル言語と、ターゲット言語をそれぞれ母国語とするチェッカーが、タッグを組んでチェックをする。そこに価値があるのであれば、もちろん本プロジェクトにおいても、この手法の採用は満場一致で承認されなければならない。

そうとなれば、やはり豪華なメンバーをそろえたい。マーク・ピーターセン、あるいはリービ英雄クラスのチェッカーを擁したいところだ。この2人の巨人が、原文の読み込みが甘いところを徹底的に指摘する。それは、原文の意味がわからないところを著者やネイティブに質問するのとは異なる。このチェッカーたちは、日本語も相当なレベルで理解している。僕なんかより遥かに日本語が上手い。だから原文を読むだけではなく、翻訳結果を見ておかしなところを指摘するのだ。文芸翻訳の場合などでは、ある意味理想的なチェッカーかも知れない。

というわけで、マーク・ピーターセンさんとリービ英雄さんにもこのプロジェクトに参加してもらうことにしたので、もう既に合計14名がこのプロジェクトのメンバーとなってしまった。ちょっと多すぎ?(続く)

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   /ー-ニ.._` r-' |……    「いっそのこと、38人を目指そうかな......」

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フリー生活も4日目。でも、最初の2日は土日だったので、まだ2日目という気もする。さらに言えば、この2日は有給消化だったので、明日から正式に晴れてフリーとなる(なんだか区切りがつけにくい)。今日は昼間、ジョギングした。人気のない小金井公園は空気も澄んでいて気持ちよかった。うん、これからは好きなときに好きなだけ走れる。そう思うと嬉しい。もちろん、そのための時間を作り出すことも必要なのだけど。ともかく、今は非常に忙しくて、まだ落ち着いて身辺整理ができていない状態。それもあって、なんだか実感がないままに日々は過ぎ去っていく。一息入れれるときがきたら、いろいろと計画を練ったり、これからのことを落ち着いて整理してみたい。

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