普段はあまり気に留めないカーブミラー。
2月の豪雪が残した積雪で、どこもかしこも見通しが悪くなると、急にその存在がありがたく感じられた。実は、福井市のメーカーが全国シェア(占有率)1位を誇っている。
同市串野町にある「ナック・ケイ・エス」は、グループ全体で従業員数約150人の中堅企業。だが、国内のカーブミラーの4割を販売している。
1971年の創業当時、材質はガラスが主流で、割れやすくて危険だった。そこでアクリル板をカーブ状に成型し、裏に鏡面となるアルミニウムを
吹き付ける機械を開発。75年に販売を始めると、その丈夫さから一気に全国に普及した。
雪国ならではの発想で、昼間に熱を蓄積し、夜に放出することで結露を防ぐものなど、機能別で10種類以上を展開。店でよく見かける
万引き防止用の半球状ミラーもほとんどが同社製だ。海道和男社長(54)は「世の中から事故や犯罪を減らすため頑張ってきた。地味ですけど」と笑う。
将来的に自動運転車の普及を見据え、車両や歩行者を感知するミラー用のセンサーも開発したいという。「この社会から、あらゆる死角をなくしたい」と語るトップの目にも曇りはない。
最近、全国の若者の間で、ミラーに映り込んだ風景写真の撮影がひそかに流行を見せている。画像共有サービス「インスタグラム」での投稿数は1万件を超えた。
夕焼け空や満天の星の写真とともに、「カーブミラーに映る景色、わたしも大好きです☆」「鏡の見方が変わりますっ!」などのコメントが並ぶ。「カーブミラー萌もえ」と呼ぶサイトも立ち上がるほどの人気ぶりだ。
ネット上の流行などを調査しているパスチャー(東京)の甲斐優理子社長(28)は「鏡を撮るだけで2枚の写真が一つに合成されたようになるため、初心者でも芸術的なインスタ映えを狙える」と話す。
海道社長は、自社製品の想定外の使い道に照れ笑い。「注目を集めていてうれしいけど、車にひかれないように撮ってもらえれば」