おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
上野 玲さんというジャーナリストが『文藝春秋』4月号に書いた『医者にはうつは治せない―抗うつ薬は万能ではない。どうすればうつは治るのか』という記事をもとに前々回、前回と上野さんの文章を紹介してきました。
今回は、カウンセラーとしてうつ病の人たちと接してきた私のホンネです。
ポイントは、次の3つです。
1.1年で治らないうつ病もかなりある
2.医者は万能ではない
3.うつはうつなりの生き方がある
1.1年で治らないうつ病もかなりある
『「うつ」を治す』(PHP新書)の著者の大野裕先生もこの本の中で「一般向けの本の中には、うつ病は3カ月から6カ月で治ると書いてあるものがありますが、けっしてそうではありません」とし、「うつ病は、(辛抱強く治療をしていけば)時間がかかることはあるにしても必ず治る病気なのです」と書いています。
ただし、うつ病が再発しやすいことにも触れています。
大野先生は、アメリカの調査での大うつ病性障害の再発率を次のように示しています。
1回発症した人・・・・50~60%
2回・・・・・70%
3回後・・・・・90%
私の知っている人でも、3年以上どころか、人によっては、5年も不調の人もいます。
「1年で治らないうつ病もかなりある」と言わざるをえません。
2.医者は万能ではない
「医者」と言ってもいろいろな医者がいますし、精神科医と言えども、うつ病に強い人もそうでない人もいます。
統合失調症と診断され、障害者手帳を持っている人に、どうも統合失調症らしくないので、「あなたは何を根拠に統合失調症と診断されたのですか?」と尋ねたら、診断基準の「その他」に該当する、と答えられて、唖然としたことがあります。
また、ろれつが回らない人がカウンセリングにやって来て、処方箋を見せてもらったところ、8種類もの薬をもらっていて、下の中河原通夫先生(中河原クリニック院長、精神科医、医学博士、ヒューマン・ギルド会員)からいただいた『心の病気の薬がわかる本』をもとに調べると、明らかに多すぎて、すぐ提携先の精神科の先生にファックスを送って、「セカンド・オピニオンを求めることが望ましい」との所見をいただいたこともあります。
また、ある人は、抗うつ薬を飲んでいて躁転し、その後またうつになり、その後2年間休職していて職場復帰できていない人もいます。
中河原通夫先生は、久保田正春先生(日下部記念病院院長、精神科医、医学博士、ヒューマン・ギルド会員)との共著『抗うつ薬を飲む前に』の「はしがき」で次のように書かれています。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で治療した場合は、軽いうつ病はよく治るのですが、重いうつ病には効果が薄いという弱点があります。また、副作用が少ないと強調されましたが、副作用があることも確かですので、これには気をつけて服用しなければいけません。
お2人のような心ある精神科医ならともかく、医者に頼りすぎるのも危険だと思いませんか?
3.うつはうつなりの生き方がある
3月14日(土)13:30-18:30、15日(日)10:00-17:00の2日間、ヒューマン・ギルドで「うつ病の実践的認知療法」の講座 の講師を務められた札幌の大通公園メンタルクリニック院長の山田秀世先生は、「うつ病対策 10の心得」に次の3つを織り込んでおられました。
1.「うつ病は心の風邪」などの民間の俗説を疑う
3.発病過程と回復過程は全くの別ルートである
5.「生き方の微調整」を伴うのが良質の回復
「うつは心の風邪」というよりは、「うつは心のリストラ」かもしれません。今までの生き方のムリが心に表れるのかもしれません。だとすると、「生き方の微調整」を伴うのが良質の回復だと言えるのではないでしょうか?
うつにはうつなりの生き方を模索しなければならないのです。以前の状態に戻ることが健全とも思えません。
<お目休めコーナー> 我が家の桜の枝
