今日は。遅い時間の更新になりました。新宿区神楽坂で研修&カウンセリングの事業を営む ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
カウンセリングはアート」シリーズの第7回目です。
ある病院の院長と看護師長がカウンセリングにやって来ました。
この2人、病院の共同経営者であるとともに夫婦でもあります。
実は、あまり仲が良くないために夫婦カウンセリングを受けに来たのです。
病院内でも会議の場などで意見が対立しますし、家庭でも寄宿生の高校の2年生の子どものしつけのことでよくぶつかり合います。
アドラー派特有の「典型的な出来事」を聞くと、土曜日の夕方に家に帰ったときに、家に来ている息子が台所を散らかしている場面で子どもを感情的に叱るために、夫まで不快になります。夫は「俺が片づけるよ」と言って台所仕事をすることもあり、また、妻から「あなたが甘やかしてきたからこんな子になった」と言われると、余計腹が立つと訴えました。
「こんな場面を何とかしたいですか?」と確認すると、夫、妻共に病院での対立以上に月に何回か直面する、子どもをも巻き込む事態の克服を望んでいました。
私は「とっておきの方法があるのですが・・・・」と言いつつ2人の反応を待ちました。
「だったら教えてくださいよ」と夫。
「教えてもどうせ実行しないでしょうし・・・」と、じらし作戦。
「内容によってはやりますよ」と夫。
そこに妻も同調します。
「『助言の内容によっては』ではダメです。本当に実行しないと。本当にやりますか?」
私は念を押しました。
「絶対にやりますよ」
夫は妻と目と目で確認し合って、2人を代表して断言しました。
「本当にやるのですね」と私が確認すると、夫からは「岩井先生、しつこいですよ。『やる』といったらやりますよ!」の言葉が返ってきました。
「では、助言します。肝心なところですからメモをしておいてください」
この場面で、私は少々もったいぶっています。
2人とも手帳を取出し、私の発言を真剣に聴き取ろうとしています。
「それでは言います。奥さんが子どもさんを叱りそうな場面で、ご主人は『アイ・ラブ・ユー』と言ってください」
「そんなことできませんよ!」と夫は猛反発。
私は、すかさず反論しました。
「あなたは、病院の院長という責任ある立場の人。それに、大の大人が『絶対にやりますよ』と誓いながら、その発言に責任を負わないというのはどういうことですか?」
少々色を成したように言いました。
「『アイ・ラブ・ユー』なんて、ここ十数年言ったことがありません」
「私は、これ以外の策を持ち合わせていないのです。だったら、今の状態を続けるしかありませんね」と、私は突き放す言い方をしました。
夫は「わかりました」と手帳にメモをして、この回のカウンセリングを終えました。
2週間後、この夫婦はまたカウンセリングにやって来て、この2週間の出来事を報告してくれました。
それによると、子どもが台所の後片付けをしていないことがわかった妻が子どもを感情的に叱りそうな場面で夫の顔を見たら、本当に「アイ・ラブ・ユー」と言われそうな気配がし、子どもの前で言われたくない気がしたので、子どもに穏やかに片づけを依頼する言い方をしたのだそうです。
ところで、ある場面を捉えて、今までと違った行動を促す技法は「その瞬間を捕らえる」と言う技法でもあります。
「カウンセリングはアート」。カウンセラーも楽しみながら技法を駆使すると楽しいですね。
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◆第1回~第6回の記事を読みたい方は、下をご参照ください。
第1回目(1月24日)
第2回目(1月26日)
第3回目(2月2日)
第4回目(2月22日)
第5回目(2月23日)
第6回目(2月27日)
<お目休めコーナー> 3月の草花(2)
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