おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
台風19号は、東日本地区で大きな被害をもたらし、朝刊によれば、死者33人、不明19人、22河川の堤防決壊が報道されていました。
特に千曲川の堤防決壊は、何度も映像で出てきて、何ともやるせない思いを抱きました。
亡くなられた方のご冥福をお祈りし、また、被災された方々のお見舞いを申し上げます。
そんなタイミングでこんなことを書くのはどうかとも思うのですが、昨日は、私の観戦で2つの快挙がありました。
1つは、セリーグ・ファイナルステージ第4戦で読売ジャイアンツが阪神タイガースを4-1で下し、日本シリーズ進出を決めました。
それにしても、丸選手のセイフティ―・スクイズには驚かされました。
2つめは、ラグビー・ワールドカップで日本チームがスコットランド・チームに28―21で勝利し、決勝トーナメントに進出することになったことです。
さて、『MIND SET マインドセット ー 「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社、1,700円+税)については、何度か書いていて、今回を最終回とします。
著者は、次の2つのマインドセット(心のあり方)のどちらを信じるかでその後の人生に大きな開きが出ることをスポーツ、ビジネス、つきあい(対人関係)、教育の分野で実証的に明らかにしています。
1.自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人ー「硬直マインドセット」
2.人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念を持っている人―「しなやかマインドセット」
スポーツについては、第4章で「スポーツ ー チャンピオンのマインドセット」として50ページ近くを割いています。
私には、第5章「ビジネス ― マインドセットとリーダーシップ」がかなり参考になりました。
著者は、多くの企業がカリスマ的指導者を求めることを疑問視し、その原因の一端がクライスラー社のCEOを務め、自分自身をヒーロー視したアイアコッカを「硬直マインドセット」の代表例として取り上げています。
一方で、「しなやかマインドセット」の代表例の一人としてGE社の資産価値を140億ドルから20年後に4,900億ドルに引き上げたジャック・ウェルチの「傾聴、信頼、育成」をもとにしたリーダーシップを取り上げています。
第5章の最後では、努力の結果トップになった人たちが「自己変容の可能性」を極めてリーダーになったにも関わらず、その地位に甘んじて自分の技量を磨かなくなるどころか、成長の可能性を秘めた人材を求めようとしない組織が多いことを嘆いています。
ところで、この本の真骨頂は、第8章の「マインドセットしなやかにしよう」という部分です。
「しなやかなマインドセットの根底になるのは、『人は変われる』という信念」で、「自分が価値を置くものに向かってこつこつ努力する姿ほど素晴らしいものはない」という記述から始まり、さまざまな具体策を上げた上で次のように結びます。
「人のマインドセットは、小手先のテクニックで変えられるものではない。マインドセットが変化するといういうことは、ものごとの見方が根底から変化すること」で、「マインドセットがしなやかになると、夫婦、コーチとアスリート、上司と部下、親子、教師と生徒といった人間関係のあり方が変わって」きて、それぞれが「評価する者と評価を下される者という関係から、学ぶ者と学びを助ける者という関係に変わって」きて、「成長という共通の目標」を目指すようになることを書いています。
そして、「自分も学びつつ、学ぶ人を応援する」ために毎朝、1日がスタートするとき、自分にこう問いかけることを勧めています。
・今日は、私にとって、周囲の人にとって、どんな学習と成長のチャンスがあるのだろうか?
(チャンスを見つけ、それを実行する計画を立てたら)
・いつ、どこで、どのように実行しようか?
(障害に突き当り失敗したら、計画を立て直して)
・いつ、どこで、どのように新たな計画を実行しようか?
(どんなに落ち込んでいても)
・行動に移すことが肝心!
(うまくいったら)
・逆戻りせずに進歩を続けていくためには、どんなことをする必要があるのだろうか?
総括すると、私はこの本を読んで「しなやかマインドセット」が自分自身だけでなくリーダーシップにも、組織のあり方にも応用できるのではないかと思いました。
さらには、望ましい努力のあり方として『努力不要論』(中野信子著、フォレスト出版)と肩を並べるくらい重要なヒントを得ました。
いつまでも「しなやかマインドセット」を保ちたい人のためにお勧めの本です。
(クリックして勇気づけを)
<お目休めコーナー>10月の花(8)