コロッケの包みの匂う敗戦日 薪
秋黴雨品川駅に醤油の香
午前九時コーヒー新聞赤トンボ 豊春
赤トンボ曇天の畠遊弋す
布袋草咲けば貴女の誕生日 洋子
血圧を二回計るや今朝の秋
ひたひたと雌の気配や蝉時雨 炎火
ギンギラの太平洋や赤とんぼ
空は晴れ子犬じゃれてる猫じゃらし 歩智
送り火を焚かぬ慣わし恋女房
何気なく生死を語る秋の夜 章子
指先でマルマル書くや赤とんぼ
死せる蝉踏まれ轢かれて四分五裂 余白
瓢箪に車庫を取られて借りる車庫
秋蝉や噂話に疲れをり 稱子
長生きに宿る寂しさ秋夕焼
麦わらの帽子大好き赤とんぼ 雲水
戦前が始まっている秋出水