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人間知の心理学 (アドラー・セレクション)
アルフレッド・アドラー
アルテ

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おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。

前回は、現在人気の「解決志向ブリーフセラピー」は、直線的因果律で理論構築されてきた従来の臨床心理学を批判しながらも、その限界を「慢性成人病疾患モデル」を使って説明しているだけで、新たなモデルを示してはいず、これは、いわば原因論の放棄または断念だけで、鮮明な目的論を提唱しているわけでもなく、このところが「解決志向ブリーフセラピー」の思想と理論のあいまいなところだと述べました。


また、その前には、『疑似科学入門』の著者池内了氏の見解をもとに、彼が科学を「要素還元の科学」と「複雑系の科学」の2つに分けていることを紹介しながら、私は、アルフレッド・アドラーこそが要素還元主義でも複雑系でも説明できない人間の「心」を解明した人である、と指摘しました。

それは、アドラーの次の記述を読めば明らかです。

われわれの精神の活動から最初に理解できることは、その運動が目標に向かっているということである。それゆえ、人間の精神をあたかも静止した全体であると想像するのは、誤った結論であることを確認しなければならない。人間の精神は、自ら運動する力という形においてのみ想像できるのである。・・・(中略)・・・目標なしに精神生活を想像することはできない。精神生活に中に含まれる運動と力動は、この目標に向かって展開されるのである。
(『人間知の心理学』岸見一郎訳、P.24-25)

個人心理学は、人間の精神のすべての現象を、1つの目標に向けられているかのように見なすのである。
(同P.25)


こうしてみると、「原因論」から「目的論」へとパラダイムをシフトさせたアドラーこそが人間の心を自然科学の呪縛から解きほぐした最初の人であることが説得力を持って再確認できるのです。



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